グローバル人材育成の総合ソリューションパートナー 株式会社アルクエデュケーション

セミナーレポート
大学入試改革を目前に控えて
4技能テストの導入が求める今後の大学英語教育

英語教育やグローバル人材育成のさまざまな課題解決をテーマとした総合イベント「アルク教育ソリューションEXPO 2019」が、2019年5月31日~6月2日にかけて東京・神田で開催されました。セミナーの様子をご紹介します。


アルク教育ソリューションEXPO 2019
【日程】 2019年6月2日
【場所】 アーバンネット神田カンファレンス

上智大学特別招聘教授
吉田研作先生


英語教育のボトルネックだった大学入試

今回の大学入試改革は、高大接続を柱とした三位一体の教育改革の一角とされています。そこで大学の英語教育事情を見るにあたり、吉田研作先生はまず、初等中等教育における学習指導要領の変遷を紹介していきました。
学習指導要領の試案が出たのは、1947年のことです。その時点ですでに、「英語で考える習慣をつける」ことが、日本の英語教育の目標として掲げられていたのは興味深いことです。4技能の習得が重要であることも、英文和訳や和文英訳が英語教育の目的でないことも、今から70年以上も前に、学習指導要領に明示されていたのです。
その後も時代が進むとともに、実践的コミュニケーション力の育成や、英語圏以外の地域にも目を向けた国際理解の要素などが、次々と学習指導要領に盛り込まれていきました。学習指導要領の歩みを見ていると、とにかく英語ができる日本人を育成しなくてはという意気込みが、伝わってくるようだと吉田先生は言います。
しかし実際の高校の教室では、21世紀に入っても、英語といえば教科書本文の音読や内容確認、和訳、発音練習、キーセンテンスの暗唱、文法の解説と練習問題といった活動が中心になりがちでした。
「そこにコミュニケーションの活動はありません。戦後ずっと学習指導要領が示し続けてきた方向とは裏腹に、高校の現場では、言語形式を中心とする教育が長いこと続いてきました。その大きな原因が大学入試です」。
大学入試が変わらない限り、高校の英語教育も本当の意味で変われない。大学側の英語教育環境も、高校までの英語教育環境も、長い時間をかけて整えて、ようやく今回、大学入試改革が実現することになりました。

ようやくつながる高大の英語教育

ここで吉田先生と一緒に、今日までの大学における英語教育の足跡を見ておきましょう。
学習指導要領が当初から、コミュニケーション重視を明確に打ち出していたのに対し、大学の状況はまったく違っていたようです。1950年当時、日本の大学の英語教育は補助科目に過ぎなかったといいます。その頃は、大学で英語を学ぶのはコミュニケーションのためではなく、それぞれの専門分野に関する外国の文献を読んで理解できるようになることが、主な目的だったからでした。
他の一般教養科目と同じように、外国語科目が大学にできたのは、1956年のこと。その後の大きな変化は、40年近く経った90年代以降に訪れます。多くの大学が外国語教育の研究センターを開設し、大学レベルでの英語教育でも、コミュニカティブ・アプローチの必要性が叫ばれるようになったのです。
少子化やグローバル化を背景に、どの大学も競うようにキャンパスのグローバル化に注力するようになり、海外協定校を広げて、学生の交流、教員の交流、共同研究の活性化に取り組み、留学生や外国人教員の増員、日本人学生の留学促進、英語で教えられる科目の増設も進み始めました。大学のグローバル化を後押しするように、2014年には文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業もスタートしています。
「そういう流れの中で、英語教育に関するメソドロジーの研究や、第二言語習得に関する研究も活発になっていきました。大学においても、外国語教育は単なる技能教育ではなく、内容重視の方向へと転換。昔は、英会話の授業、文法の授業と、技能別に指導していたのが、今は4技能をまんべんなく使う統合型教育が中心です。
このようにして、高校以下でやっている英語教育と、大学の英語教育とが、ようやく本当の意味で接点を持つようになり、その結果、やっと大学入試を変えられる状況になったのです」。
今回の大学入試改革は、バラバラだった大学教育と初等中等教育が、70年かけてやっと1本の線でつながったことを意味します。「これは日本の教育において、革命といってもよいほど大きな意味を持つ」と、吉田先生の言葉にも力がこもりました。

知識を使って何ができるかを問う授業へ

2020年度からは、大学入学共通テストにも4技能テストが導入されます。これからは小学校から大学まで、より内容を重視したコミュニカティブな英語教育が主流になっていくでしょう。
そうした教育を実現するために、CLIL(Content and Language Integrated Learning)、EMI(English as Medium of Instruction)、CBI(Content-based Language Instruction)などの手法に関心を寄せる英語の先生も少なくありません。 これからの英語教育においては、「言葉で定義したり、説明したりできる概念や知識」を意味するDeclarative Knowledge(宣言的知識)よりも、「持てる知識を使って何かできること、ハウツーやノウハウ」につながるProcedural Knowledge(手続き的知識)が重視されるだろうと、吉田先生は語ります。
そうであるならば、教育現場が目指すべきは、単に英単語や文法の知識量を増やす授業ではなく、知っている単語や構文の知識を駆使して表現し、コミュニケーションする力を育てる授業であるべきでしょう。小学校も、中高大学も、こうしたProcedural Knowledgeの力を育む教育へと進みつつある中、それを実現する統合型教育の手法として、アクティブ・ラーニングの浸透と洗練にも、ますます期待が寄せられるところです。



(文・構成:田中洋子)

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