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セミナーレポート
学生に伝わる授業のコツとは?
「大学の授業を英語で教える」デモレッスン

「大学の授業を英語で教える」と題して、アルクが教員向けに提供しているFD研修の一部を体験いただける参加型デモレッスンの模様をレポートします。


【日程】 2019年8月5日
【場所】 アルク市ヶ谷本社

ベン トーマス / Bence Tamas (アルク 英語・異文化プログラムディレクター)
2009年日本文部科学省国費研究生として来日、2013年応用言語学博士後期課程を卒業。
日本の金融、保険会社でビジネス英語と国際ビジネスコミュニケーションのトレーナーとして勤務。2016年より現職。
教材や研修プログラムの開発、指導力および英語力を向上させるセミナー、研修会で講師を務める。
専門は教育論、言語教育、学習モチベーション、学習方法、異文化コミュニケーションなど。


今、求められるのは「グローバルイングリッシュ」

デモレッスンを担当するベン・トーマス講師はハンガリー出身。英語も日本語も母語ではありませんが、日本の企業や大学では「英語で教える」「日本語で教える」のどちらも経験しています。

まずはアイスブレークとして、3~4名のグループごとにディスカッションを行いました。テーマは、「もし勤務する大学から『来月から英語で授業をしてください』と言われたらどうするか」。すでにそのような状況にある人は自身の体験談を交えながら、皆さん英語で活発に意見交換をしていました。

「実際のプログラムでも、受講者に同じ質問をしますが、大半の方が英語で教えることに抵抗があるようです。でも、心配する必要はありません。必要なのはネイティブスピーカーのような英語力ではなく、ネイティブか非ネイティブかにかかわらず、誰とでもコミュニケーションを取れる英語、グローバルイングリッシュが求められているのです」。

英語で授業を教えるための4ステップ

そうは言っても、現在は日本語で行っている授業をいきなり100パーセント英語に切り替えるのは大変です。ベン講師自身も、かつて「授業を日本語でやってほしい」とリクエストされ、10日間で慌てて準備した経験があるそう。そのときの経験を踏まえて導き出されたのが、以下の「日本語で授業を教える」から「英語で授業を教える」までの4つのステップです。

Step 1. Translation(翻訳)......手元にある日本語の教材を、必要に応じてGoogle翻訳なども使いながらすべて翻訳する。
Step 2. Templates(テンプレート)......Step 1を行ううちに、重要な箇所が分かってくる。それをテンプレートとして使う。
Step 3. Phrase(フレーズ)......テンプレートを何度も使ううちに、キーフレーズが分かってくる。
Step 4. Free Talk(フリートーク)......キーフレーズを何度も使ううちに、それらが自分のボキャブラリーとして身につき、使いこなせるようになる。

「Step 1の段階でも英語で授業はできます。やがて、自然とStep 4に到達できるでしょう。まずは、Step 1からでも始められるということを覚えておいてほしいのです」。

学生に伝わりやすい英語を話すには

学生が英語でのコミュニケーションに慣れていない場合は、彼らにとって理解しやすい英語を話すことが特に重要です。そのためには、何をすればいいのでしょうか。ベン講師が自らの経験から導き出したのが、次の3つのヒントです。

1. ゆっくり話す
2. シンプルな単語を使う
3. 短い文を使う

1の「ゆっくり話す」の目安として、「10秒間に23 wordsを話すスピードが理想的」とベン講師。デモレッスンでは、ストップウォッチで時間を計りながら、全員で10秒間に23 wordsの文、20秒間に46 wordsの文を言ってみました。時間より早く言い終えてしまった人も、時間内に言い終わらなかった人もいましたが、それぞれ改善点を具体的に知ることができたようです。

続けて、2の「シンプルな単語を使う」の例として、英文を易しく言い換えてみるアクティビティーを行いました。例えば、The device is located in the vicinity of the entrance.(その機械は出入り口付近にあります)という文はThe machine is near the door.と言い換えることができ、さらにとことん易しくするとHere it is.(ここにありますよ)とも言えます。

3の「短い文を使う」についても、同様に、一文が長い英語を短く切り分ける練習をみんなで行いました。以下がその一例です。

First, put the money into the machine, then select the drink you want to drink and push the button, and when the drink falls out, you can open the door and pick the can up.

Put the money into the machine. Select the drink you want to drink. Push the button. The drink falls out. Open the door. Pick up the can.

「英語で」理解するためのアクティブ・ティーチング

学生が「英語を」理解できるようになったあと、彼らに「英語で」授業の内容を理解してもらうためには、どうすればいいのでしょうか。ベン講師は、アクティブ・ティーチング(active teaching)の重要性を説きます。
「アクティブ・ティーチングは、学生が講義を聞いて勉強するのではなく、自分の気づきや発見から学べるように導く指導方法です。日本語で教えた場合の理解力を100とすると、英語で教えた場合はそれが40~60パーセント程度に下がると言われています。でも、学生のタスクを増やすことで10パーセント、グループワークやディスカッションで10パーセント、フィードバックによって10パーセント、写真や動画、見学などの教具によって10パーセントと、理解力を高めていくことができます」。

アクティブ・ティーチングの実践例として、英文で書かれた資料を読み、グループごとに異なる質問テーマでディスカッションを行うアクティビティーが行われました。さらに、各グループから1名ずつが集まって別のグループを作り、自分のグループではどのような話し合いが行われたか、1人あたり1分間のプレゼンテーションも行いました。

「このようなグループワークを行うことで、全員が話す機会を得られます。今日はあいにく時間が限られていますが、グループディスカッション、ファシリテーションを成功に導くためのコツは他にもたくさんあります。実際の研修では、それらもお伝えします」。

まとめと事例紹介

最後に、英語で授業をするために教師がこれからできること(Your future progress)、また、実際のプログラムで扱うその他のテーマが紹介され、デモレッスンは終了しました。テーマの一つである「異文化コミュニケーション」については、大学から問い合わせを受けることが多いそうで、関心の高さが伺えます。
デモレッスン終了後は、アルクが行うFD研修の事例を紹介。大学院の授業をすべて英語化することを目標に合計8回のFD研修を実施した大学様や、アルクからネイティブ講師を派遣し年間200日あまり常駐させることで、教職員や院生などから個別の英語相談を受けられるようにしている大学様の事例が紹介され、全セッションが終了しました。

(文・構成:いしもと あやこ)

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