こんにちは。グローバル人材育成の「アルク」のライティングチームです。
「海外研修を始めてみようか」という声が上がった場合、一体何から始めたら良いのか。そもそも実施するメリットは何なのか。事前事後を含めた全体像がわからない。...など、様々な疑問が生まれるかと思います。
そして、これらを解決し、企画書を通し、海外派遣会社や派遣先の選定などのための様々な情報収集を経て、やっと実施に向けたスタート地点に立つことができます。
海外研修についての不安や悩みを持つ企業の人事教育担当の方向けに、実施前に知っておいていただきたい情報をまとめました。貴社の参考になれば幸いです。
~目次~
資料「海外研修導入の前に知っておきたいこと」をダウンロードする
なぜ多くの企業が海外研修を行うのでしょうか?国内で行う語学研修ではなく、海外研修を採用する大きな理由は何でしょうか?
それは、グローバル人材育成を「加速化」できる要素が備わっているからです。そしてこれは、費用対効果を考える上でも、重要なポイントと言えます。
■現場・現地体験
現地の生活習慣に触れることでしか感じ取れないリアルな異文化体験と人々との交流は、大きな魅力です。
■スピーディーな言語習得
プログラムでは研修機関での授業はもちろん、常時、現地の言葉でのコミュニケーションが求められます。いわば24時間、現地の言葉に浸かることで、スピーディーな語学習得が可能となります。
■多様なバックグラウンドをもつ参加者との交流
様々な国からの参加者とのディスカッションや交流を通じ、日本にいただけでは看過されがちな異なった視点や新たな気づきを得ることができます。
海外研修で得られること=グローバルで活躍できる力(語学+α)
これらは日本国内で短期間に養うことは難しいですが、海外研修であれば短期間で身につけることが可能です。また、語学力+様々な「力」を身につけることは、今後グローバル人材として活躍する基盤を形成することにつながります。
多くのメリットがある一方で、海外研修にはいくつかの課題も伴います。
1.高いコスト
海外研修は、学費の他に、生活費、宿泊費、空港券などの経費がかかります。特に為替レートが不利な時期には、さらに負担が増えることになります。
2.成果の測定の難しさ
海外研修は、グローバル人材に必要なさまざまな力を身につける絶好の機会ですが、その研修効果を正確に評価することが困難な場合があります。効果の測定方法については、研修計画の段階でしっかり検討することが重要です。
資料「グローバル人材育成の成功事例4選」をダウンロードする
主に、以下のような海外研修が実施されています。
①語学学校②大学④ビジネススクールについて、英語レベルや階層別にプログラムを見てみると、以下のような表にまとめることができます。
*TSSTとは、アルクが独自に開発した、電話による英語のスピーキングテストです。
次に、それぞれのプログラムの特徴を見てみましょう。
1. 語学学校
コミュニケーションスキル、英語運用能力、異文化対応能力を身につけるプログラムが用意されています。
英語の基礎的なコミュニケーションスキルとしてリスニング、スピーキング、ライティング、リーディング、語彙力、表現力等を身につけるとともに、ビジネス英語スキルとして、ミーティング、ネゴシエーション、ビジネスライティング、プレゼンテーションなどの英語運用能力を培うことを目指します。また、異文化対応能力を学び、異文化への理解を深め、習慣の違いへの対処についても学習する機会があります。
対象: | 新人~経営幹部 |
---|---|
期間: | 1週間から6か月が標準的な派遣期間です。 |
特徴: | 様々な国で語学を学ぶことができる。期間を自由に設定できるケースが多い。階層、レベルに合った実践的なプログラムが受講できます。 |
2. 大学 ビジネスの知識やスキルを学ぶことを目的としています。マーケティング、ファイナンスなどの基礎的なビジネススキルを学んだり、それぞれの職種に必要な専門スキルを学びます。
対象: | 若手・中堅・若手管理職 |
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期間: | 大学への社員研修で多く採用されているのが約2~6か月のプログラムです。 |
特徴: | 語学に加えて、専門知識を海外大学で学べるのがメリット。グローバルビジネスに直結した知識が身につくので、実務にすぐに役立てられる。プログラムは開講日程が決まっています。 |
3. ビジネススクール:エグゼクティブエデュケーション
グローバルリーダーの人材育成を急務とする企業の要望にマッチしたプログラムが多数用意されています。
海外のビジネススクールということで、高いハードルを感じるかも知れませんが、取り組み方次第で、グローバルリーダー育成の最短ルートとなるプログラムです。
