こんにちは。グローバル人材育成の「アルク」のライティングチームです。
近年、ますます進んでいる企業の「グローバル化」に伴い、人材育成が課題となっています。
以下のような課題が、突然トップダウンで人事教育ご担当者様に課されることも少なくないようですが、貴社ではいかがでしょうか。
この記事では、「英語研修」の導入段階において、検討すべき課題と研修の組み立て方を徹底解説します。「英語研修計画の立て方がわからない」とお悩みの人事教育ご担当者様は、ぜひご一読ください。
~目次~
関連記事:新入社員研修に英語研修を採用する意味は?
英語研修の計画スタートにあたって
まずは決めておきたい5つのポイント
「語学研修」の立案で、まず決めておきたいポイントは5つです。
最初の段階で上記のポイントが明確であれば、計画の実施までが格段にスムーズになります(これらを決めるためのポイントも後でご紹介します)。
計画の段階では、この5つについて検討するとともに、それぞれに優先順位をつけることが大切です。優先順位については、事前に上長他関係者に、十分にヒアリングすることをおすすめします。
英語研修を成功させるために、課題を明確にしていきましょう。
1)中期経営計画から考える
まずは貴社が抱える「課題」について、考えてみましょう。
トップダウンの「英語力を底上げしよう」「英語レベルを昇格要件にしよう」と言った「ややあいまいな目標」が、最初の関門です。
上記を英語研修を行う「目的」に落とし込む必要があります。そのためには、貴社の今後の中期経営計画に沿った形で考えることが有効です。
例えば「新商品を海外に販売していく」「海外からのインバウンド需要の見込みが高い」「海外取引を3年後までに○○%増やす」。
そうすれば、自ずと「担当者の英語レベルUPが必要」「社員の異文化理解力向上が欠かせない」「海外の人材をマネジメントできる人材が必要」など、明確な課題が出てくるのではないでしょうか。
ここで注意が必要なのは、表面的な「○○が必要」という「課題」ではなく、具体的に現場で必要とされている「力(英語力、異文化理解・対応力、リーダーシップ力)」をしっかり確認することです。
表面に見える「課題」に加えて、その元にある本質的な「課題」を見つけるために、ぜひ関係部門へのヒアリングを行いましょう。
2) 実際の業務で必要なスキルは?
貴社の目指す方向性を確認し、グローバル環境で求められている人材、必要なスキルについて関係する部門にヒアリングをし、その後「課題」を具体化してみます。
例えば、Aさんは「業務のどんな場面でどんな英語力が必要」なのでしょうか。
下記のように書き出してみることで、はっきりとします。
研修の成功には、本人の「やる気・必然性」や組織の「後押し」が欠かせません。手順を踏まえて「課題・ゴール」を具体化することが重要です。
英語が必要な場面 | 必要なスキル | |
---|---|---|
Aさん | 現地法人と電話でやりとりする | リスニング力、スピーキング力 |
Bさん | 海外出張が年に数回ある | リスニング力、スピーキング力、異文化対応力、ネゴシエーション力 |
Cさん | 海外拠点を含めた各支店とテレカンファレンスが毎月ある | リスニング力、スピーキング力、異文化対応力、ネゴシエーション力、プレゼンテーション力 |
1) 対象者はどのように決めれば良いのか?
