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活用事例 (2019年1月)

活用事例(教職員研修)

東京工業大学教育改革を先導する東京工業大学教育革新センター

田中 岳先生

 教育革新センター(Center for Innovative Teaching and Learning: 以下、CITL)は、2015年4月にスタートした、まだまだ若い組織です。教育改革に取り組んできた本学が、新教育体制を2016年4月から開始するに先んじて創設されました。教育改革では、制度や組織、カリキュラムの枠組み等を再構築することに重点を置きがちです。それらも確かに重要事項ですが、内容を吟味し、いかにそれらを実行していくか、その方法を示すといった活動もまた重要であり、CITLは実際の教育活動を先導する組織として期待されています。
  CITLの活動領域は、次の4つです。「教育の質保証体制の構築」「教育能力の開発及び向上支援」「教育学習環境の開発及び教育支援」「教育方法の研究開発及びその普及」。これらの活動に加えて、全学組織である教育・国際連携本部からの依頼に応じた企画・立案にも携わっています。詳細は、CITLのウェブサイトをぜひ御覧ください。
https://www.citl.titech.ac.jp/

多彩なFDの展開

 さて、CITLが当初から取り組んできた活動にFD(Faculty Development)があります。教育改革でシラバス記載項目の刷新があったために、授業の組み立て方を再確認する研修機会を設ける必要がありました。2015年度の夏から始めた「科目設計法」が、そのセミナーです。教育工学(インストラクショナルデザイン)の諸原理に基づく内容で、その情報や知識の獲得を動画視聴で事前に済ませ、それらの活用については参加者が自身のシラバスを持ち寄り検討する研修本番で行う、いわゆる反転授業の方法による実施でした。一度に多くの参加者が集うことの難しいスタイルであったものの、2015年度16回、2016年度14回、2017年度5回と地道に開催し、受講必修的な呼びかけのおかげもあって、計400名を超える教員が参加したところです。
 この「科目設計法」に加え、初めて授業を担当することになった教員(含む助教)対象のセミナーとして、授業科目開講の着想をシラバス各項目へまとめる初期プロセスについて理解する「初めて授業を担当する教員のためのセミナー」も開催(2016年度7回、2017年度5回)し、約100名の参加がありました。
 本学には、およそ1000名の教員が在籍していますので、2015年度からの3年間で二人に一人の教員がCITL主催のセミナーを受講したことになります。
 また、授業担当教員にとっては基礎的な内容の再確認となる、それらセミナー以外にも、授業の中へどのように能動的活動を取り入れるかについて検討する「アクティブラーニングで授業を行う技術」(2017年度5回)、基本的な動画の録画・出力方法を身に着けて効果的な動画の構成等をハンズオンで学ぶ「動画を活用した授業設計セミナー」(2017年度5回)といった内容のセミナーも提供を開始しています。

 ところで、FDは今やEducational Developmentとも呼ばれ、その活動領域は多彩となっていて、大学設置基準(第25条)が示す範囲を拡大していくことも求められているといえるでしょう。CITLの活動で言えば、職員対象の「学務系職員セミナー」実施、2018年度から再開した全学FD(宿泊型)開催への全面協力といったセミナー系の実績を拡大するだけでなく、本稿冒頭に掲げた4領域に関する将来志向の企画と着実な実行を見据えていくことが重要になってくるはずです。

大学院の授業を英語化

 そのような状況下で、全学の教育施策と展開を支援する5番目の領域もCITLの活動として大切なものになっています。そのひとつに挙げられるのが、大学院における授業の英語化です。教育・国際連携本部の下に設置された、授業の英語化推進ワーキンググループ(WG)と連携し、CITLとして支援することが既に始まっています。
 クイーンズランド大学や国内機関から講師を招聘して授業の英語化を支援するセミナーをCITLで開催してきたのが、それです。CLIL(Content and Language Integrated Learning)によるアプローチが提供される等、内容は充実していたものの、受講の期間や時間が長いといったところは否めませんでした。授業の英語化を支援するという観点では、本学で行われている授業形態の多彩さ、各担当教員がもっている英語運用力の幅を勘案しなければなりません。学外機関が提供するデフォルトのメニューのままでは、教員の現場と距離ができてしまうことに頭を悩ませていたのが正直なところです。
  そんな折に、アルクの方々と率直に議論するチャンスがありました。様々なディスカッションを重ねて、昨年度に開講できたのが「英語で授業を行うセミナー(Basic Classroom English Seminar)」です(写真)。内容は、基本的な考え方を確保するもので、これまでの英語化支援セミナーの不足を補うことができたところです。
 この実績を踏まえて、今年度当初からは新たな内容検討を開始し、実装の試行あたりまでたどり着いています。当初の悩みをふたつの軸に置換して柔軟なセミナー内容を考案し、参加者を集めずに参加者のいる場所へ講師が出向くスタイルで、この冬からトライアルを始めました。

 FDは、Establishing a Teaching Development Cultureとも言われます。CITLが担っているのは、トレーニングをただ提供するというよりも、そうした文化の醸成であることを意識する毎日です。



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