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【セミナーレポート】激動の時代のビジネスリーダーは、こう育成する

【セミナーレポート】激動の時代のビジネスリーダーは、こう育成する


コロナ禍、戦争、世界的なインフレ、環境問題といった危機に加え、サステナビリティの議論やデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進む現代。ビジネス環境も大きく変化するなかでの人材教育には、何が求められているのでしょうか。終盤では弊社・藤井紀行との対談を交え、スイスのビジネススクール・IMDの北東アジア代表、高津尚志さんにうかがいました。

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人材研修はコロナ禍を経て
どう変わったか

コロナ禍は、世界の研修・教育事業者にとって、大逆風でした。対面集合型研修ができなくなったので。ただ、私たちIMDは、オンラインやバーチャル学習の導入を含むDXを積極的に展開、2022年の経営幹部教育事業の業績は過去最高となりました。

今のデジタル環境では、ライブ・バーチャルで議論を行うことも、一緒に課題に取り組むことも、またオンラインで自分の都合のよいときに学ぶことも可能です。コロナ禍の収束に伴い、対面集合型研修へのニーズも急速に戻ってきていますが、そこにライブ・バーチャルやオンラインなど、多様な教育手法をいかに組み合わせて最適な学習経験を提供していくのか、私たちの専門性や創造性が問われる時代に入りました。

昨年11月にIMDがシンガポールで実施した、OWPという5日間のプログラムには、世界およそ35か国78社から、240人のエグゼクティブが集まりました。コロナ後にこれだけの人々が集まれたことも嬉しかったのですが、360度スクリーンの教室など、最先端の環境やAV技術を活かした研修は、最先端のビジネス教育を提供していくIMDの責任と喜びを改めて実感させてくれました。

研修の内容面では、世界的紛争の未来、中国の行く末、国の競争力と企業への影響など、世界情勢を投影した地政学的なコンテンツが増えています。サステナビリティも重要なキーワードですし、政府、自治体、NPOなど非企業組織との連携のあり方なども扱います。

ウェブ3.0とメタバース、NFTの世界、AI、センサー、アナリティクスなどについても、今回のOWPでは議論されました。6月末のスイスでのOWPでは、生成系AIやロボット、脱成長なども議論される予定です。

このように、今日を生き、明日を創る企業幹部の研修は、時代を反映したものでなくてはなりません。日々の仕事に取り組みつつ、世界の状況を理解し、起こりうる様々な状況に合ったシナリオを常にいくつか頭に置いておく。そういうことが、非常に重要になってきています。



リーダーに求められる
「希望を生み出す力」

志や信念、軸といった資質は、リーダーにとってきわめて大事です。それを確立する手法としては、自分の内側を掘り下げることと、外側からの刺激を受けること、があります。

IMDの場合、多くの研修で参加者は自己アセスメントを行います。自分の得手不得手や、自分が何を知っていて、何を知らないのかを自覚することで、その人にとって本当に必要な学びが明確になり、学びをカスタマイズ、あるいはパーソナライズできるのです。

外側からの刺激という点では、世界の変化をプログラムに取り込み、多様な人々との出会いを提供することで、受講者のなかに気づきを呼び起こしていきます。

コロナ禍、戦争、世界的なインフレ、持続可能性の危機など、厳しい風に翻弄されるこの時代、求められるのは「逆風に打ち勝つ経営者」だ、とIMDの学長語っています。逆風のなかでイノベーションを起こそうとすれば、実務的な能力だけでなく、創造性や勇気も不可欠です。戦略や組織に精通していること、周囲を動かす力、自分を管理する力、成功や失敗を省察して学ぶ力、挫折から立ち直る力なども、さらに重要になるでしょう。

なかでもリーダーたる者の生命線というべき能力が、「希望を生み出す力」です。逆風においても従業員の不安や心配を受け止め、それを「希望」に転換して返していく力。これが、これからのリーダーには欠かせません。


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若者や女性の更なる活用に備える

一般にビジネススクールで学ぶ人は、今でも7割くらいが男性です。私たちとしては、男女の比率を見直したり、人種や地域をより多様にしたりしたいと考えています。世界のビジネススクールでは、女性や非白人を主人公としたケースで学べるようにしよう、という動きも活発です。女性育成に関しては、ギンカ・トーゲル教授(「女性が管理職になったら読む本」の著者)による、女性リーダー育成のプログラムなども行っています。ビジネススクールは世界のビジネスに影響を与える立場にありますから、社会の変化に合わせ、それを先導し、絶えず教育内容を更新していく責任があると考えています。

近年はChat GPTやMidjourney*の登場など、デジタルやAIの世界が猛スピードで変化しています。これにキャッチアップし、先導するため、IMDは独自のセンターを設け、調査研究と教育の充実にも精力的に取り組んでいます。

