セミナーレポート
ICTを活用した英語教育とアクティブ・ラーニング
~教員・生徒それぞれの立場からの ICT 活用促進とは
英語教育やグローバル人材育成のさまざまな課題解決をテーマとした総合イベント「アルク教育ソリューションEXPO 2019」が、2019年5月31日~6月2日にかけて東京・神田で開催されました。セミナーの様子をご紹介します。
アルク教育ソリューションEXPO 2019
【日程】 2019年6月2日
【場所】 アーバンネット神田カンファレンス

米田謙三先生
授業を支援するICT

「端末を学校に持ち込むことには、議論もあるでしょう。授業中に LINE やFacebook はしないといったルールや、生徒の自覚も必要です。それでもみんなで一緒にやる作業が、効率的かつ効果的に行なえることから、私の学校ではBYODを選択したのです」
続いて米田先生は、ICTを使ったLMS(Learning Management System)として、 mentimeterを取り上げます。通称「menti」と呼ばれるこのシステムは、プレゼンテーションツールとして使えるほか、授業でアンケートやクイズを行ない、その場で回答を集められる点がとても便利とのことです。グループ発表のあとで、よかったと思うグループに投票したり、質問や意見を寄せたりと、工夫次第でさまざまに使えるでしょう。
教育むけのグループウェアや、教師を支援するサービス、アプリケーションのなかから、人気があるものをさらにいくつか紹介してくれました。
《授業や学習を支援するICTの例》
- classi ICTで教育現場を支援するクラウドサービス。
授業、生徒の自学自習支援、連絡やコミュニケーションなど。対象は小中高から専門学校まで。 - Edmodo 無料の教育SNS。クラスごとにグループが作成できる。
- Google classroom
出題・採点・フィードバックなど、教師の課題管理をサポートする無料のウェブサービス。 - Apple classroom iPhone、iPad用の授業支援アプリケーション
- Cyber campus マルチデバイス対応の教育用クラウドサービス。
- Sway マイクロソフト社による、デジタル・ストーリーテリング・アプリ。
- ロイロノート 生徒の主体的な思考や発信を助け、アイディアを共有・蓄積して学び合うための教育ICTツール
最近は、ICTを使った教育の推進に、力を注ぐ地域も増えています。
「大阪市の港区では、私も監修をお手伝いして、小学校4教科、中学校5教科について、無料の教材や動画を提供しているサイトを集め、URL リストを作ってオフィシャルサイトに載せています」
渋谷区では2017年の9月から、区内の小中学校に通う児童生徒に、1人1台のタブレットの貸与を行なっています。義務教育の初期からICTを使いこなす、デジタル・ネイティブの子どもたちと、教師が向き合って行かなければならない時代は、もう始まっているのです。
英語学習むけのアプリやサービスも豊富
英語の授業でも、リーディングやシャドーウィングにICTを活用することは、珍しくなくなりました。
「フォトストーリーやフォトテリングも、よい手法ですね。最初の導入で写真や絵を一枚見せて、『これを見てどう思う?』と考えさせるところからスタートし、ディベートやディスカッションに展開していくということを、私もよくやります」
こうした授業では、学習に適したスピーチ・コンテンツが豊富なGoalcast (YouTube)や、無料の音声ファイル編集ソフトSound Engineなども、活躍するようです。
高校では大学入試改革を前に、模試や英語の外部検定対策の話題がホットです。英検、GTEC、TOEFLなどの受検対策には、AIとの会話のなかで文法の知識を確実に自分のものにする、その文法の知識を軸に、スピーキングやライティングの活動を進めていく、といった学習が適していると米田先生は語ります。
「発音やボキャブラリーの定着も含めて、アウトプットの活動にもICTは使えます。一斉型、協働型、個別型の学習スタイルに応じて、それぞれに向いたICTツールを使いましょう。ICT は学習の個別化と多様化も得意ですよ」
先生のお話に出てきたなかから、4技能の学習に使えるものを、一部ですが紹介しましょう。
●Listening
・English 4skills NTTドコモによる、英語4技能をオンラインで学習できる学校向けサービス
・CNN English Express 世界のニュース映像で学ぶ。米田先生がプロジェクト・リーダーを務めた。
●Vocabulary
・QUIZLET 英単語の暗記などに使えるオンライン学習ツール。小学校でも中学高校でも利用できる。
・Word engine 英単語習得用学習アプリ
・フラッシュカード、MIKANなど多数。
●Writing / Speaking
・Criterion TОEFLテストを運営する米国ETSによる、ライティング専用LMS。
・Versant スピーキングテスト
●Grammar
・Grammarly 英文添削ツール
また、文法、英単語、総合英語、TOEIC L&R、TOEIC ITPといった、目的別コースのなかで個々のスキルの力を育てるプログラムとして、ALC NetAcademy NEXTについても取り上げていただきました。アルクの様々なコンテンツをeラーニングに最適化したこのプログラムは、学習者の動機付けや進歩が実感しやすい学習プロセス、学習状況の管理のしやすさでも評価され、全国570以上の教育機関で採用されています。
ICT環境整備がアクティブ・ラーニングを支える

「私が思うICTは、『I いつも、Cちょっと、T 使おう』です。ICTで何ができるかより、ICTツールを使って何がしたいのか、生徒も先生もしっかり考えて活用することがたいせつです。教師の弱点を補い、よりよい授業を行なうための補助として、じょうずにICTを役立てていただきたいと思います」
第5世代移動通信システム(5G)が導入されると、通信速度は飛躍的に向上するといわれています。ICTがもたらす可能性は、教育現場でもおおいに味方につけたいもの。ただし、「いたずらにICTに振り回されるのではなく、まず自分の授業デザインを追及することが重要」だと米田先生が指摘するように、しっかりと地に足のついた運用を目指したいものです。
(文・構成:田中洋子) 戻 る