グローバル人材育成の総合ソリューションパートナー 株式会社アルクエデュケーション
TOP >> 学校法人TOP >> アルクグローバル通信 (2017年8月)
                        

アルクグローバル通信 (2017年8月)

<e-learning教育の現場から>

弘前大学における教養教育英語科目再履修クラスの
取り組みについて

弘前大学 教育推進機構 教養教育開発実践センター 立田 夏子 先生


 弘前大学の教養教育は、2016年度に新カリキュラムが開始されました。必修科目である英語科目が新カリキュラムに移行した際、問題の一つとなったのが旧カリキュラムにおける再履修者(現3年次生以上のべ約300名)への対応でした。その問題の一解決策として、2017年度に再履修者を対象とした再履修クラスを開講しました。そして、再履修クラス2クラスのうち1クラスにて、本学に既に導入されていた「ALC NetAcademy2(以下、NA2)」を使用さていただくこととなりました。

再履修者の問題点と解決策
 本学教養教育英語科目における再履修者の問題として、主に以下の3点が挙げられます。
再履修者は、

  1. 学期開始時から授業への欠席が目立つため、担当教員が個別に欠席者へのフォロー・アップをすることになり、再履修者が多いクラスでは、担当教員の負担が増える。
  2. 英語に対して苦手意識が強く、その心情が行動として現れてしまうことがあるため、そうではない1年次生とともに同じ授業内活動をすることが難しい。
  3. 単位を取得することへの意識が低下している。

これらの問題を解決するために、欠席分のフォロー・アップが最小限で済み、ペアやグループ活動をする必要がなく、学生各自のペースで学習でき、学習内容と学習レベルを学生自身で選択することができるe-Learningシステムを再履修クラスに導入することとなりました。


e-Learning再履修クラスの授業内容
 授業(週1回90分16週間)は、パソコン演習室にてNA2を用いた自習スタイルとしました。毎回、「リスニング1ユニットとリスニング2ユニット、各ユニットを最低20分はかけて学習すること」を最低限のルールとし、授業では「Self-assessment」・「Memo」・「Comments」の3つのセクションから成り立つ「Self-assessmentシート」を活用しました。
 まず、Self-assessmentでは、学習ユニットの出来具合をExcellent/Good/Fair/Poor/Badの5段階で学生が自己評価しました。次に、Memoには、学習した単語やユニットのトピックについての要約、トピックに対する感想、さらには、そのトピックについて自分で調べてみたこと等を記入しました。最後に、Commentsは、自由記述としました。その回に興味を持った学習内容について書く学生もいましたが、「今日はいい天気ですね。」「前回休んでごめんなさい。」など、担当教員とのコミュニケーションの手段としていた学生もいました。シートは授業最後に回収し、担当教員がコメントを書いて、次回返却しました。返却の際は、よく記入していた学生や、興味深いコメントを書いた学生のシートを他の学生に提示し、学生を励ましてモチベーションを高めてから自習できるような学習環境設定に心がけました。

学生の反応
2017年度前期終了時の学生からのコメントです。
  • NA2は、細かくレベルが分かれていて、自分に合ったレベルで学習できるのはとても良かった。
  • 自分の興味と合った話題を選んだりできるほど幅広い分野の話題が使われているので、勉強する意欲が教科書よりも湧きやすかった。
  • 自分のペースで学習できる点が、英語に苦手意識を持っている人にとって良いとこだと感じた。
  • やらされることより、自分で取り組んだ方が身になると思った。
  • 授業自体は自習なのに、なぜか楽しく、少しだけ英語が好きになれた。
  • 仲間とともに慰め合い、高め合っていくことができた。
  • 自習してみて、こんな自分でも英語の勉強できるのか、と実感できた。
  • 今までの英語の授業のような苦痛や不安を感じずにリラックスして英語の学習できた。
  • 大学の「講義」としては相応しくないが、普通の英語の授業では単位が取れないのだから、このスタイルの授業でありがたかった。

今学期のe-Learning再履修クラスを終えて・・・
 「コミュニカティブな授業を!」「アクティブ・ラーニングを!」と叫ばれているこの世の中、「e-Learningで自習する授業スタイルで良いのか・・・。」、「学生はサボらずに学習してくれるだろうか・・・。」と英語教員として葛藤がある中でのe-Learning再履修クラス開講でした。しかしながら、学生は、期待をはるかに超えた取り組みをしてくれました。授業中にNA2以外のことをしていた学生は一人もおらず、ほとんどの学生は、Self-assessmentシートにびっしり記入していました。授業以外でも、自宅でNA2を活用し、全てのユニットを学習し終えた学生までいました。このクラスでの平均授業出席率は87%、単位取得率は91%となりました。
 再履修者への対応に関する今後の課題としましては、通常の1年次生対象クラスで再履修者数を減らす対策を練っていくことが一番ではありますが、e-Learning再履修者クラスにおきましては、担当教員がNA2をもっと使いこなして、100%自習スタイルではないスタイルでの授業を検討することです。再履修者の英語能力とメンタル面も考慮しつつ、授業改善を図っていくことができればと考えております。



ページトップへ
ページトップへ