デジタル時代は、若者とシニアの感性や知識を、かつてないほど隔絶させています。しかし、それを補おうとする試みも出てきています。日本のある銀行は、世界のシニア・エグゼクティブが集まるOWPのようなプログラムに、25歳~30歳の若い社員を集団で送り出しています。異なる世代のビジネスパーソンが、一堂に会して交流し、一緒に、そして互いから学ぶ好機として、たいへん歓迎すべきことです。



若い世代のリーダー教育にも注力

―――最後に、人材教育に取り組む立場から、弊社・代表取締役藤井とIMDの高津氏に、リーダー教育の展望についてお話しいただきました。

藤井 日本企業が海外展開を目指すにあたって、これまでは英語がハードルとなることが少なくありませんでした。しかし、生成AIや自動翻訳ツールの精度が向上し、言葉のハードルが低くなってきた今こそ、グローバルビジネスに乗り出すチャンスです。

高津 同感です。大切なのは、Chat GPTやDeepLに使われるのではなく、これらを使いこなせる自分になることです。それに人間は動物でもあるので、生のコミュニケーションが大切になる場面は必ず生じます。相手と絆を結ぶ力は、今まで以上に重要になるでしょう。

藤井 言葉だけでなく、コミュニケーションのコンテクストの違いを認識し、相手の文化的背景や慣習などを理解することが重要ですからね。ビジネスやマネジメントの基礎知識も、もちろんしっかり身につけてもらいたい。アルクでも、その分野の教育を強化していきます。

高津 IMDにとって、心強いことです。アルクさんはIMDのプログラムを活用したいという日本の企業様に適切な助言を提供し、プログラム選択の支援事前トレーニングやオリエンテーション、必要な場合は英語のアセスメントも実施してくださっています。アルクさんによるその「助走期間」が、参加者の方々のIMDでの学びの質の向上に貢献していることを実感しています。

藤井 先ほどのお話で、デジタルやテクノロジーの発達にも触れておられましたが、これらはいずれ誰もが日常的に活用するようになるので、優れたテクノロジーもコモディディになります。そうなったとき、本当の価値はというと、やはり'人'なのではないでしょうか。

高津 リーダーシップをとれる人、が必要です。たとえば、若い世代に対しても、IMDでは20代後半から30代半ばのビジネスパーソンを対象とする、Future Leadersという2週間のプログラムを提供しています。世界中の企業が精鋭を送ってきますし、自分で学費を工面して参加する方もいるんですよ。 リーダーシップというのは、階層に依存しない概念なんです。若いうちに質の高いリーダーシップ教育を経験し、それを使う経験を積み重ねれば、その後のキャリアは加速します。MBAとも比較しながら、若い方々に活用いただければと思います。

藤井 IMDのプログラムを受けた方の変化について、最後に少し聞かせてください。

高津 数年前にDXに関するIMDのプログラムに参加された大手広告会社の部長さんは、まなんだことをひとつずつ実行に移し、今は同社のDX事業の舵取りをしています。女性育成プログラム・SLに参加された外資系企業の女性幹部は、「何が自分をせき止めていたのか」がわかり、もっと踏み込める自分、戦える自分になったと、その後も快進撃を続けておられます。日本でHRの仕事に従事されているある受講者は、FBLというプログラムでファイナンスなどに関する理解が進み、経営に関わりたいとの希望が、より具体化した、と笑顔で共有してくれました。
世界は変化の時代にあります。ビジネスやコミュニケーションのあり方も変化している。そのなかで、未来を創る人材に求められる能力とは何なのか、これからもアルクさんと共に考え、共にリーダー人材教育に取り組んで参りたいと願っております。

*Midjourney:テキストから画像を生成するAIプログラム


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Profile

高津 尚志 氏
IMD北東アジア代表


早稲田大学政治経済学部卒業。フランスの経営大学院INSEADとESCPに学ぶ。日本興業銀行、ボストンコンサルティング グループ、リクルートを経て2010年よりIMDに参画。著書に『ふたたび世界で勝つために―グローバルリーダーの条件』(共著、日本経済新聞出版社)、訳書に『企業内学習入門―戦略なき人材育成を超えて』(英治出版)などがある。



藤井 紀行
アルクエデュケーション代表取締役


人材、教育業界で25年を超えるキャリアを有する。AIやブロックチェーン教育の新規事業開発、海外教育機関とのアライアンス推進およびデジタルサービス開発のほか、事業と組織のマネジメントに従事。2022年5月、執行役員として株式会社アルクエデュケーションに参画し、事業全体のマネジメントに携わってきた。2023年5月より現職。