グローバル化、生成AIやDX、データ活用、ダイバーシティーとインクルージョンなど、ビジネス環境が目まぐるしく変化するなか、世界のシニアエグゼクティブの熱い視線を集める、ハーバードビジネススクールのExecutive Education。HBSならではのプログラムの魅力を、アジア太平洋地区ダイレクター・宗像佐尭氏に教えていただきます。
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~目次~
ハーバードビジネススクール(HBS)というと、やはりMBAプログラムをイメージする方が多いと思います。そのMBAの参加者は、27~28歳くらいの方が中心ですが、Executive Educationのほうはというと、少なくとも10年以上、場合によっては30年、40年の業務経験をもつシニアエグゼクティブが対象です。
その多くは、MBAを取得してから10年も、20年も経った後に、知識を最新バージョンにアップデートしようと参加する方や、時代の先端のビジネススキルを、短期間で身につけるために参加する方たちです。
プログラムで扱うトピックスには、AI、ESG、ダイバーシティーなど、常に最新のものを取り入れているため、同じプログラムでも内容は毎年変わります。
対して、今現在の自分がどういうスキルをもっていて、これからどのようなスキルを獲得しなければいけないのか、経営幹部のみなさんに学んでいただくという点は、一貫して変わりません。これはHBSのExecutive Educationの本質です。
2年制のMBAプログラムの参加者数は、ざっと数えて2000名です。一方、137プログラムを提供するExecutive Educationには、昨年1年で1万575人のシニアエグゼクティブが、世界各地から参加されました。
このように、トレンドはあきらかにExecutive Educationであり、その規模もMBAと比べて圧倒的に大きくなっています。
なぜこのようなことになったのか、理由は2つあります。
まず、MBAプログラムは履修期間が2年と長いので、参加しようと思うと、会社に休職を申請したり、場合によっては退職しなくてはなりません。参加者は、27歳、28歳くらいが中心ですが、この年代はゴールデンピリオドと呼ばれるほど、職場でいろいろな経験を積む大切な時期です。そのタイミングで貴重な時間を2年もMBAに費やすより、ある程度キャリアができてから、先々必要になることを学ぼうと考える人が、増えているのです。
Executive Educationが支持されるもう一つの理由は、ハイレベルな教授陣です。
HBSの教授陣は272人で、規模的には世界最大です。またHBSは研究機関を自認していますから、研究をしたり、論文を書いたりしていないと教授になれません。そして、研究者にとっての教育の場とは、研究成果を発表し、参加者とシェアする場なのです。当然プログラムの質は高く、最先端の情報が得られるのですから、経営幹部が参加する意義は大きいと思います。
数あるビジネススクールのなかで、HBSが選ばれる理由は4つほどあります。
1つ目は、お話ししたように、教授陣は全員、研究者だということ。彼らはそれぞれ、アカウンティング、マーケティング、ファイナンス、ストラテジーなど、10ほどあるアカデミック・ユニットのいずれかに所属して、そこで研究に取り組んでいます。
HBSの教授たちのミッションは、自分が研究を通じて得た知識を惜しみなく参加者に教え、参加者自身にも、それぞれの専門分野を徹底して学んでいただくことです。これはExecutive Educationの一番の特色です。
2つ目は、「ケース(事例)」の活用です。HBSの教授は、年間およそ300本のケースを出版しており、世界のビジネススクールの7~8割が、それを教材として使っています。Executive Educationでは、137のプログラムすべてでケースを導入しており、参加者はケース・メソッドを通じて、各教授のセオリーや研究成果を共有することができます。
3つ目は、参加者同士の学び合いです。参加者は互いの知識や実務経験から学び合うことで、自分自身の強みや弱点に気づいたり、今後の成長課題を発見したりしていくのです。
4つ目は、人的ネットワークです。プログラムは全寮制で、期間が数ヶ月でも数日でも、参加者は全員キャンパス内に滞在します。寮は個室ですが、チェックイン時に振り分けられた、8人1組のグループで食事をしたり、予習をしたりします。上級管理職同士として、価値観の共有や相互アドバイスも、自然に行われます。世界の多様な業界をリードする人たちが、文字通り寝食を共にして、人的ネットワークを築いていく。これもまた、HBSらしい特色です。
