グローバル人材育成の総合ソリューションパートナー アルク

セミナーレポート
留学生対応に役立つ
異文化コミュニケーションスキル

英語教育やグローバル人材育成のさまざまな課題解決をテーマとした総合イベント「アルク教育ソリューションEXPO 2019」が、2019年5月31日~2日にかけて東京・神田で開催されました。セミナーの様子をご紹介します。


アルク教育ソリューションEXPO 2019
【日程】 2019年6月1日
【場所】 アーバンネット神田カンファレンス

株式会社アルク専属コンサルタント
吉中 昌國 講師


文化の表層から核心まで
'タマネギモデル'で考える

「文化」を考えるための一例として、吉中講師はまず、'タマネギモデル'を紹介します。文化はタマネギのように、層になっているというのです。

'文化のタマネギ'の表層は、<外観・見かけの文化>です。住居、ファッション、ヘアスタイル、言語など、来日した留学生がすぐ気づく文化の違いがここに入ります。次の層が、マナー、常識、挨拶など<ルールや規範の文化>。最深部にあるのが、結婚や家庭の意味、正義、信仰、道徳、あるいは美意識などを含む、<価値観の文化>です。

「<価値観>は、その文化の根源的な要素です。どの文化の人々も、自分たちの文化がもつ<価値観>に従って行動します。そして、<価値観>を実現するための約束事が<ルールや規範>であり、当然、態度や言動などの<外観・見かけ>にも反映されてきます」と、吉中講師。

私たちが出会う留学生も、みんなそれぞれ、文化のタマネギをもっていて、日本に来たばかりの時期は特に、出身文化における正しいこと、大切なことをやろうと頑張ります。その結果、さまざまな誤解や軋轢が生じます。だからこそ、その人の言動に投影される文化のコアの部分、規範や価値観を知る努力が不可欠です。

異なるルールが支配する異文化をワークショップで実体験

続いてトランプを使ったグループワークが始まりました。ルールを書いた紙が各グループに渡され、それに沿ってごく短いゲームを繰り返し、その都度勝者を決めていきますが、ポイントは、ルールを書いた紙は回収する、無言でゲームをするという2点です。

吉中講師はゲームの途中で何度か、各グループの勝者に対して、別のグループに移動するよう指示を出しました。とたんに小さな戸惑いが生じます。移動した人には、移動先のゲームルールがわからないのです。一見、全員が同じゲームをしているようでありながら、実はトランプの数字の意味や、勝ち負けを決めるルールが、グループによってまるで違っていたのでした。

ゲーム終了後、他グループへの移動を経験した人からは、「そのグループのルールがわからず、最初は見よう見まねで大変だった」、「別のグループには別のルールがあると知っていたら、もっと楽だったと思う」、「元のグループに戻ったとき、これでフェアに扱われるとホッとした」などの感想が上がりました。

このゲームでは、グループごとの数字の意味の違いは<手順の違い>、勝者の定義の違いは、<評価基準の違い>です。留学生に当てはめると、<手順の違い>は、先生や職員に何を連絡すべきか、生活では何を優先すべきか、時間はどう使うべきかなど、<評価基準の違い>は、礼儀正しい言動、評価される態度、チーム貢献などの定義や解釈の違いに表れます。

「途中で他のグループから入ってきた人の困ったようすや、表情の硬さは、留学生にも通じます。彼らも文化的な<手順>や<評価基準>の違いに、戸惑っているのかもしれませんね」(吉中講師)

相手の文化背景を知ると、留学生の言動の意味がわかる

後半では、留学生の「ちょっとおかしな言動」を取り上げて分析し、最後に吉中講師が解説を行ないました。

【タイ人留学生のケース】 タイ人学生が分析の手順を間違えたので、教師が指摘したところ、本人はニヤニヤ笑うだけ。
【解説】 礼儀はタイ文化のとても大切な価値観。その礼儀の表現のひとつが笑顔です。この学生の笑顔は、先生に対する礼儀として、また「わかりました」という意味で、精一杯の笑顔を見せていたのでした。

【中国人留学生のケース】 中国人の学生が実験準備に忙しそうだったので、日本人の学生が手伝ってあげた。でも相手からは「ありがとう」のひとこともない。
【解説】 中国では、親しい間柄で「謝謝」はまず使いません。いちいち感謝を口にするのは、冷たくよそよそしい行為なのです。言葉で片付けるということは、「もうお礼は言ったから、これでおしまい!」と、友だちに言うようなもの。日本文化とかなり違う感覚なので、理解するのに苦労する部分ですね。

【インドネシア人留学生のケース】 インドネシア人の学生が、廊下にあった花瓶をうっかり割ってしまった。それなのに謝らない。
【解説】 日本人は何か問題があったらまず謝ります。自分に責任がなくても謝ります。謝罪はおうおうにして礼儀だからです。しかし多くの国では、謝ったらおしまい。インドネシアも例外ではありません。数週間で帰国してしまう学生ならいざしらず、そうでなければこの際、日本では素直に謝ってもひどい目には合わない、むしろ立派なことだと、日本の文化を説明して理解させるのもよいでしょう。

【韓国人留学生のケース】 帰省した韓国人の学生から、休みあけにお土産をもらった。数日後、お返しに自分の町の名物を渡したが、嬉しそうな顔をしない。
【解説】 日本ではなるべく速やかに、相手が気兼ねしないよう半額程度の物を返す風習があります。一方韓国では、贈り物をもらったことを長く心に留めておき、自分がどこかへ行ったときに、よいお土産を買って来て渡します。つまり日本より、だいぶ長期的なやりとりなのです。だからすぐお返しをされると、「さっさと清算してケリをつけたい」と言われたように感じるようです。

世界には本当にいろんな文化がありますが、吉中講師のおススメは、「短絡的に決め付けず判断を保留する」こと。留学生との関係においても、人間の言動の奥にある文化の規範や価値観を、互いに理解しようとする努力を続けたいものです。

(文・構成:田中洋子)

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