対象: | 中級管理職~経営幹部 |
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期間: | 1~8週間 |
特徴: |
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高い英語力とプログラムにあった階層であることが参加条件です。
4. ビジネススクール:MBA 経営戦略、リーダーシップ、意思決定力を学べるほか、グローバルな人的ネットワークの構築も可能です。
期間: | 1~2年間 |
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特徴: | 学位の取得に期間を要します。また入学のためのテストの難易度は高いです。MBAを取得することでのメリットはありますが、取得後の離職のデメリットもあります。 |
5. 現地トレーニー 企業が社員を自社の海外拠点へ派遣し、業務だけでなくグローバルマインドセットや異文化対応力を醸成することを目的としています。実際にビジネスで仕事ができる語学力、ビジネススキルが身につきます。
対象: | 若手・中堅 |
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期間: | 6か月~1年間 |
特徴: | 対象者は一定以上の語学力、仕事ができる人材が求められます。受け入れ先での受け入れ態勢を構築する必要があります。 |
6. 海外でのインターン グローバル環境でのビジネス実務経験を積むことができます。
対象: | 若手・中堅 |
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期間: | 12~24週間 | 特徴: | 基本的に、渡航先の言語でコミュニケ―ションができ、かつビジネス経験を持っていることが必須となります。必ずしも希望する業務に就けるとは限りません。 |
『海外研修導入の前に知っておきたいこと』
計画からアフターフォローまで
では、海外研修を行う際に気をつけるべきポイントは何でしょうか。
主な成功のためのポイントについて説明します。
の対象者と目的は企業によって様々です。期待した成果を得るためには、対象者と研修目的をはじめ、以下の内容について検討する必要があります。
検討すべき項目例 | |
---|---|
「誰」に研修が必要なのか? 目的は? | 数値目標は? |
募集方法は?(指名・選抜、手挙げ?) | 効果測定は? |
「個人」 それとも 「グループ」? | 対象者のレベルは? |
人数は?(1名、数名、10名以上?) | 研修の事前、事後の学習は必要? |
期間は?(1週間~1年?) | 予算は? |
いつ行かせるか? | どの部署が費用負担するのか? |
他の社員への業務の引き継ぎ(長期の場合) | 研修中、研修後の社員の処遇は? |
●対象者・目的について考える
海外研修を考える上でまず大切なのは、対象者・目的について考えることです。以下は一般的な対象者と目的の例となります。
対象者 | 目的 |
---|---|
新入社員、若手社員 (1年目~3年目) |
若手全体の底上げ
|
若手中堅社員(5年目~10年目) 将来のコア・グローバル人材候補 |
将来のグローバル要員養成
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管理職(課長・部長) | グローバルリーダーの養成 (グローバルマネジメント、交渉できるリーダーの養成)
|
海外赴任・海外トレーニー予定者 | 必要な語学力とスキルを短期間で養う
|
グローバル案件にアサインされる社員(即戦力) | |
役員 | グローバル企業を経営するマネジメント能力、リーダーシップの養成 |
●研修機関の選択
対象者と目的を決めたら、次はどのような方法(研修機関)で実施するかを考えます。研修にはいろいろな種類や方法がありますので、目的に合った期間、場所に派遣することが重要です。
●派遣前の英語力
海外派遣を検討される企業から良く聞かれることの一つは、派遣する社員の英語力についてです。例えば、「最低どのくらいの英語力があれば、派遣できるのか?」「他社ではどのような基準を設定しているのか?」などです。基準というものは特にはありませんが、どの階層の方をどのような目的で海外へ派遣するかによって、必要な英語力は大きく変わります。
一般的な指標としてよく使われるのが「TOEIC® L&R テスト」です。おそらく多くの方が受験経験があるため、指標としては設定しやすいのですが、TOEIC® L&R テストは、主に英語の基礎知識を測るテストですので、実戦で使える英語のコミュニケーション力がどれだけあるかまでは測ることができません。上位の階層になればなるほど、英語の高い運用能力が求められますので、スピーキングテストの導入も検討する必要が出てきます。
