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セミナーレポート
独自の英語プログラムとインターンシップ制度で、
実践的な英語力の習得を目指す九州産業大学

全学部の英語教育を統括して行う、九州産業大学の取り組み

英語教育の重要性がますます増している教育現場において、大学ではどのような取り組みがなされているのでしょう。講演「eラーニングおよび準拠教材を活用した授業とインターンシップ制度の取組」(2019年6月22日/TKPガーデンシティ天神)より、九州産業大学(福岡県)の事例を紹介します。

全学部横断型、能力別英語教育プログラムを実施

九州産業大学の語学教育研究センターに所属する大薗修一氏に、語学教育プログラムの概要と、プログラムに対応した教科書の開発についてお話いただきました。


「九州産業大学は来年、建学60周年を迎えます。学生数は1万人を超えるぐらいの規模です。私が所属する語学教育研究センターは、全学部の一般英語教育を一括して担っていて、この15年ほどは『グローバル・イングリッシュプログラム』という英語教育プログラムを行っています。

入学者全員にプレイスメントテストを実施し、最もレベルが高い、レベル1に認定された学生は『キャリアイングリッシュ』クラスに所属。1年次から実践的な英語力習得に向けてネイティブの教員が徹底指導し、卒業時点でTOEIC(R) L&R テスト 600点以上に到達することを目指します。一方、レベル2~5に判定された学生は、『全学共通英語教育』クラスに入り、学期末に行う英語アチーブメントテストで一段階上のレベルを取得することを到達目標とします」。

プログラムの特徴は3つあるそうです。1つめは全学生をミックスした学部横断型能力別クラスであること。1クラス約30名で、1年生は100クラスぐらいに分かれます。後学期の終わりに行うアチーブメントテストの結果で、クラスは再編されます。2つめは、オリジナルの英語教科書を作成し、レベル2~5のクラスで活用することと、eラーニングの全学規模での実施です。小テストも毎週行います。そして3つめは、確実にアチーブメントテストのスコアが毎年アップしていることです。

「こうした全学的なプログラムを実施する上で、指導ガイドラインの作成や時間割の調整が必須です。本学では、Listening、Reading、Speaking、Writing、Vocabulary、Grammarのカテゴリーで、レベル別に目標を提示した指導ガイドラインを作成。指導教員・学生全員がガイドラインの内容を理解し、授業に臨みます。例えばVocabularyは、4000語を収録した本学独自のワードブックから2000語を習得する、といった目標です。評価基準も全学で統一しています」。

オリジナル教科書の開発で英語力の底上げを図る

大薗氏は、完全オリジナルの教科書を制作した背景を説明しました。

「15年ほど前、すでに能力別クラスを導入していましたが、教科書は各教員が自由に選んだ市販のものを使用していました。この頃、プレイスメントテストをすると、一学年2500名ぐらいの学生のうち1000名以上、約40%が初級クラスに分類されました。英語が苦手な学生が大多数で、文法力の底上げの必要性やモチベーションの低下を感じている現場の教員から、英文法の教科書を作るのがいいのではないかとの声が上がりました。そこで、ALC NetAcademyの『文法コース』を教科書にできないかアルクさんに相談して、オリジナルの教科書を作成することになりました。作成に際しポイントは、初級・リメディアルクラスの学生の英語力に対応していること、文法事項に特化した再入門的テキストであること、eラーニングとの連動性の3点です」。

教科書の導入により、授業中に教科書でしっかり学び、学んだ範囲の課題をeラーニングで学生に自学させ、次の週に小テストを行う、という「三段階指導」が実現。必要最低限の基礎力が養えたと言います。

「同じ教科書を使って授業を行うことにより、教員間の情報交換の活発化や授業内容の共有化という、指導側のメリットが明らかになりました。学生側には、少し容易なレベルに設定したテキストを使うことで、解ける問題のある安心感を与え、1冊のテキストを1年でやり切る達成感のほか、小テストもしっかり合格するという波及効果がありました。

