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セミナーレポート
上智大学短期大学部「通信講座を活用した小学校英語プログラム −カリキュラムと指導実践−」

2021年2月24日、「大学のグローバル化 情報交換セミナー Vol. 31」がオンラインで開催されました。
このセミナーは英語教育やグローバル人材育成に携わる方々、またそれらにご関心の高い大学関係者の方々を対象に、アルク主催で行っているものです。

31回目となる今回は「通信講座を活用した小学校英語プログラム ─カリキュラムと指導実践─」と題し、上智大学短期大学部英語科の狩野晶子先生にご講演いただきました。当日の模様をレポートします。



講演者:狩野晶子 先生
上智大学短期大学部 英語科

市と連携して学生を小学校に派遣

神奈川県秦野市に位置する上智大学短期大学部(以下、上智短大)では、英語科の学生たちが市内の公立小学校を訪れて英語の授業を行う、児童英語教育のサービスラーニング活動(=ボランティア活動)が行われています。活動の名称は「イングリッシュフレンド」。学生4〜6名でチームを組み、独自の自作教材を持参してオールイングリッシュでのコミュニカティブな授業を実践しています。



上智短大では、2002年頃から地域の小学校と児童英語指導を通して交流がありました。
そんな中で学生がボランティアで英語を教える場を模索していたところ、知り合いの小学校の先生から「うちで教えてみる?」と声が掛かったといいます。学生サークルが主体となって小学校で教えるようになり、次第に口コミが広がって他校からも声が掛かるように。2007年には秦野市と提携協定を結び、組織的な学生派遣プログラムとして発展し、今は市内全13校の3、4、5、6年生全員に授業を行っています。

通信講座の導入でJ-SHINE資格が取得可能に

上智短大では2005年、学内のカリキュラムに「児童英語教育コース」を開設。児童英語教育に関する科目群を系統立て、専門的な学びができるプログラムを整えました。このコースの演習科目には「児童英語教育概説」「第二言語習得」「児童英語指導者養成講座」という3つの前提科目が設置されており、いずれかを履修すると「児童英語教育演習(A/B/C)」を受講できます。



「児童英語指導者養成講座」は、アルクの通信講座「アルク児童英語教師養成コース」と連携した科目です(※講座費用は別途)。「アルク児童英語教師養成コース」を修了し一定の条件を満たすと、NPO法人小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)による小学校英語指導者資格(J-SHINE資格)の認定を受けることができます。J-SHINEには準資格と正資格があり、小学校での正規の授業における指導経験が「通算35時間以上」あれば正資格を取得できます。

「児童英語指導者養成講座」の授業はアルク通信講座の内容をベースに進められ、テストの受験やレッスンプランの作成は指導教員がサポートします。「通信講座は一人で受講していると受け身になりがちですが、教室で実際にアクティビティや歌、ゲームなどを行ってみることで、学生たちは臨場感をもって活動を体験できます。学んだ内容が、実体験を通じて『こうすればいいのか』としみ込んでいく様子が見られます」と、狩野先生は話します。

「児童英語教育演習」は、イングリッシュフレンドへの参加を前提とした科目です。毎週月曜日に学内での授業を受け、木曜の午前中を使って小学校に赴きます。授業ではモデル指導案の研究や実践練習に取り組むほか、派遣後の振り返りも行い、「授業でうまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「うまくいかなかった理由」「どうすれば改善できるか」などを考察。計10回の派遣を通じて、学生たちがいかにして自らPDCAサイクルを回していけるかが、大きな評価基準となっているそうです。

J-SHINEの正資格取得を目指す場合、在学中に35時間以上の指導経験を積むのは大変ですが、イングリッシュフレンドでは1学期に10回、2時間ずつ小学校に派遣されるため、2学期履修すれば合計40時間の指導経験が得られます。大学の授業とアルクの通信講座を組み合わせ、小学校への派遣活動で実践を積み重ねることで、J-SHINEの正資格を取得できる仕組みになっているのです。

小学校での体験が学生を大きく成長させる

イングリッシュフレンド自体はあくまでボランティアベースの活動であり、単位認定の対象ではありません。学生にとっても教員にとっても負担は軽くありませんが、「活動を通じて得られる学びは非常に大きい」と、狩野先生は言います。

「児童英語教育に関する知識や理解が深まるのはもちろん、同じ教室の中にも幅があり『いろいろな子どもたちがいる』ということが具体的に見えてきます。学生たちは4人から6人のチームを組んで授業に臨みますが、当然、誰かが失敗することもあります。そんなとき、他のメンバーが自然とフォローする流れができていきます。学生たちにとってはものすごいチームビルディングの機会であり、リーダーシップの涵養にもつながっているのです」



2020年度はコロナ禍のため小学校への派遣が中止となり、大学の講義もオンラインに。そのような中でも、学生たちがレッスンプランとビデオ教材をオンラインで作成し各小学校で取り組んでもらったり、Zoomを使った遠隔授業を行ったりしたそうです。

「イングリッシュフレンドの活動を通じていろいろな子どもたちに接した体験は、本学の学生たちが社会人や母親になった後で、人生をずいぶん楽にしてくれるのではないでしょうか。自分自身の子育てや他の子どもたちに接する機会において、何らかの助けになるといいなと思います」と狩野先生がまとめ、講演が終了しました。

Q&Aセッション~学生の反応や小学校との連携など~

講演後のQ&Aセッションでは、参加者の皆さまから多くのご質問が寄せられました。その一部を、一問一答形式でご紹介します。

Q.「児童英語教育演習」に対する学生たちの反応はどうか。
狩野先生:受講者数は毎学期20〜30名程度でさほど多くはないが、履修した学生たちの満足度は高い。就職や四年制大学編入に結び付くという手応えも感じている。小学校への派遣が始まると、学生たちがその面白さにハマる様子も見られる。
Q.「アルク児童英語教師養成コース」の修了率はどうか。
狩野先生:イングリッシュフレンドの活動前に通信講座を取る場合、修了できない学生が一定割合いる。レッスンプランを書いていてもイメージがわかず、しんどいのだと思う。そのため、なるべくイングリッシュフレンドに参加しながら通信講座を受けるよう促している。
Q.小学校の先生とは連携しているか。
狩野先生:レッスンプランを事前に送り、指導内容や流れを説明している。ただし、授業中は基本的に学生たちがすべて引き受ける形。担任の先生を上手に巻き込むと子どもたちの反応が変わるので、チャレンジしたい事柄として学生たちに伝えている。
Q.学生が入ったことで、小学校の先生に影響を与えるようなことはあるか。
狩野先生:学生たちがオールイングリッシュで授業をする様子を見て「子どもたち、結構分かっているんですね」といったコメントをいただくなど、担任の英語への意識が変わるケースが見られる。

取材・文:いしもとあやこ

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