ALC NetAcademy 通信[No.116]

投稿日: 2014/01/22 アルクグローバル通信

大寒を過ぎ、寒さが一段と厳しくなっておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
スーパーグローバルハイスクールやスーパーグローバルユニバーシティの準備関心も高まる昨今、アルクへのご相談も増えております。

お困りのことなどございましたら、遠慮なく担当営業へお声掛けください。

外国語教育とe-learning

『岩手大学におけるALC NetAcademyの活用』

岩手大学人文社会科学部  齋籐博次 先生

岩手大学では、全学共通教育の英語学習に活用することを目的として、2003年にALC NetAcademyを導入した。この年に導入したのは「スタンダードコース」のプログラムで、その後、2007年にはALC NetAcademy2(以下NA2)にバージョンアップし、「スーパースタンダードコース」も活用するようになった。
 「スタンダードコース」は、岩手大学の全ての学生が自主学習として利用することができるようにしてあり、毎年、全入学生に対して「ネットアカデミー利用の手引き」を配布し、「スタンダードコース」の活用を促している。「スーパースタンダードコース」の方は、授業(全学共通教育と専門教育)で利用することとし、希望する教員は受講生を登録し、授業の一環として活用している。今回は、「スーパースタンダードコース」のプログラムを全学共通教育の英語教育の中でどのように活用し、どんな成果が上がっているかを紹介するとともに、活用に関する課題について言及したい。

 全学共通教育については、毎年2コマの授業でNA2を使った授業を行っている。NA2を利用している理由は、教科書を使って行う演習型の授業に比べると、学生が授業の中で英語に触れる密度が格段に高いためである。教科書による授業では、テキストの意味や文法事項に関する説明をする時間が多くなり、そのため学生自身の英語そのものに接する時間が相対的に減ってしまう。それに比べると、NA2では授業時間をフルに使って英語の音声と文章に触れさせることができるため、効率よく英語学習を進めることができる。
 授業では、学期の初めに「レベル診断テスト」を受けさせたあと、「スーパースタンダードコース」の学習の仕方を細かく説明する。それ以降は、毎回、教員が指定したリスニングとリーディングのユニットをステップ1からステップ5までそれぞれ1つずつ、計1時間ほど学習させる。その後すぐに、学習をきちんと行ったかどうかをチェックするためのテストを行う。このテストは「スーパースタンダードコース」に含まれている穴埋め式の問題を利用するが、リーディングの課題については自前で作った問題も課して、毎週理解度をチェックしている。学生が学習する時間は1回の授業につき1時間であるが、すぐにテストを行うため、学生は集中して学習に取り組んでいる。
 予習は義務付けていないが、その代わりにステップ6から8でのセッション(アドバンスモード)と「道場」を教室外学習として行うよう義務付けている。アドバンスモードと「道場」で得たポイントは成績評価に組み入れることにしている。学習状況をチェックしたところ、アドバンスモードと「道場」については、3分の2以上の受講生が週に1時間半から2時間程度、教室外学習をしていることが確認されている。なお、語彙力を高めるために、授業で学習したユニットの単語について半期で2回の語彙力テストを別途行っている。また、授業で扱うユニットとは別に、半期で10ユニットを自学学習として課している。
 学習効果については、学期の初めに行う「レベル診断テスト」と学期の終わりに行う「修了テスト」を毎学期比較している。それによるとリスニングについては大きな成果が上がっていることが確認されている。あるクラス(60人が受講している初級レベルのクラス)では、「レベル診断テスト」では「中級プラス」と「上級」のスコアをとった学生は一人もいなかったが、「修了テスト」では「中級プラス」が28人、「上級」が5人いた。語彙力については若干の向上は見られるが、リスニングほどの効果は上がっていない。今後の検討課題の1つである。

 大学全体での利用に関する課題は主に2つある。1つは、せっかく導入したプログラムであるにも関わらず、NA2の「スーパースタンダードコース」を授業の一環として利用している教員の数が少ないこと(コンピュータを利用したプログラムに対する抵抗感を持っている日本人教員が今でも少なからずいる)。もう1つは、「スタンダードコース」を自主学習として利用するように指導しているが、実際の利用者が増えていないことである(毎年、全学で40~50人程度)。せっかくの宝が十分活かされていないと感じている。

