グローバル教育の現場から
大学教員のための教室英語のご紹介
最近、英語で受講できるコースを設置する大学様が増えています。留学生数の増加や学生の英語力向上などに対応するという様々なメリットがありますが、英語で授業を実施することは容易なことではなく、多くの大学様が英語で授業を行うためのFD研修に力を入れています。
そこで、そのFD研修で、「英語で授業を行なうための研修」を担当する講師より研修内容を紹介いたします。
「授業の質の低下」への懸念
英語での授業をすることになったときに、専門分野の授業を日本語で実施してきた先生方が最も心配されるのは、授業の質の低下です。「自分の英語力では効果的な授業ができないのでは?」「学生の方でも授業を理解するのが難しくなるのでは?」と感じられている先生方も多くいらっしゃるようです。
そこで、学生に理解しやすいように授業の難易度を下げ、カバーするトピックを減らすことはできますが、そうすると今度は、教育のレベルが下がってしまう心配がでてきます。
授業の質を落とさずに英語で教えるためには、学習目標の絞り込みから、質問の仕方の工夫、学習意欲を強める工夫、効果的なフィードバック、留学生の文化への対応まで、さまざまな角度からのアプローチが必要になります。私の担当している研修ではそれを4つのコツにまとめて考えていきます。
英語で授業を実施するための4つのコツ
Q:FD研修の実施を通して感じている点などはありますか?
ベン:豊富な専門知識をお持ちで、日々教育に尽力されている先生方とこのような研修で関わりを持たせていただけることを大変光栄に感じています。先生方の中には英語で授業を行うにあたり、完璧な英語を話せないといけないと思っていらっしゃる方もいらっしゃいますが、もちろんそれは必要ありません。また、一部の学生には将来的に英語が必要だが、大部分の学生には必要ないとお感じの先生も中にはいらっしゃいました。そこで私は、英語を運転免許として想像しましょうとお伝えしています。プロのドライバーではなくても、日常生活や就職のチャンスは運転免許のありなしによって大きく異なるでしょう。今の世の中では英語もそのようなものです。
Q:研修の主な構造はなんでしょうか?
ベン:まずは、英語で授業を行う目的、メリット、問題点などについてグループディスカッションを行います。次に教室でよくつかう英語フレーズを使ってペアワークとロールプレイをします。最後に、先生方のデモンストレーションとフィードバックのアクティビティを実施します。全ての活動は大学と先生方の希望と英語レベルに合わせています。この研修で先生方にお持ち帰りいただきたいスキルは3つあります。
①すぐに使える教室英語フレーズ
②実演デモンストレーションとフィードバック
③今後の学習計画の立て方と自己学習法についてのアドバイス
Q:研修のメッセージは何ですか?
ベン:英語で授業を行う目的は、学生の語学力向上だけではありません。自分の意見をはっきり表現できる、意思決定や交渉のとき相手の意見に流されないで発言することを必要とされています。意味を伝えるにはコミュニケーションの手段を増やさなければなりません。このような教え方によって、学生の英語力だけでなく、対話力、コミュニケーション力、自己表現力も向上することができます。このようなスキルの取得は英語スキルの取得と同じくらい大切なことだと思っています。
吉中 昌國 (株式会社アルク 専属グローバル人材コンサルタント)
京都に生まれ、19歳で渡米。15年間の滞米生活を経験。カリフォルニア大学バークレー校大学院で社会学修士号を取得。シリコンバレーで通訳・翻訳に関わる一方で、日本企業の進出をサポートするNGOの会長を務める。現在は株式会社アルクの専属講師として活躍。日本全国の多数の企業と大学で研修を実施している。理念共有研修、グローバル・マインドセット研修、多文化対応スキル研修、ダイバーシティ研修などを立案、実施し、その極め細やかなカスタマイズ対応により高い満足度を得ている。特に大学においては、「英語で効果的に指導するためのFD研修」を20数大学で実施しており、ご参加された先生方から非常に高い評価を頂いている。
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