グローバル人材育成の総合ソリューションパートナー アルク

セミナーレポート
先進的かつ全学的な取り組みで国際化を推進する、
創価大学

今後の大学教育のあり方として、一つの軸となるのがグローバル化です。教育の国際化を推進し、文部科学省「スーパーグローバル大学創生事業(SGU)」の対象大学として選定された、創価大学(東京都)の取り組みとこれまでの成果を紹介します。


SGUでの取り組み事例と、e-learning活用事例
【日程】 2019年9月28日
【場所】 アーバンネット神田カンファレンス
創価大学 講師 山本梓先生
学習支援課 平野光彦氏

グローバル教育に力を入れ 文部科学省の最高評価を獲得

グローバルな人材を育成することは現代日本における課題の一つです。文部科学省は、国際化を推進する大学を支援する目的で「グローバル人材育成推進事業(GGJ)」を2012年に創設。同事業は2014年、「スーパーグローバル大学創生支援事業(SGU)」に組み替えされ、全国で37校が対象校に選定されました。いずれの事業にも選定された創価大学は、東京都八王子市にある総合大学です。

「当大学では開学当初から英語教育に注力してきました。特に2010年以降、大学教育の国際化を重要な戦略的目標に位置付け、学生の海外派遣および留学生の受け入れ増加に向けて環境を整備してきました。現在、海外交流校は61ヶ国・地域、218大学まで拡大しています」と、学習支援課の平野光彦氏。

GGJおよびSGUの選定後は、具体的な数値目標を掲げてさらなる国際化を推進してきました。その結果、2013年度から2018年度までの6年間で、全学生に占める外国人留学生の割合は3.8%から11.2%へと3倍近く増加。TOEFL iBT(R)で80点以上、TOEIC(R) L&R TESTなら730点以上に設定した語学基準を達成した学生は、300名前後から1200名超へと4倍以上に大幅アップしました。こうした成果が評価され、昨年度の文科省の中間評価では「優れた取り組み状況であり、事業目的の達成が見込まれる」として、最高評価Sを獲得しています。目標数値の達成はもちろんのこと、特に評価されたのは「さまざまな部局が有機的に連携して全学的な取り組みとなっている」という点でした。

創価大学においてグローバル教育の一翼を担っているのは、「ワールドランゲージセンター(WLC)」です。1999年、学内全体の英語教育ならびに各種課外プログラムの運営を担う組織として開設。「このWLCが中心となり、英語教授法に関するFD活動を年に数回主催するほか、教員間でのピア・オブザベーションを実施。月1回のコーディネーター会議では英語科目のさまざまな課題などについて議論し、PDCAサイクルを回すことを重要視しています」。

英語教育の運営だけでなく、教育の質やプログラムの向上・改善まできっちりと注力することが著しい成果を挙げる一因となっているのでしょう。

英語力の向上をサポートする 課外プログラムと学習施設

通常の授業以外にも、WLCではさまざまな課外プログラムを運営しています。TOEFL(R)とTOEIC(R)の団体テストを年4回、希望者を対象に実施(検定料は大学が補助)し、夏季・春季休暇期間中にTOEFL iBT(R)対策集中講座を開講。GGJに選定された2012年以降は、「IELTS対策集中講座、フィリピンでの英語研修、留学を目指す学生やグローバルな環境で働きたい学生に向けたプログラムなどを新たに開始しました」(平野氏)。

また、eラーニングを導入し、「ALC NetAcademy NEXT」の「TOEIC(R) L&Rテスト突破コース」を全学部生(約8000名)が利用できるようにしました。一部授業でも活用し、昨年度は1600名が学んだといいます。

ラーニング・コモンズ(総合的・主体的な学びを支援する学習空間)に設置された語学学習施設「WLCセルフアクセスセンター」も、英語力向上に向けての大きな推進力となっています。この施設では、留学生のサポートを得て7つのプログラムを提供しています。

「例えば、日常会話など初級レベルの英会話が楽しめたり、多様なテーマに沿って英語でディスカッションする中級~上級向け、英語圏以外の留学生と交流できるプログラム、英語の自主学習を個別指導するプログラムなどを用意しています。約100名のスタッフは留学生なので、学生同士すぐに打ち解けて会話することができ、利用した日本人学生の8割以上からポジティブな反応を得ています」。

1年生は10回の利用を授業の課題とし、一定の利用回数(20~220回の6段階の回数設定)に達した学生は表彰することで継続利用を後押ししているそうです。留学生スタッフの選定やトレーニングは英語ネイティブの教員が担当し、専属職員がマネジャーとして運営をサポートする体制も整えています。