次に、「対象者」の選定について考えてみましょう。「課題」がはっきりした段階で、「対象者」も自ずと決まってきますが、段階的に「全社員」へ研修を行う場合もあります。その場合、以下のように短期→中期→長期的視点で、対象者を検討しましょう。
期間 (目安) |
主な対象者 | 詳細 |
---|---|---|
短期 (3~6カ月) |
赴任予定者、昇格要件対象者、業務上の課題がある方、など | 短期的な課題は最優先に取り組む必要があります。「赴任前の方」「すでに業務で必要となっている方」の場合、目的が明確で、短期的に成果を出す必要があります。 |
中期 (1~3年) |
グローバル人材候補、コア人材、など | 中期的には、次世代グローバル要員、コア人材の育成など、人材を確保しておくという視点で研修計画を検討する企業が多くあります。 |
長期 (3年以上) |
新入社員、内定者、その他、など | 先々を見据えた全体的なレベルの底上げは、長期的なものになるため、自己学習プログラムなども利用するなど、予算と期間を考慮した上で、選択肢を増やして考えることもできます。 |
2) 「手上げ式」と「選抜式」の特徴
研修対象者を決める方法には、大きく分けて「手上げ式」と「選抜式」があります。
それぞれ人事教育ご担当者様から見た場合、以下のような違いがありますので、参考にしてください。
また、どちらか一方で対象者を選定する必要はなく「手上げ式」で募集した後に「選抜」するというパターンが多くあります。それぞれの特徴を踏まえて検討しましょう。
特徴/注意点 | |
---|---|
手上げ式 (中長期的な育成向き) |
○意識が高い人を集められる ○積極的な取り組みが期待できる=成果が出やすい ○参加率が高い ※本当に研修が必要な対象者かどうかが不明瞭な場合も出てくるため、募集要項の設定などに注意が必要です。(1回のみ。入社○年目まで。など) |
選抜式 (短期的な育成向き) |
○本当に研修が必要な人に受けさせることができる ○育成計画に則った人材育成ができる ○対象者に今後の「コア人材」という意識を与えられる ※中には「やらされ感」が出てしまう人もいるので、研修の必要性について当人にも周囲にも十分に理解してもらうことが大切です。 |
研修が成功したかどうかを判断する基準となるのが、研修前に設定する「ゴール」です。
また、そのゴールの「妥当性」や「達成にかかる期間」を判断するために必要となるのが、「現状把握」です。
例えば、「ゴール」を「英語で海外支店の担当者と会議ができる」や「海外支店で勤務ができる」と設定した場合、現状と設定したゴールにどの程度のギャップがあるかを先に把握する必要があります。
登山に置き換えると、目的地(頂上)だけが決まっていても、現在地点がわからなければ、到達するルートを割り出せないのと同様です。
特にゴールに向けて最短ルート(または確実なルート)がとれるかどうかは、スタート地点の「現状把握」にかかっているといっても過言ではありません。
また途中の段階で、予定通りに進んでいるか確認することも必要になります。各段階で適切なアセスメントを入れつつ、以下の図のようにゴールに向かっていくのが理想の状態です。
「成果指標」に活用できる、数値化しやすいテストには、以下のようなものがあります。
⇒【TOEIC® L&R Test / TOEIC® S&W Tests / TSST / Versant】
上記4種類のテストで測れる英語力は、「基礎力(インプット)」と「応用力(アウトプット)」の2つに大別できます。現在では、「TOEIC® L&R Test」が主流ですが、これは前者の基礎力を測るテストになります。
企業側の目安としては、600点で海外部門・700点で海外赴任といったように使われることが多いようです。
ただし、もし貴社で「英語コミュニケーション力」が身についているか測りたいという場合には、リスニング力よりスピーキング力を測る方が、実際に身についたスキルの効果測定には適しているでしょう。
「テスト」ごとに測定できる能力が違いますので注意が必要です。
最近の傾向としては、企業の要望に合わせるように様々なタイプのスピーキングテストが登場しています。
試験時間が短かったり、試験会場が不要だったり、内容(流ちょうさを測るテストや英語の運用力を測るテスト、など)も様々なので、目的に合ったテストはどれなのか、検討が必要です。
「英語スピーキングテスト比較表」をダウンロードする
「研修期間」の考え方①
研修期間を決めるために必要な要素は、「現在の状況」と「ゴール設定」の2つです。そこに、今後の人事計画を踏まえて「かけられる時間」「予算」という要素を加えて決定します。
【例 1】
ゴール : 次世代グローバルリーダーの育成
現 状 : TOEIC® L&R Test 300点台
まず、「グローバルリーダー」とはどのような力を身につけているのか。
「高度な英語力、異文化理解・対応力、ダイバーシティ環境でのマネジメント力、リーダーシップ力・チームビルディング力」などが必要です。