教科書は、現場の声を生かして改定も行いました。2016~17年度には2年間をかけて全面改訂した新たな教科書を作成し、2018年度から使用しています。使用し始めてから、教科書についてのさまざまな意見を集めるため、約100名の常勤・非常勤講師を対象とした懇談会を開催。教員間の協働性の推進が図れています。また、学生の英語力の向上については、三段階指導を継続することにより、確実に成果が上がっていると実感します」。

大薗氏が話すように、2018年度入学生のうち、プレイスメントテストで初級だった約300名の半数が、学年末のアチーブメントテストで中級レベルにアップしました。

実践的な英語力を養うインターンシップ制度

続いて、九州産業大学、語学教育研究センターの小松邦彦氏が、実践的な英語力育成につながるインターンシップ制度について紹介しました。

「本学で実施している海外ジョブトレーニングは2007年、国内ジョブトレーニングは2010年にスタートしました。このプログラムの目的は、グローバルな人材を輩出するため、実践的な英語コミュニケーション能力と国際感覚を身に付けた学生を育成することです。全学部の学生から英語成績優秀者を対象に、集中英語研修とインターンシップを行います。
これまでの実績として、海外ジョブトレーニングが約170名、国内ジョブトレーニングは68名が参加しました。昨年度は海外ジョブトレーニングに12名が参加、今年度は14名の予定です。本学に入学する学生の質が変わってきたのか、年々、このプログラムについての問い合わせが多くなっていて、海外に行きたいという学生が増えています」。

参加者は、レベル1である「キャリアイングリッシュ」クラスに所属し、「Four Skills Ⅰ」※の単位を取得していること。その上で、TOEICテストの点数と面接の結果で選ばれます。参加決定後は、週一回の特別授業に必ず出席して研修に向けた英語力強化を図ります。 ※キャリアイングリッシュプログラムの外国語科目名

「国内ジョブトレーニングの参加要件も同じで、こちらは海外に派遣するにはまだ英語力が足りない学生が参加します。まず国内ジョブトレーニングに参加して英語力を磨き、次年度以降、希望があれば選考を行います」。

国内・海外で英語の集中トレーニング

海外ジョブトレーニングは、集中英語研修が2週間、インターンシップが2週間の計1カ月、ニュージーランドで過ごします。
「昨年度は、オークランド工科大学で2週間の集中英語研修を受け、現地企業などでのインターンシップを実施しました。インターンシップ先は、学校、ファーム、ホテルなど、さまざまな環境をそろえ、学生が希望するところに派遣できるようにしています。

一方、国内ジョブトレーニングは、3泊4日で英語漬けの集中合宿を行います。授業以外にさまざまなアクティビティなども取り入れながら、合宿中は英語のみを使って生活します。合宿後に、国際的な業務を行う国内企業でのインターンシップを実施。JETRO、アルクさんなどに学生を受け入れていただきました。インターンシップの評価は各マネジャーからいただき、単位の評価に含めています」。

インターンシップ後は、プログラムを通じた英語力の伸びを測るため、全員TOEICテストを受験。成績はこの結果を踏まえて評価されます。TOEICスコアの伸びは平均で40~50点アップですが、中にはかなりスコアを伸ばした学生もいるそうです。

「プログラムの参加者には意識の高い学生が多く、卒業後の進路は公務員や大手企業に決まっています。国内・海外ジョブトレーニングを終えた後は、「キャリアイングリッシュ」クラスを継続して受講し、修了を目指します。最終的にTOEIC 600点を取得した学生には、修了証明書を出し、表彰します。3~4年間かけて全てをクリアするのはなかなか難しく、修了者は1、2名と少ないのですが、年々増えていて今年度は4、5名が修了予定です。やっと本学の教育の種が花咲いてきているのかなと思います」。

確かな教育プログラムを確立することで、英語教育の成果が上がることが分かった講演でした。大学全体の英語力がアップすることは、在学生の意識の変化につながり、入学志望者に対しても大学選択の際の魅力の一つになることでしょう。


(文・構成:溝口葉子)

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