学習理論に基づいて 組み立てられた授業を展開

創価大学の英語の授業は、習熟度別に4つのレベルでクラスを編成。また各学部の専門に特化した授業を展開しているのが特色です。

海外留学を目指す学生や、グローバルな環境で働きたい学生のための英語クラスを担当する山本梓先生は、カリキュラムを考えるときに応用言語学者のポール・ネーション教授が発案した「The Four Strands」を参考にしていると言います。「Strandsには糸という意味があります。英語教育のいろいろなメソッド、アクティビティを糸に見立て、それぞれの強みを生かしてバランスよく学習に取り入れることで、糸をより合わせて強く太い学習をしていこうという考えです」。

このフレームワークは、90分の授業の組み立てはもちろん、長期間にわたる授業計画、あるいは自主学習にも使える考え方で、幅広いレベルの学習者に適用することができます。 「The Four Strandsでは、教員は『プランナー』であるとされ、学生が学べる環境がしっかり構築できているか、レベルに合ったものを提供できているか、学生のモチベーションを保てているか、といったプランニング力を重視します」と言い、学習内容のレベルを難しくし過ぎないこと、学生が興味を持てる内容であることにも気をつけるそうです。

「The Four Strands」を構成するのは、「Meaning Focused Input」「Meaning Focused Output」「Language Focused Learning」「Fluency Development」の4つの要素で、それぞれ同じ割合で学習するのが理想だと言います。

Meaning Focused Input
意味に注目したインプット。活動例は、話を聞く、会話の聞き手になる、授業での説明を理解する・指示に従う、映画・テレビを見る、多読など。

Meaning Focused Output
意味に注目したアウトプット。活動例は、設定を決めてのロールプレイ、会話の話し手になる、意味・内容を伝えるためのスピーチやプレゼンテーション、手紙・日記のライティングなど。

Language Focused Learning
意味にフォーカスするStrandsと異なり、意図的に言語の要素に注目する。活動例は、発音練習、文法穴埋め問題、単語学習、精読、訳読、ディクテーション、辞書の使い方やリスニングなどの勉強法を学ぶなど。ここでの学習内容を他のStrandsに連動させることが重要。例えば、前置詞を学んだら、リスニングやリーディングでも前置詞がたくさん出てくる教材で学習すると相乗効果が期待される。

Fluency Development
流暢さを鍛える。時間制限のあるスピーチ、何度も同じ内容を読む、何度も同じ内容を伝える、多読・多聴、速読、10分間ライティングなど。扱う素材は、Meaning Focused InputやMeaning Focused Outputよりも簡単なものにする。

学習内容のバランスを意識した授業を行い 家庭学習にはeラーニングを活用

山本先生が担当するTOEICクラスでは、10分間の「Timed TOEIC」、「NGSL」や「TOEIC Word List」の中で自分が分からない語を単語帳に書いて暗記する単語学習、同じ内容で3分・2分・1分とスピーチ時間を短くしていく「3/2/1」、多読・多聴、教科書での学習などを実施。これらをThe Four Strandsに従って分類し、足りない要素を補って授業を組み立てたそうです。

1学期の授業を終えて学生にアンケートをとったところ、先生が気付いたのは「シェアする機会の重要性」でした。自分が勉強したことをクラスに持ち寄り、学んだ内容や分からなかった単語について他の人に英語で伝えてシェアする、といったアプローチです。学生からは、「それぞれの捉え方の違いが分かった」「他の人のコツを聞くと自分が間違えて解釈していたことに気付いた」「人に伝えることでしっかり定着した」などの感想がありました。「問題を解くだけで終わりでなく、理解を深めるチャンスになりました」(山本先生)。

前述のALC NetAcademy NEXTは、主に家庭学習で活用しています。進捗スケジュールの目安を学生に提示し、月1回チェックポイントの日を設けて個人で学習を進めます。問題を解いたら答えの解説を読むところまで学習し、大切だと思ったところをノートに記入。授業では、グループで進捗をチェックし合い、ノートの内容をシェアします。

eラーニング活用のメリットについて、先生は「容易に英語学習ができることはもちろん、記録が残るところも学生にとって優れたツールだと感じます。いつ学習したか、あと何%残っているかといった進捗をすぐ確認でき、管理がしやすいです」と言います。一方で学生は、月1回というチェック日の間隔については、「自分のペースでできるのでちょうどよい」という声が多いものの、「習慣化するためにもっと短い間隔の方がよい」という意見もありました。

今後は学生ごとにチェック日を変えることも考えているという山本先生。チェックの仕方やモチベーションの上げ方など、具体的な要望をいろいろ持っている学生が多いことに驚いたと言います。「しっかりコミュニケーションをとり、どうすれば彼らの学習意欲を上げることができるのか考えながら、柔軟に対応していきたいと思います」。

しっかりした組織の構築、多彩なプログラムの提供、学習理論に裏打ちされた授業の展開など、創価大学ではグローバルな人材育成のためのさまざまな体制が整えられていることが分かりました。これらの全学的な取り組みが、学生の意識を刺激し、語学力を向上させる結果につながったのです。大学教育の国際化の実現には、こういった先進的かつ全学的な取り組みが必要でしょう。

(文・構成:溝口葉子)

戻 る

Contact

ページトップへ