グローバル人材育成の現場から

『鳥取大学の目指すグローバル人材育成』

グローバル人材育成推進室 室長  山本定博 先生

1.鳥取大学の目指すグローバル人材育成
鳥取大学のグローバル教育の特徴は、「開発途上国、新興国で活躍できる、心身ともにタフで実践力ある人間」の育成に力を入れていることです。日本でも幾多の大学がグローバル人材の育成を始めていますが、その多くはアメリカやヨーロッパを中心とする先進国に照準を当てているように感じます。
しかし今後50年の世界は、中南米やアフリカ、アジア地域が目覚ましい発展を遂げることが確実視されています。これらの国々の厳しい自然や社会環境の中で活躍できる人材が求められているのです。
 我が鳥取大学は、乾燥地の教育・研究が特色であり強みのひとつです。このルーツは鳥取の砂丘地の農業利用に関する研究にあります。私たちの乾燥地科学の研究は、現在では、海外5か所の拠点を中心に、国際研究機関とも連携して世界的に広く展開しており、鳥取大学の名は国外でもよく知られています。この研究基盤を活かした教育プログラムを立ち上げて、十数年前から多くの学生がメキシコの乾燥地を訪れ、実践的な教育を受けています。
「知と実践の融合」 を教育理念として掲げ、現場での実践に裏打ちされた鳥取大学での学びは、今後の激動する世界の中で、必ず活かせるはずです。

2.国際社会の中核となり得る人材を育成するための取組み
 鳥取大学は、文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」(平成24年~28年度)に採択され、国際社会の中核となり得る人材を育成するための取組みを開始しました。このプログラムでは、学部教育で身につけた専門知識を活かして、世界の舞台で活躍できるグローバル・スキルを養うための教育カリキュラムを構築します。国際通用性を高める基礎科目はもちろん、海外のフィールドでの実践的な学習もサポートし、現場に強いタフで実践力のある人材を育成します。

3.入学後できるだけ早期に行う「マインドセットアップ教育」
 鳥取大学では新入生に入学後なるべく早く海外を経験して欲しいと考えています。日本の外には圧倒的に広い世界があるという認識を持ってもらいたいのです。このマインドセットアップ教育の一つに、台湾の銘傳大学で実施する英語研修プログラムがあります。3週間、銘傳大学に滞在し、ネイティブによる英語4技能(読む・書く・話す・聞く)の集中トレーニングを受けます。授業では、特に英語で自分の意見を発表することが求められ、単に英語能力の向上だけでなく、外向きマインドも大いに高まります。費用も約15万円と安く、欧米などへの留学より低いコストで本格的に英語を学ぶことができます。更に、台湾の歴史や文化に触れたり、中国語での生活も体験できます。この研修を通し、多くの学生にグローバル人材を目指す心構えができます。

4.鳥取大学の特色をよく表す「メキシコ海外実践教育」
 鳥取大学は教育理念「知と実践の融合」のもと「人間力の養成」に力を入れていますが、その特色をよく表すのが、「メキシコ海外実践教育プログラム」です。全学部の2年次生以上が対象で、毎年約20名が3か月間メキシコ・南バハ・カリフォルニア州のラパスでホームステイしながら、南バハ・カリフォルニア自治大学とメキシコ北西部生物学研究センターで英語による授業とフィールド調査実習に参加します。日本との文化比較や、昆虫学、エコツーリズム、乾燥地科学などをフィールドに出て、異文化.異環境を肌で感じながら学び、その成果を英語やスペイン語で発表します。現在は渡墨前の米国UCデービス校での1か月間の英語研修をセットにした、4か月のプログラムとして実施中です。

5.更なる進化に向けて
 鳥取大学では、国内における全学生対象の「グローバル基礎教育」と2年次からの選抜者に対する「グローバル強化コース」に加え「短期長期の海外プログラム」の組み合わせにより学生一人一人に3つのグローバル能力「グローバル人間力」「グローバルリテラシー」「グローバルコミュニケーション力」を養成し、世界に羽ばたく人材を育成します。
 グローバル人材育成の更に大きな成果を生み出すためには、個々のプログラムの充実とともに、組織改革、意識改革も不可欠です。現在鳥取大学では、グローバル人材育成推進室の機能強化とともに、大学全体のグローバル化推進のための教職員の意識改革をいかに進めていくかを検討中です。

アルク英語学習アドバイザーのご紹介

「アルク英語学習アドバイザーが英語学習にもたらす効果について」

1回目の今日は、グローバル人材育成プログラムに深く関わるアルク英語学習アドバイザーの汎用性など、先日11月30日に東京で開催されたセミナーの感想を交え、ご紹介します。

