アルクグローバル通信 [No.118]

投稿日: 2014/09/15 アルクグローバル通信

朝夕過ごしやすくなり、少しずつ秋を感じるようになってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。春夏と東京・大阪にて開催したセミナーに続き、10月・11月に名古屋と福岡で「大学におけるグローバル人材育成セミナー」を開催いたします。
スタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。お申し込み方法は、本メールマガジン後半の「セミナー詳細」をご覧ください。

今回コラムをご担当いただくのは、千葉大学工学部の斎藤恭一先生です。
斎藤先生のご専門は共生応用化学、研究者の視点からの英語教育を推進され、『理系のためのサバイバル英語入門』(講談社ブルーバックス刊)等の著者、アルクのe-ラーニングシステム「ALC NetAcademy2 技術英語<基礎>コース」の監修者でもあります。
本コラムでは、千葉大学工学部様が設定されている英語力の目標値と達成に向けた施策、推進状況についてご説明いただきます。

e-learning教育の現場から

「千葉大学工学部におけるグローバル人材育成推進事業の取り組み」

千葉大学 工学部    斎藤 恭一 先生

葉大学は,2012年度に,文部科学省『グローバル人材育成推進事業』に採択されました。私が所属する工学部には,学部生3,080名,工学系院生1,300名の学生がいます。学部生の80%は大学院に進学しています。卒業後は英語を必要とする職に就く可能性が高く,最初に必要となる英語は専門英語(技術英語)です。現状では,単位上限の制約から専門科目のコマが不足していること,そして専門英語を担当できる教員が不足していることから,英語学習e-ラーニングシステム(『ALC NetAcademy2』6コース)を導入することにしました。英語学習e-ラーニングシステムは,時間・場所を選ばず自律学習が可能であり,レベルに合わせた学習が容易にできるので,導入の効果がかなり期待できると思っていました。特定のコマを必要とせず,教員の負担も増えないことも利点です。

 ところが,学習意欲の高い学生しか取り組まない,自律学習が可能な学生ほど英語ができるなど,導入するだけで学習効果が期待できるのは一部の学生層しかいないことがわかってきました。その解決策として,①e-ラーニング科目の設定 ②授業科目との関連付け ③英語学習アドバイザーによる個別学習カウンセリングやガイダンス,講習会の実施 ④学科教員・担当教員などによる学習勧奨 ⑤TOEIC®・工業英検の受験料支援とのリンクなどに取り組みました。その結果,英語学習e-ラーニングシステムのログイン率100%(1年生)達成,学習時間の大幅増加など成果があがり,今年の大学院受験の平均TOEIC®スコアが650点になった学科が出るなど,昨年と比較してTOEIC®スコアが上昇しています。

 私は,所属する共生応用化学科で,学部2年生に向けて前期,後期に,それぞれ「化学英語1」「化学英語2」を週1コマ,15週教えています。前期では,3大品詞(専門用語としての名詞,強力動詞(※),前置詞)を,後期では,理系英作文を中心に教えています。前期も後期も,授業時間の初めの15分間で専門用語の小テストを実施しています。50個を予習してきてもらい,そのうち10問出して,8問以上できないと落第となります。後期の理系英語では工業英検3級の過去問の中なら英作文問題に近い「整序問題」を取り上げ,黒板に英文を書いてもらいます。その英文の文型,強力動詞などを徹底解析します。

 後期が終わる頃にちょうど工業英検3級の試験がありますから,当学科の受験者は理系英語力ピークのときに受験することになるので,合格率は95%を越えます。これまで2級はなかなか受けようとしませんでした。ところが,今年から準2級が設定されたので,よい目標ができました。早速,直前ゼミを実施しました。平日の午後6時から2時間ほど,3回の理系英作文演習を,学生を募って実施しました。もちろんこれだけで準2級に受かるわけではありませんが,ペースメーカーの役割は果たせたと思います。千葉大学工学部は,84名受験中77名の合格者で,合格率は92%でした。理系英語のゴールは,自分の伝えたいことを英語で正しく書けることと学生に説教しています。「書けてなんぼの理系英語」です。これからも学生の能力を高める工夫を『グローバル人材育成推進事業』の中で進めたいと思います。

※ 強力動詞・・・極めて使用頻度が高い重要動詞を指す(著書 理系たまごシリーズ5「ノーベル賞クラスの論文で学ぶ 理系英語最強リーディング術」より引用)

