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セミナーレポート
北海道大学の取組事例について
~成果の出るFD・SD研修~

主に英語の先生方、大学ご関係者の方々を対象に行っているアルク主催「大学のグローバル化 情報交換セミナー」の第22回が、2019年9月28日に東京・神田で開催されました。

当日は、北海道大学の山本堅一先生、創価大学の山本梓先生と平野光彦様、そして東洋学園大学の下山幸成先生による発表が行われました。その中から、北海道大学の山本堅一先生による講演の模様をお伝えします。


大学のグローバル化 情報交換セミナー Vol.22
「学びの在り方」について考える

【日程】 2019年9月28日
【場所】 アーバンネット神田カンファレンス

北海道大学高等教育推進機構
特任准教授 山本堅一先生


なぜFD・SD研修に力を入れるべきなのか

北海道大学にある高等教育推進機構は、大学の教育機能を向上するための活動を行っています。2015年には同機構内に高等教育研修センターを設置し、全学のFD・SD研修を担当するようになりました。山本堅一先生はFDの専門家として、各種の研修講師や教員・学部学科に対するコンサルティングを行っています。

同大では年間約50の研修を実施していますが、学外・学内を問わず若手からベテランまでさまざまな人が参加しており、高い評価を得ています。

例えば2018年度は、FD・SD研修参加者のうち44.0%を他大学からの参加者が占めました。リピート率も徐々に増えており、2015年度の18.0%から、2018年度は28.3%に上昇しました。山本先生は、「リピート率はまだ高いとは言えません。ただ、熱心な一握りの人だけではなく、毎回いろいろな人が研修に来てくれています」と話します。

北大ではなぜFD・SD研修に熱心に取り組むのでしょうか。山本先生は4つの理由を挙げました。

1点目は、「研究大学」であること。「日本の場合、教員は授業を持たなくてはならず、研究だけに力を注ぐわけにいきません。だからこそ、FDを通じて教育に関する悩みを解決し、負担を軽減することで、教員が研究時間を確保できるようにサポートしたい」と力を込めます。
2点目には、「北大が力を入れている。うちの大学もやらなくては」と周辺大学へプレッシャーを与えるため。3点目に「北海道の基幹大学としての責任」を挙げ、4点目としては「何よりも、学生のためです」と強調しました。

ベネッセ教育総合研究所が2018年に公表した「第3回大学生の学習・生活実態調査報告書」によると、「授業に興味関心を持っていない」と答えた大学生が68.7%にも上りました。山本先生は、「我々が大学生のときは、授業に興味がなければ出席しませんでしたが、今は、大学側で学生が授業に出ざるを得ない状況を作っています。授業に出させるのであれば、もっと学生に興味を持ってもらえる授業作りをすべきでしょう」と話しました。

成果が上がる研修の7つの条件

研修で成果を出すためには、優れた内容の研修を行うことはもちろんですが、あわせて以下の7つの条件を満たすことが必須です。

1. 参加を強制しない
特に教員は強制されるのを嫌います。強制されて嫌々参加している人、つまらなそうな態度の人がいると、会場の雰囲気が悪くなり、研修の場にネガティブな影響をもたらします。

2. 実施回数を増やす
北大では昨年度、51回の研修を実施しました。月4回以上行われていたことになります。「常に何かをやっている」状態だと、気軽に参加できます。

3. 単発ではなく、体系的なプログラムとして提供する
体系的であれば、学びや成長を実感することができ、「また次も参加しよう」と思ってもらえます。

4. いつでも視聴できる動画教材を提供する
多忙な教職員のために、講師の許可を得られた研修は動画を撮り、出席できなかった人にも見てもらえるようにします。

5. 参加者同士で情報交換できる場を作る
研修では、現場で努力している人たちが参加者として集まることになります。ほかの参加者から得られる学びは、講師から得られる学びと同様に貴重です。参加者同士の情報交換を促すとよいでしょう。

6. 研修内容を常に見直し、ブラッシュアップする
研修時にアンケート用紙を配布して回収したり、事後にメールやインターネットでアンケートを取ったりするなどし、参加者から研修内容についてのフィードバックを集めるようにします。そして、アンケートで得られた参加者の要望を反映して、研修をよりよいものにしていきます。

7. 役職者が率先して学びを体感する
特に事務職員に言えますが、役職者が研修による学びを体験したことがないと、部下に研修に参加するよう促すことにならず、職場全体で研修を受ける雰囲気ができません。

3階層へのアプローチが成功のカギ

研修担当者がこれら全てを実行するのは、簡単なことではありません。山本先生は、7つの条件を満たそうとするときによく挙がる3つの悩みや疑問と回答を紹介しました。

お悩み:研修を受けてほしい人ほど来てくれません
回答:いいのではないでしょうか。やる気がない人が受講しても、学びを得て変わる可能性はほとんどありません。

お悩み:大学に研修の専門部署がないため、回数を増やせません
回答:全国で行われているさまざまな研修の情報提供をして、教職員に参加を勧めます。北大で調査したところ、研修を知ったきっかけとして最多(54.8%)だったのは、「所属部局の事務担当者からの通知」でした。教員は忙しいので、自分で情報を探しにくいものです。メールで情報を流すとよいでしょう。

質問:研修を実施していれば教育の改善につながるのでしょうか。成果は出るのでしょうか。
回答:実施していれば、いつかは成果が出るはずです。ただ、3階層全てで取り組む必要があります。この3階層とは、大学全体の制度を見直すための執行部を巻き込んだ「マクロレベル」のアプローチ、部局が抱える個別課題に対するコンサルティングやカリキュラムなどを改善していく「ミドルレベル」のアプローチ、そして、授業方法のコンサルティングや各種研修、アクティブラーニング推進のための教材開発などをサポートすることで、各教職員の教育力や業務遂行能力を上げていく「ミクロレベル」のアプローチです。

先生は、多くの大学ではマクロやミドルのアプローチしか実施しておらず、ミクロまで十分にやっているところは少ないと実情を語ります。「ミクロレベルの実行は大変ですが、これら全ての階層にアプローチしないと成果は上がりません」と強調しました。

「FD・SD研修の参加率を上げたい」「効果の上がる研修を実施したい」と考えながらも、具体的にどう改善していいかわからないという研修担当者は多いようです。山本先生の講演は、目指すべき研修のあり方を具体的に示しており、FD・SD研修を改善するうえでの大きなヒントになったのではないでしょうか。


(文・構成:大井 明子)

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