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課外ピア・チュータリングによる英語力向上の取り組み ~チューター制度の成果と課題、「学修者本位の大学教育」におけるその意義~

2025年11月20日に愛知教育大学 教授・副学長・国際交流センター長 小塚良孝先生をお招きし、『課外ピア・チュータリングによる英語力向上の取り組み ~チューター制度の成果と課題、「学修者本位の大学教育」におけるその意義~』というタイトルでご講演いただきましたので、その一部をご紹介いたします。

愛知教育大学では学生の多くが学校教員を目指しています。一方、留学生は毎年60名ほど在籍し、母国で教員をしている学生も毎年数名います。こうした学生の特性を活かし、学生同士で教え合う、授業外の英語/日本語のピア・チュータリングを推奨しています。

今回のご講演では、十年以上にわたり実施してきた課外ピア・チュータリング制度について、その具体的な内容や制度が学生の学習・成長にどのように寄与しているか、また学修者本位の大学教育を、課外ピア・チュータリングという観点からどう位置付けるかをお話しいただきました。

ご講演の流れは以下の通りです。
1. 授業外英語学習支援のこれまでの歴史、変化
2. 授業外英語学習支援と大学教育の現在
3. 授業外英語学習支援の成果と今後に向けての改善点

冒頭では、愛知教育大学における課外ピア・チュータリング制度のこれまでの歩みについてお話しいただきました。2012年度に「英語なんでも相談室」を開設し、授業外で英語学習を支援する仕組みを整えました。当時は1・2年生の英語授業にTOEICスコアを単位要件として導入したことが背景にあったそうです。その後、2013年度には「英語サポートセンター」、2019年度には「英語サポートコーナー」と名称を変えながら活動を拡大しました。

当初は英語が苦手な学生を対象とした支援が中心でしたが、次第にそれ以外の学生や留学生も含む全学生を対象とする課外英語学習のハブへと発展していきました。運営も教員や職員主体から学生チューターを含む多様な参画へと変化し、利用者数も年々増加傾向にあります。こうした取り組みは、大学教育を補完する重要な役割を果たしてきました。

現在は、英語チュータリングを中心に多様な支援が展開されています。チュータリングは、TOEICや英検の試験対策、英会話練習、基礎力強化、学習方法の助言など幅広い内容を扱っています。日本人学生同士、日本人と留学生、留学生同士など多様な組み合わせが可能であり、学習者の目的に応じた柔軟な学習環境が整えられています。

さらに、eラーニング教材の無料提供や英語参考書の貸出、留学生との交流イベント「Let's talk in English!」の開催なども行われています。これらの活動は、学生が自発的に英語を使う機会を増やし、学習意欲を高める効果を生んでいます。チューターにとっても、指導力や創意工夫を養う機会となり、教職への意欲を高める貴重な経験となっています。

また、制度の質を維持・向上させるために、①業務マニュアルの作成(チューター用・学習者用)、②募集からマッチングまでの丁寧な流れ、③実施報告書やアンケートによる改善の仕組みを整えています。

参加者の声からも成果が確認されています。学習者は心理的安全性を感じ、英語への苦手意識が軽減されたと述べています。また、自発的に英語を使う機会が増え、学習意欲が高まったとの報告も見られます。チューターからは、学習者の主体的姿勢の変化にやりがいを感じるとともに、指導力や創意工夫を養う機会になったという意見が挙げられました。教職を志望する学生にとっては、教育力を高める実践的な場となっています。

制度の成果としては「学生の成長」を強調されました。日本人学生だけでなく、留学生がチューターとして参画することで大学の一員としての実感を深め、積極的に関わるようになる効果が見られると述べられました。一方で課題としては、制度の認知度向上やフィードバックの分析活用を挙げられ、全国学生調査や認証評価制度への対応を視野に入れた改善の必要性を指摘されました。

また、小塚先生は、チュータリングを教育実習的な場として位置づけることで、学生の教育力育成にもつながり、チュータリングを通じて得られる指導力や対応力は、将来教員として求められる資質・能力の育成に直結するものと述べられていました。

以上がご講演の概略となります。
アルクエデュケーションでは引き続き大学・高専のグローバル化 情報交換セミナーを実施して参ります。本講演や弊社サービスについてご関心・ご質問のある方は、お名前とご所属を記載の上、academy@alc.co.jp までご遠慮なくお問い合わせください。
(文・構成:文教営業部 実松 雅史)

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