斎藤先生のコラムでもご紹介いただきましたが、千葉大学様を始めとする全国の大学で採用され、急速にニーズが高まっているのが、「英語学習アドバイザー」による英語学習・留学支援です。ここでは、この支援業務が生まれた背景をご説明すると共に、支援業務の概要をご紹介いたします。

アルク英語学習アドバイザーのご紹介

「英語学習者を取り巻く環境の変化とアドバイザーのニーズについて」

株式会社アルク ESAC事務局

英語に限らず、科学や技術の進歩が教育、特に学習者や学習者を取り巻く環境に及ぼした影響には目を見張るものがあります。
 何年か前まで高等教育機関の授業は教師による講義が主流でした。しかし、今は大教室で行う授業であってもプロジェクトや小グループを基本にしたクラス運営が目立つようになり、学生は教師とだけではなく、学生同士で積極的に課題に取り組むことが増えてきています。それは教育が単なる知識の受け渡しだけではないことや、どのように学ぶかによって学習の効果が大きく変わること、つまり、学習者自身が、みずからの学習に積極的に関わっていくことの重要性が、多くの研究結果によって明らかになってきたためだと思われます。
 また、IT機器や端末を利用することで、学習者は必要な情報はいつでもどこでも自由に取り出せるようになりました。専門的な知識でさえ、自宅で好きなときにインターネットから簡単に取得することができます。こうした学習環境の大きな変化は学習者のニーズを多様化させ、学習者が期待する教育も、より個人にカスタマイズされたものへと進化しています。

「英語学習支援のプロ」の育成を目的とするアルク英語学習アドバイザー資格制度(ESAC)は2005年、そういった時代の潮流の中で誕生しました。当時は民間英会話学校の教務担当者・日本人講師、子供の英語教室主催者などが、サービス向上のためにワークショップに参加する傾向がありました。しかし近年では、高校・大学の現役の教員や学習支援室の職員、企業の人事担当者の参加も目立つようになってきています。その背景にあるのは、従来の画一的な教育からの転換として、冒頭に挙げた教育の個別化、多様な学習方法への関心の高まりに他なりません。

 弊社のワークショップでは、英語学習アドバイザーを「自転車の補助輪」にたとえています。学習者がなりたい自分を明確に意識し、現状とのギャップに自分自身で気づいて、学習行動を変えられるよう、脇からサポートしていくのがアドバイザーの仕事です。自律学習の重要性は叫ばれるものの、あふれんばかりの安価で雑多な学習情報・教材をどのように取捨選択していくかを学習者自身が学んでいくには、経験豊富な助言者が必要です。学習者が「補助輪」を外しても成長し続けられるように学習者の学習プロセスを応援していくことがESAC英語学習アドバイザーの主たる目的であり、教師とは違う立場から学習者をサポートしていると言えます。


アルク英語学習アドバイザーについてのお問合せは担当営業、もしくは下記お問い合わせ先へお気軽にご連絡ください。

株式会社アルク教育社 文教ネットワーク部 E-mail:bunkyo@alc-education.jp

<<営業より一言>>
 アルクがご提供するソリューションとしての「英語学習アドバイザー」は、アドバイザーが大学に常駐(1日8時間、週5日、12ヶ月勤務を基本)する形で教育支援を担当しています。アドバイザー事務局は、常駐するアドバイザーに定期的なトレーニングや現場でのモニタリングを実施し、全国の事例・情報をアドバイザーにフィードバックすることで、人材1名のソリューションに留まらない運営形態をご評価いただいています。

以下、常駐校のアドバイザーの教育支援について振り返り、活動におけるポイントをまとめました。

【1】支援形態は3つに類型化
1)グローバルラウンジ活性化型(個別・グループカウンセリング、ミニ講座
Study Group:グループ自主学習支援他)
⇒同様のラウンジ(ラーニングコモンズ)を設ける大学も多い中、教材を展示し、英語好きのリピーターのみが訪れるような受け身のラウンジ運営から脱却することを目指す

2)個室カウンセリング型(専用ルームでの指名・任意の個別・グループカウンセリング、e-ポートフォリオの有効活用、ニューズレター・メルマガ作成他)
⇒1日最大8~10枠のカウンセリング枠を埋めるような、短期留学参加者等、特定母集団への必須カウンセリングも有効