研修の目的・目標を設定し、その成果をどのように見える化するかを決め、派遣前に社員としっかり共有しておくことが必要です。
成果の指標としては、事後のTOEIC・スピーキングテストの目標スコアを設定する場合もありますし、成果発表会を開催し、学んできたことを関係者に向けて個人、グループでプレゼンする方法もあります。
海外研修を実施する場合、渡航に必要な準備や研修中のトラブルの対応など、様々な準備が必要となります。具体的には語学学校への申し込みや支払い、滞在先の選定、入国手続きから持ち物のアドバイスなどですが、代行業者に依頼するケースが多い様です。 業者選定をする際には、事前・渡航中・事後のサポートについて、よく確認することをお勧めします。効果を最大限に発揮するための事前準備と渡航中のサポートですので、ぜひ信頼できる業者を見極めてください。
終了後のフォローとしては、語学力の維持や自己学習法の習得なども重要となりますので、これらも計画に含んでおくといいでしょう。
資料「今、必要とされるグローバル人材の要件」をダウンロードする研修導入事例1
A社:5日間のプログラムを軸に、次世代リーダーを育成
業種 | 化粧品・薬品・化学 |
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従業員 | 約38,000名 |
対象者 | 次世代グローバルリーダー候補 |
まずは、次世代のグローバルリーダー育成を目標に、 3年前より希望者をビジネススクールの5日間のオープンプログラムに派遣されているA社様の事例を紹介します。
このA社様は、海外に多くの拠点があることから、ダイバーシティ環境でのマネジメント力を持ち、またビジネス環境の変化に合わせた行動変容を起こすことができるような、次世代のリーダーを育成することが求められていました。
そこで、上司の推薦を得た希望者の中から何度も面談を重ね、選抜した10名ほどをビジネススクールに送ることに。海外拠点からも希望者を募り、ビジネススクールでの学びや社外ネットワーキングに加えて、拠点間の関係性構築も同時に行う計画です。
ビジネススクールの学びの大きな目標は、個人やチームが持つ課題の解決です。個人が参加したセッションについて、他の参加者と学びを共有することで、より深い学びが得られます。また、帰国1カ月後に人事担当者を交えた振り返りを行うことで、個人だけで完結せずに企業に学びの成果を還元することが可能になりました。
ビジネススクールでの学びは短期間ですが、ここから新たな次世代リーダーが生まれ、企業全体が活性化していくことが目標です。
研修導入事例2
B社:若手から幹部候補まで、ビジネススクールを活用
業種 | 金融 |
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従業員 | 約3,600名 |
対象者 | 次期幹部候補、次期部門長候補 |
次の事例は、次期幹部候補をビジネススクールに派遣している、B社様の事例をご紹介します。
B社様では毎年、次期幹部候補をビジネススクールが主催する約2カ月間のプログラム(AMP=Advanced Management Program)に派遣するほか、次期部門長候補を2週間のプログラム(EDP=Executive Development Program )に派遣しています。
目的の一つは、業務のグローバル化に伴い、若手・管理職を問わず、海外留学制度を拡充し、海外留学や海外トレーニー制度から帰国した若手社員をマネジメントし、グローバル化に対応できる国際感覚を備えた部門長や幹部を育成することです。
どちらも派遣前には1年~1年半の国内プライベート研修を行い、派遣先での学びを最大化できるように後押しします。 EDP参加者は研修前にTOEIC 600点ほどだった英語力を出発前までにTOEIC 800点・TSST(アルクの電話によるスピーキングテスト)6程度まで英語力を伸ばし、自信をもってビジネススクールに参加します。
今後、B社様ではさらに海外留学の枠を増やすため、Executive Educationへ派遣する若手・中堅社員を増やすことになりました。現職を1~2年離れることは難しい社員でも、海外で学ぶチャンスが広がります。
以上、海外研修の目的や導入方法、事例についてご説明しました。
アルクエデュケーションでも、各種プログラムをご提供しております。ご興味のある教育ご担当者様はこちらもご覧ください。
『海外研修導入の前に知っておきたいこと』
計画からアフターフォローまで
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