これらを短期間で身につけるのは難しいので、まず 最初の1年は、英語の基礎力と異文化に対するマインドセットを中心に据えます。
TOEICは600点を超えることが目標です。
2年目は、さらに英語力を高めるために、スピーキングやビジネス英語に特化した研修を中心に、異文化理解・対応力やコミュニケーション能力を伸ばすことも取り入れます。
できれば、海外研修などを取り入れると、異文化環境を体感できます。この段階でTOEICスコア800点を超えることが目標です。
3年目は、ネゴシエーションやロジカルスピーキングなどのより高度なビジネス英語研修に加え、欧米での海外研修またはビジネススクールのプログラムに参加して、ダイバーシティ環境に身を置く状況を作り、異文化対応スキルを磨きつつマネジメント、リーダーシップを学びます。
「研修期間」の考え方②
次にレベルの異なる複数の対象者に研修を行う場合を考えてみましょう。それぞれの「現在の状況」を確認しグルーピングすることから始めます。
【例 2】
ゴール : 各部門から合計10名を選抜。英語で海外支店とミーティングができるようにする
現 状 : グループⒶ TOEIC®L&R Test 300~500点/ グループⒷ 500~700点
グループⒶは、まずTOEICのスコアが低いことから、インプット(単語・文法などの基礎力)不足が考えられます。
そのため、英語の基礎知識をはじめに補強する必要があります。
また、すぐにミーティング研修を行うことは難しいので、最初にリスニング・リーディングなどのインプットメインの研修を行い、その後スピーキング研修などの段階を経て、ミーティング研修に進むのがおすすめです。
普通に週1回×2時間の研修を行うとすると1年程度必要です。予算や期間を考慮する場合、自己学習プログラムでインプット量を確保することも可能です。
「レギュラー研修」と「集中研修」
研修スタイルは、大きく「レギュラー研修」と「集中研修(インテンシブ研修)」の2種類に分けられます。主な違いは以下の通りですが、対象者や研修の目的などによって、使い分ける必要があります。
その研修のゴール、優先順位は何かを踏まえて研修スタイルを決めましょう。
これもどちらか一方を採用するのではなく、レギュラー研修をメインに、一部集中研修も取り入れるなど、それぞれの特長を活かす形で組み合わせるのもおすすめです。
主な違い/注意点 | |
---|---|
レギュラー研修 | ○週1回2時間程度(3カ月~6カ月で構成など) ○学習を習慣化しやすく、語学研修には適している(知識が定着しやすい) ※業務の繁忙期に欠席が多発しやすい ※部署の理解がないと、定期的に出席できない場合がある |
集中研修 | ○1日7時間程度(1~2日×3回で構成など) ○他拠点から社員を集めて行う場合、スケジュールを設定しやすい ※学習の習慣化につながりにくいため、自己学習プログラムなどのフォローが必要 |
予算は、たいてい期初には固まっているものです。そのため、まったく新しく研修をはじめる場合は、次の期の予算確保の段階から動く必要があります。
すでに予算が決まっていれば、事前に検討した「課題・対象人数・ゴール・期間」を元に、候補の研修会社を数社に絞り込み、実施内容などの細かい調整をしていきます。
これは、毎年継続して実施する研修の場合も同様で、昨年の振り返りから内容を調整することが一般的です。
年度によって対象者(人数・拠点など)が変わりますし、様々な変更の可能性が出てくるため、同じ研修会社に依頼できるのか、改めて何社かで検討するのか、など予算の範囲で調整することが担当者には求められます。
担当者の工数はどの程度かかるのか?
研修実施前から終了時までに、担当者にかかる作業量を把握しておくことも大切です。
英語研修で必要な作業には、以下が考えられます。どこに担当者の工数がかかるのか、または研修会社にどの部分を任せられるのか確認しましょう。
アルクエデュケーションでは、準備手配の少ない、ご担当者様の手間を軽減した研修パックもご提供しておりますのでお問い合わせください。
まとめ
ここまで、英語研修の導入計画の立て方のヒントについてお伝えしてきました。
研修計画を立てる際には、検討しなければいけないポイントが数多くあり、それぞれの状況に応じて最適な研修は異なります。
いざ検討を始めると難しい部分も多いと思いますが、その過程で課題が出てきたときには、これらのポイントに立ち戻って整理することが重要です。
例えば、数社の中から研修会社を決める際、このポイントに対して優先順位をつけておくことで、どこに比重を置いて検討すれば良いかがわかりますし、その後の社内コンセンサスを得ることも容易になるでしょう。
アルクエデュケーションでは、グローバル人材育成に関するご相談や学習を継続する仕組み作りのお手伝いもさせていただいております。
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