3)クラスサポート型(e-ラーニングを用いた授業内のカウンセリング・e-ラーニング有効活用のためのガイダンス、小テスト作成、学習履歴管理他)
⇒e-ラーニングの稼動率低下に悩む大学は多く、先生方の手が回らない部分にまで、
有効なサポートを提供

【2】「常駐」における重要ポイント
1)いつでも予約・相談できる専門アドバイザーの有用性
⇒大学の教職員が、授業や業務の合間に対応しきれない相談・業務内容に対応、専門性は高いが気軽に相談できる絶妙なポジションにあることを学生が高く評価

2)留学やグローバル化に向けた「マインド醸成」「自律学習」のための行動変容、意識変容には、継続的なカウンセリングが必要
⇒学生に「あれをこれを」と指示を出し答えを与えるのではなく“答えを考えさせるカウンセリング”を実行し、内発的動機付けされた学生は、リピーターとなって継続的に来訪

3)ソリューションとしてのアドバイザー常駐
⇒人材が認定資格を取得しただけでは仮免許に過ぎず、定期的なトレーニングを受け、
アドバイザー事務局が、全国の事例・運営ノウハウからバックアップしてこそ成立するソリューション

以上のように、大学によって様々な形態をとる支援業務ですが、この支援業務を含む大学事例をご講演いただくセミナーを名古屋と福岡で開催することになりました。
すでに国立大学の副学長を始めとする全国の大学関係者の皆様から、お申し込みを頂戴しております。皆様からのお申し込みをお待ちしております。

セミナーのご案内

大学のグローバル化情報交換セミナーvol.3

~産学官が連携したグローバルキャンパスの実現に向けて~
各会場30名様限定 (アルク教育社主催)

■対象:グローバル化に注力されている大学関係者の皆様
1.文部科学省『スーパーグローバル大学創成支援』に代表される全学的な国際連携・教育に関わる事例・情報を収集したい

2.学生の海外留学や国際研究活動を有効なものにすべく、グローバルマインドを醸成し、 実践的な英語力を習得させたい

3.留学生の受け入れに伴うグローバルキャンパスの実現に向けて、実践的なFD研修、SD(職員)研修の実践例を知りたい

■日程・会場
【名古屋会場】
日程:2014年10月25日(土) 12:30受付開始 13:00~16:30

【福岡会場】
日程:2014年11月1日(土) 12:30受付開始 13:00~16:30

※上記セミナー時間終了後、両会場共に立食形式の意見交換会を予定しております。 (18:00までの予定)

学会関連 開催案内

10月~12月

学会情報は、以下ボタンリンク先のWEBページにてご覧になれます。

編集後記

今回は、日々現場を駆け回っている弊社営業スタッフよりお届けします。

ようやく暑さも和らぎ、少しずつ過ごしやすい気候になってきました!
以前私が読んだある研究記事によると、人は気温が低い日程、ノスタルジアを感じやすくなるそうです。最近は、90年代スニーカーブームが再来しているそうで、復刻版のスニーカーを履いた学生がキャンパスの中を歩いている姿をよく目にします。ちょうどその時代に大学生だった私にとっては、とても懐かしく、発見するたびに『あの学生のスニーカー、昔自分も履いてた!』と、その頃を色々と思い出したりしています。日々学校に伺い、教職員の方々と様々な話題で会話させていただいてますが、「学生の頃、アルクさんのヒアリングマラソンやってましたよ!」「まだその当時はカセットテープでね~。」「完走はできなかったけどね~。」などと懐かしそうな表情で学生の頃を思い出されながらお話しされるのを伺っている時間がとても好きです。(N)


 営業という仕事柄、外でお昼を食べる機会が多いのですが、その中でも大学の学食が私の一番のお気に入りスポットです。価格が安いというのもその理由の1つですが、学校毎に異なる学食の雰囲気や空間を楽しみながら食事をするのが好きです。
100円で朝ごはんが食べられるサービスがあったり、一流ホテルとのコラボレーション企画があったりと、 各学校、「食」を楽しむ工夫が多くなされていて、今の学生さんは至れり尽くせりな環境で羨ましいなと思うとともに、会計後にもらうレシートに印字されているカロリーを見つめながら、自分自身の食生活を改めて見直さないといけないなと思う今日この頃です。(M)

アルクグローバル通信は、不定期発行です。次号は2014年11月に発行いたします。
過去発行したメールマガジンの一部は、バックナンバーにてご覧いただけます。

バックナンバーはこちら