海外協定校連携科目群VSM学習環境のデザイン ~生成AIで支える参加型授業と教育実践~
2025年10月24日に明治学院大学 文学部 教授・学長補佐 関口幸代先生をお招きし、「海外協定校連携科目群VSM学習環境のデザイン~生成AIで支える参加型授業と教育実践~」というタイトルでご講演いただきましたので、その一部をご紹介いたします。
タイトルの「海外協定校連携科目群VSM(Virtual Student Mobility)」とは、明治学院大学の学生が、海外協定校で開講されている正規授業にzoomで参加し、協定校の学生と共に学習・協働を行う国際教育プログラムです。こちらの科目は、明治学院大学の共通科目の中に組み込まれており、共通科目・学科科目と並行して履修することができます。
近年、国際情勢の変動や円安の影響から、現地留学することが困難になってきているため、実際の渡航を要さないVSMへの注目が集まっています。
本講演では、そのVSMの具体的な授業内容と、授業内容の理解をサポートするデジタルツールとして、生成AIの活用例について関口先生にお話しいただきました。
ご講演の流れは以下の通りです。
1.海外協定校連携科目群 VSMの概要と特徴
2.実際の授業内容
3.生成AIを活用した協働学習の支援アプローチ
4.まとめ -VSMによる教育的成果及び学習アクセス設計の利点・授業デザインに組み込むAI活用-
冒頭では、関口先生のこれまでのご経歴に触れつつ、現在の役割についてお話を伺いました。ハワイ大学マノア校の担当教員との連携をはじめ、授業で使用するデジタルツールの活用や調整などを行っていると仰っていました。
次に、VSMの特徴を3点挙げられていました。
1つ目は、場所や時間の制約を超えて学べることです。実際に渡航せずとも、多様な文化や価値観に触れながら、語学や専門分野の学習、さらには他者との協働に取り組める環境が整っています。
2つ目は、普段の大学生活と両立しやすいことです。たとえば「1限はハワイ大学、2限は自大学の専門科目」というように、日々の授業の中に自然と国際的な学びを取り入れられます。
3つ目は、経済的・環境的な負担が少ないことです。留学に伴う費用やビザ準備が不要なため、より多くの学生が参加しやすく、持続可能な国際学習の形と言えます。
実際の授業は、白金キャンパスと横浜キャンパスの2か所で実施されていますが、ご講演では横浜キャンパスでのご様子を取り上げてお話いただきました。横浜キャンパスでは、1、2年生の履修者がコンピューター室に集まり、ハワイ大学の先生またはゲストレクチャーによる講義を受講し、各々ディスカッションに参加しているそうです。また、実際にハワイ大学が使用しているLMSを活用して、学生の教材へのアクセス、課題の提出を円滑に行っています。
なお、学生は、先生からの問いに対してzoomのチャット機能やリアクション機能を利用して答えており、オンラインでもインタラクティブに受講しているとご説明いただきました。
また、本講演のサブタイトルでもある生成AIは、講義内容の理解を深めるためのサポート役として活用していました。講義終了後には復習として、講義のアーカイブ動画を配信するそうです。その講義動画には、生成AIによって日英字幕が表示され、両言語の切り替えが可能となっています。また、音声と字幕がシンクロ表示されるため、だれが何を話しているのかが確認しやすくなっています。他にも、字幕から確認したいパートにスキップできるようになっていたり、先生のコメントのみを拾い上げることができたり、講義の要約も英語で表示されます。
一方で、「生成AIの翻訳があると母語に頼りすぎてしまうのでは?」という懸念にも触れていました。
これに対し関口先生は、生成AIを活用することで、英語の習熟度が高くない学生でも、他の学生と同じ授業体験ができ、字幕・翻訳・アーカイブ動画でわからない部分を補いながら自分のペースで復習できるため、自律的な学習を後押しできる仕組みになっているとご説明くださいました。また、自動生成されることで、教員側の負担も減る設計になっている点が大きな強みとして紹介されていました。
とはいっても、自動生成された字幕や要約が完全に正しいというわけではないため、適宜関口先生や担当教員の方で修正する場合もあるそうです。
関口先生は、「時間的・経済的な理由で留学できない学生にも、渡航を伴わない国際教育の機会を届けたい」という想いから、VSMを広げていきたいと語られました。そして、生成AIは、教員の代替ではなく、学生の言語や理解レベルの壁を下げながら、学びへのアクセスと振り返りを"構造化"する支援ツールであると位置づけていました。
以上がご講演の概略となります。
アルクエデュケーションでは引き続き大学・高専のグローバル化 情報交換セミナーを実施して参ります。本講演や弊社サービスについてご関心・ご質問のある方は、お名前とご所属を記載の上、academy@alc.co.jp までご遠慮なくお問い合わせください。
(文・構成:文教営業部 宮内 怜)



