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活用事例 (2018年11月)

活用事例

北海道大学N北海道大学大学院における博士課程外国人留学生への キャリア形成支援について

飯田良親先生

本学の博士後期課程に学ぶ外国人留学生は690名(平成30年5月1日現在)ですが、その8割以上を占める理系学生の半分近くは日本語を使わず、英語だけで研究を行なっています。来日後に日本語習得を行わず、直ちに英語で研究活動を始める留学生の中にも、卒業後に日本に滞在し、企業や研究機関などで働くことを希望する学生がいます。そこで本学では2014年から英語によるキャリア形成支援に着手し、試行錯誤を行ってきたので、その概要をご報告します。

現状と課題

労働力不足だけでなく、グローバル対応、ダイバーシティー対応などの理由から日本企業の多くは外国人の受け入れに積極的ですが、実際の雇用の場面では日本語能力試験(JLPT)のN1ないしN2レベルの日本語力を求められるケースがほとんどです。

日本に博士後期課程から来日し、3年間英語だけを使って研究活動を行い、卒業後日本での就労を希望している、という外国人留学生にどのようなキャリア形成支援を行えば良いか、これが私の取り組んでいる課題です。

博士人材のキャリア形成支援

北海道大学は、大学院における研究を重点化したいわゆる大学院大学の一つで、学術研究と研究者養成を主たる目的とする研究大学(Research University)とも呼ばれます。欧米のResearch Universityでは、ポスドクや博士後期課程学生のキャリア形成支援(Graduate Career Program)を専門に行う部署が設置され、学部生とは別のキャリア形成支援プログラムを提供しています。
本学では、2005年に開始された文部科学省の博士人材キャリアパス多様化支援事業を学内に定着させ、以後13年間にわたって欧米の研究大学とも肩を並べるレベルのキャリア形成支援プログラムを提供し続けています。ただし、2014年までこれらのプログラムは、日本人及び、日本語の得意な外国人留学生博士だけに提供されていました。

英語による外国人博士人材のキャリア形成支援

2014年に本学人材育成本部内に国際人材育成プログラム(I-HoP)が作られ、「英語で研究を行う外国人博士課程留学生に、欧米の研究大学にも引けを取らないGraduate Career Programを提供すること」を目標に活動を開始しました。

活動に先立ち、国内外の大学院におけるキャリア形成支援プログラムを調査し、結果的に本学が日本語で提供しているプログラムは世界のトップ20研究大学のそれと同じか優れていることを確認しました。そこで、本学が日本語で実施しているもののうち、英語化が可能なものを調査し、外部業者への委託、共同開発、ないし自主開発を行いました。

英語によるキャリアカウンセリングは最初に手がけたプログラムの一つです。本学の留学生の8割近くが理系であるため、英語力に加え、国内外に研究所を持つ企業の出身で、海外での事業経験豊富な者が担当しています。
しかしながら、キャリアカウンセリングを始めてみると、博士号取得の目処が立ち、卒業を数ヶ月後に控えた学生が多く来ることがわかり、就職に必要な日本語習得、企業情報調査、マッチング、採用面接などが時間的に間に合わないケースが続出しました。

そこで、春と秋の新入留学生の入学時期にオリエンテーションを英語・日本語で行い、卒業1年以上前に始まる日本独自の就活プロセスの説明や、英語で研究を行う留学生でも、日本での企業就職を希望するなら、日本語習得が必要であることを伝え始めました。博士課程留学生は、本学が語学研修生や日本語での履修を行う留学生のために行なっている、日本語集中講義に参加する時間的余裕がないため、研究と語学学習の両立を図る必要があります。

研究と日本語習得の両立

英語だけで研究を行う外国人博士課程留学生に対し、アルクのNetAcademy 2を提供し、研究の空き時間を使って日本語習得を行うことを勧めました。更に、日本語の会話力を数値化して自発的に日本語習得を進めてもらうことを期待し、3ヶ月ごとにアルクのJSST(電話で実施する日本語会話テスト)参加者を募り、検定を行いました。

この他、日本語の基礎ができておらず、自主的にeラーニングを始めるのにもハードルが高い学生への、英語による初学者向け日本語教育の試みや、英語で実施する日本語マナー研修、キャリア開発セミナー、日本で働く外国人PhD取得者による講演会、日本文化を英語で学ぶセミナー等、様々な試みを行なっていますが、これらについては、与えられた字数の関係で別の機会に譲りたいと思います。

これらの施策を通じて、一人でも多くの優秀な外国人研究者が日本に定着することに繋げていきたいと希望しています。



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