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日本でのキャリアパスを支援する
「留学生のための異文化コミュニケーション研修」
デモレッスン

2019年11月15日、アルクの提供する留学生支援プログラムより「留学生のための異文化コミュニケーション研修」の公開デモレッスンを実施しました。当日の模様をお伝えします。

日本文化と企業への理解を深める

「留学生のための異文化コミュニケーション研修」は、通常、1日7時間程度で行われるプログラムです。留学生に日本文化と企業への理解を深めてもらうとともに、参加者それぞれの異文化コミュニケーションスキルを高めることを目的としています。さまざまな国籍の学生が参加することから、研修は原則として英語で行われ、配布資料は日英併記です。

今回のデモレッスンはプログラムの一部を抜粋する形で実施。45分間という限られた時間ではありましたが、生徒役として実際にアルクで働く4名の外国籍社員が参加、それを大学の教職員の方々が見学されました。


株式会社アルク専属コンサルタント
吉中 昌國 講師


カリフォルニア大学バークレー校大学院で社会学修士号を取得。シリコンバレーで通訳・翻訳に関わる一方で、日本企業の進出をサポートするNGOの会長を務める。現在は株式会社アルクの専属講師として活躍。日本全国の多数の企業と大学で研修を実施している。


※本レポートでは、講師やデモレッスン参加者(外国籍社員)の発言を日本語にしてお伝えしています。

何層にも重なる「文化のたまねぎ構造」

異文化を理解する上では、そもそも「文化」とは何なのかを理解しておく必要があります。そこで、まずは「文化」にどのような要素が含まれるのかをグループで話し合い、出された意見をホワイトボードに書いていきました。ここでは、values(価値観)、customs(習慣)、language(言語)、religion(宗教)、entertainment(娯楽)、clothes(服装)などの要素が挙がりました。

続けて、吉中昌國講師が「あなたが日本で働く上で、最も重要となる文化的要素は何ですか?」と問い掛け、グループで再び話し合います。参加者からは、「仕事のやり方が重要。例えば、残業を多くするよう求める会社もあれば、そうでない会社もある」「服装が大切。IT企業ならTシャツにスニーカーでもいいかもしれないが、伝統的な日本企業であればスーツとネクタイが求められる」といった意見が出ました。

これらの考察を下地に、吉中講師が「文化のたまねぎ構造」を紹介します。「文化は玉ねぎの皮と同じように、いくつもの層が重なったものです。一番外側の層はSigns(外見、見掛け)、2枚目の層はNorms(ルール、規範、原則)、最も内側の層はValues(価値観)。私たちは普段、玉ねぎの外側、つまり他人の外見や行動だけを見てしまいがちです。でも、その内側に隠れた価値観を理解しなければ、相手の意図や目的を誤解してしまうでしょう。異文化を理解する上では、外側だけでなく内側まで見ることがとても重要なのです」。

日本企業で戸惑う場面とは?

次に、日本企業で遭遇し得る、外国籍社員にとって不思議な現象を2つ取り上げ、ケーススタディを行いました。ケースの1つは「会議の場なのに発言しない人がいる」、もう1つは「部下がミスしたにもかかわらず上司が謝る」というものです。

会議で発言しないケースについては、参加者から「自分も実際にこのような経験をしたことがあり、意見を言うモチベーションがなくなった。自分の考えを他人に主張しない慣習があるのかもしれない」という声が上がりました。吉中講師は「多くの外国企業では、会議は意見を出し合い、意思決定をするための場。しかし日本企業では、会議で情報共有に重きを置く場合がある」と話します。

部下のミスで上司が謝るケースについて、韓国出身の参加者は「韓国でも上司が謝るのは自然なこと」と理解を示しました。一方、アメリカ出身の参加者は「母国ではミスをした個人が責任を取る」と言います。吉中講師は「日本企業では、上司がチームの代表として責任を取ることが多い。上司は部下の教育という大きな役割も担っており、その責任は重いと考えられている」と説明しました。

「ホウレンソウ」のメリットを知る

多くの日本企業では「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」が重視されています。しかしながら、吉中講師は「ホウレンソウを実行しなさい、とただ言うだけでは納得できない外国籍社員が多い」と言います。

そこで、報告・連絡・相談の各プロセスにどのような意義があるのかを、グループで話し合いました。参加者からは、「報告することでプロジェクトの最新情報を共有できる」「連絡することでミスを減らせる」「相談することで上司の助言が得られる」といった意見が挙がりました。

吉中講師は、ホウレンソウを通じて「新しい考え、有益な助言、明確な方針、問題への気付き、リスク管理、より良い方法、より確かな合意、より真剣な協力、より滑らかな実行」が得られると説明します。また、「外国籍社員の中には、ホウレンソウが社員の個性を発揮させないシステムであると誤解する人も少なくない。まずはホウレンソウの利点を理解してもらうことが大切」とも強調しました。実際の研修では、ホウレンソウを行う上での具体的なコツについても紹介します。

「日本企業にとって、外国籍社員はもはや不可欠な存在です。大切なのは、外国籍社員が企業にintegrate(溶け込む)すること、そして企業が外国籍社員をinclude(受け入れる)すること。この両方があってこそうまくいくのです」。最後に吉中講師がこのようにまとめ、デモレッスンが終了しました。

事例紹介とQ&Aセッション

終了後は、アルク担当者より、大学や企業における研修の導入事例や、アルクが実施する日本語事業全般についてご紹介しました。

Q&Aセッションでは、参加された大学の職員の方より「日本人と外国籍職員との合同研修にも興味があるが、部内に中国籍職員が多い場合、日本人対中国人といった構造になってしまわないだろうか」との質問がありました。吉中講師からは、「異文化研修はいろいろな国の人が参加する方が面白いが、日本と中国の比較だけでも、とても面白いものになると思う。それぞれの文化のプラス面を語ってもらうことでポジティブな雰囲気が生まれ、互いの文化を認め合う寛容な気持ちが生まれるはず」との回答がなされました。

ディスカッションを通じて異文化について考え、日本人のコミュニケーションスタイルを理解する研修の様子が伝わってくるデモレッスンとなりました。
(文・構成・いしもと あやこ)

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