Executive Educationに申し込んだ方のうち、参加資格が得られるのは、だいたい6~7割くらいでしょうか。
参加者の半分以上は、英語のノンネイティブですので、英語力は参加資格のポイントではありません。ただ、どんどん進んでいくディスカッションに、割って入って発言するスキルや、議論をするためのスキルは必要です。英語を使う仕事でも、現場で必要なのは、そういう実践的なコミュニケーションスキルでしょう。日本語でできることは、トレーニングさえすれば、英語でもできるようになりますよ。
137のプログラムは、それぞれ対象者がはっきりしています。たとえばリーダーシッププログラム中の、アグリビジネスセミナーは、毎年非常に人気なのですが、いくら関心があっても、アグリビジネスの経験がない方は、基本的にとりません。知見や経験がないと、参加者間で学び合いができないためです。
適切なプログラムに申し込めば、合格の確率はもちろん上がります。そこで参加を希望する方のお仕事内容や経験、抱える課題や希望などをうかがって、適切なプログラムを提案することも、私の仕事のひとつとなっています。
コロナ禍によって、いろいろな業界で大きな変化がありました。以前は業界全体としての一定の傾向をみることができたのですが、今は同じ業界内でも差が大きくなっています。業界を問わず、管理職も勉強をして、知識を最新のものにアップデートしておかないと、急激な変化についていけません。Executive Educationの参加者の間でも、自分と同じようにビジネス最前線で働く他の参加者から、生の情報を得たいという期待が、これまで以上に高まっていると思います。
ほかには、コロナを機にプログラムの一部が、バーチャルで参加できるようになりました。そのおかげで女性の参加が増えたことは、ダイバーシティーの観点からも、よかったなと思います。
Comprehensive Leadership Programsは、日本の方に人気が高いプログラムですが、参加した方に話を聞くと、ほとんどの方が「考え方が大きく変わった」とおっしゃいます。日本の外に出て、さまざまな国から集まった人たちと話してみて、物事を大局的に見ることを知ったし、自分についても見直すことができたと感じているのです。
ただ、自分は変わっても、職場に戻れば周りは元のままです。その環境で、どうモチベーションを維持していけばよいのか、真剣に考える参加経験者も少なくないようです。
英語力というより、まず知識がなければ議論に入っていけませんし、テーマとなる「ケース」を事前に読み、ご自身の意見を持って議論に参加しないと、ついていくことができません。プログラムに参加して、実際にそういう状況に追い込まれると、ディスカッションスキルは急激に上がりますよ。
大事なのは、日本語で自分の意見が言えるか、日本語で議論できるかということです。日本語でできるなら、あとは英語のスキルを上げればいいだけです。事前に対策をする場合は、たとえばアルクさんの英語アセスメントなどで、自分が苦手な部分を認識し、そこを集中的にトレーニングするとよいと思います。ディスカッションでしっかり発言できるようになりたい方は、タイムリーに発言するためのスキルを身につければ良いと思います。
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アルクエデュケーションでは、HBSをはじめ、世界のビジネススクールのExecutive Educationプログラムへの派遣をサポートしています。対象者のプロフィール(職務経験、役職)、英語力を把握し、最適なプログラムを提案します。また、プレゼンテーション研修やミーティング研修など、渡航前の英語力を強化するプログラムや、Executive Educationの事前準備に特化した研修もご用意しておりますので、是非お気軽にご相談ください。
宗像 佐尭氏
ハーバードビジネススクール エグゼクティブエデュケーション ダイレクター(オーストラリア・日本)
1992年に三菱商事に入社後、国内外においてプラント、インフラ事業に携わった他、海外における企業買収にも関わる。2019年より現職。エグゼクティブエデュケーションのアジア太平洋地区責任者として企業幹部育成のサポートを行う。
藤井 紀行
アルクエデュケーション代表取締役社長
人材、教育業界で25年を超えるキャリアを有する。AIやブロックチェーン教育の新規事業開発、海外教育機関とのアライアンス推進およびデジタルサービス開発のほか、事業と組織のマネジメントに従事。2022年5月、執行役員として株式会社アルクエデュケーションに参画し、事業全体のマネジメントに携わってきた。2023年5月より現職。
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