 「英語学習アドバイザー」という言葉は、多くの方にとってまだ耳新しく聞こえるかもしれません。しかし、近年の英語学習者の増加によって、個々の英語学習者をサポートできるプロとしての英語学習アドバイザーのニーズは急激に高まっており、企業や大学において授業や集合研修ではカバーできない英語学習者の悩みや疑問に答えられる存在となっております。
 昨年11月30日(土)に弊社で開催された「大学におけるグローバル人材育成最前線セミナー」では、現在グローバル人材育成のプログラムに取り組まれている大学3校のご担当者様にご講演いただき、「アルク英語学習アドバイザー」の多様な活用事例について詳しくご紹介いただきました。
ご講演いただいた東北大学、明治大学、東京海洋大学様では、それぞれアルク英語学習アドバイザーが年間を通して勤務し、それぞれの大学で特徴的な運用がされております。東北大学様では個別の英語学習カウンセリングを中心に夏期・春期には短期留学をされる学生に特化した事前・事後の定期カウンセリングを実施されており、明治大学様では、アドバイザーが、留学カウンセラーとして学生の留学準備段階から深く関わり、その目標設定のサポートをしております。また、東京海洋大学様では、アドバイザーが大学のグローバルラウンジの一つの機能としてミニ講座等の企画も行っております。この3つの事例からもアルクの英語学習アドバイザー業務が多岐にわたるもので、勤務校によりカスタマイズされたものであることがおわかりいただけるかと思います。
セミナーに参加された皆様の多くが大学のグローバル人材育成に関わる方であったため、アルクの英語学習アドバイザーの活動についても活発な質疑が行われ、それに続く懇親会では、学生のモチベーション、自律学習のサポートといった共通の課題について議論が交わされました。学生のエピソードとして、協定留学が決まりアドバイザーの元へ真っ先に報告に来られた方や、TOEICの結果レポートを持って定期的にスコアを報告に来られる方の例をご紹介したところ、ご興味を持ってお聞きいただいたのも印象的でした。

 柔軟な学生サポートを可能にするためには、アドバイザー自身のアドバイジングスキルとともに、英語学習関連の情報提供が不可欠です。弊社では英語学習アドバイザーにふさわしい人材を資格制度、適性審査、研修によって選抜・育成をしており、アルク英語学習アドバイザーをご採用いただいている大学担当者様から前向きな評価をいただいていることは非常にありがたいことと感謝しております。これからも、アルク英語学習アドバイザーの周知、拡大を進めてまいります。
アルク英語学習アドバイザーについてのお問合せは担当営業、もしくは下記お問い合わせ先へお気軽にご連絡ください。
株式会社アルク教育社 教育ネットワーク部 E-mail:bunkyo@alc-education.jp

2月、3月の学会関連 開催案

2月~3月

2月

◇2日(日)
日本児童英語教育学会 (JASTEC)中部支部冬季研究大会
浜松学院大学(静岡県 浜松市)
http://www.jastec.info/file/taikai.html

◇4日(火)
一般社団法人情報処理学会 アイドル総選挙からセキュリティまで
~ビックデータの今
タワーホール船堀 (東京都 江戸川区)
http://www.ipsj.or.jp/event/sj/sj2014/

◆14日(金)
グローバル30総括シンポジウム
「国際化で大学は変わったか」
ホテル日航福岡 (福岡県 福岡市)
http://www.uni.international.mext.go.jp/info/2013/11/g30-wrap-up-symposium/?lang=ja


3月

◇11日(火)~13日(木)
情報処理学会 第76回 全国大会
東京電機大学 東京千住キャンパス (東京都 足立区)
   http://www.ipsj.or.jp/event/taikai/76/

◇15日(土)
言語文化教育研究会 2013年度研究集会大会
早稲田大学早稲田キャンパス11 号館5 階・6 階(東京都 新宿区)
http://www.gbki.org/

◇15日(土)
 第12回 e-Learning教育学会
 関東学院大学文学部 横浜・金沢文庫キャンパス
  (神奈川県 横浜市)
  http://www.mle.cmc.osaka-u.ac.jp/WELL/

編集後記

先日、多くの方が、ACミランへ移籍した本田選手の会見をご覧になったかと思います。
決して流暢とは言えないかもしれませんが、堂々と英語で会見を行う本田選手に多くの賞賛の声が寄せられました。この会見は、英語を学習している人に勇気を与えてくれたようにも感じました。今後の本田選手の活躍を祈りたいと思います。(S)

先日、汐留で開催されている南部鉄器の展覧会に行ってきました。盛岡藩主南部氏に由来する南部鉄器は400年の歴史を持ち、研鑽を積だ職人によるあたたかな風合いが人気です。海外で人気に火が付いたカラフルなティーポットは、今日本の若い女性の間でも人気で、いつか買って使ってみたいと思っています。(M)

アルクグローバル通信は、不定期発行です。次号は2014年4月に発行いたします。
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