グローバル人材育成の総合ソリューションパートナー 株式会社アルクエデュケーション
TOP >> 学校法人TOP >> 活用事例(2)~連載~ (2019年1月)
                        

活用事例(2)~連載~ (2019年1月)

活用事例

北海道大学N北海道大学大学院における博士課程外国人留学生への キャリア形成支援について③

飯田良親先生

 2018年11月から連載の形でお伝えしてきた、北海道大学人材育成本部における外国人博士課程留学生へのキャリア支援策ですが、3回目の今回が最後となります。外国人労働者の受け入れに関する法整備が進みつつありますが、博士課程留学生や外国人ポストドクターは、いわゆる高度外国人材ポイント制による出入国上の優遇制度(法務省)の対象となりうる優れた人材でもあります。2017年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、2022年末までに20,000人の高度外国人認定を目指しています。高度な最先端研究を行う人材に対しては国際的な獲得競争が繰り広げられていて、我が国でも条件が整えば、1年~3年の滞在で日本永住資格が取れるようになっています。研究人材を雇用する組織は大学や研究機関だけではなく、研究開発を行う民間企業も契約機関になることが制度化されています。

日本語能力と雇用機会

 高度外国人材ポイント制では、日本の大学院での博士号取得や、スーパーグローバル大学採択校卒業(法務大臣が告示で定める大学を卒業した者)、などといった点もポイント獲得につながりますが、日本語能力試験N1相当の日本語力保有者には15ポイントが付与されます。日本語能力を必要とせず、英語のみで研究のできる大学院が増えている中で、この日本語能力を重視する制度は矛盾するようにも思えますが、現実にはアカデミアの世界でも日本語能力を持つことは重要です。たとえば、全国のアカデミックポストを検索できる国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)のキャリア支援ポータルサイト「JREC-INポータル」(https://jrecin.jst.go.jp/)は、日本語でも英語でも検索が可能ですが、日本語で検索すると、英語で探す場合に比べて約10倍の求人公募案件がヒットします。5年未満の有期のポストドクターを続ける若手研究者にとって、魅力的なアカデミックポストをタイムリーに見つけるのは非常に重要で、日本語能力が雇用機会につながっているといっても過言ではありません。

博士課程留学生の日本語学習

 第1回にも述べたように、留学生として来日後、日本語教育を受ける機会を持たずに英語で研究活動を始める博士課程学生は、日本語を学習するモチベーションを持つことが難しく、また、たとえ日本語学習に興味を持ったとしても、実際に集合学習等で集中的に日本語を学ぶ時間的余裕がありません。そこで、本学では新入留学生の多くが参加する、春と秋の入学時オリエンテーションの際に、卒業後の進路を考えることを奨励し、特に日本での就職を希望するなら日本語学習が必要であることを伝えています。来日時に日本語の基礎をほとんど学ばずに英語での研究を始める留学生に対しては、日本語の自習を勧めても、取り組み方が分からず、自発的な行動を促すのが難しいです。そこで日本語初学者のためにアルクに依頼して、「Let's Learn Japanese」という英語によるセミナーを実施し、日本語を学ぶメリットの説明や、Web、TV、ラジオなどのメディアを使った勉強法を紹介してもらっています。
 独学で日本語学習を始める留学生に対しては、アルクのNetAcademy 2日本語eラーニングを提供しているほか、日本語の聞き取りや文法、語彙、口語での説明能力などを10段階の数値で評価してくれるJSST(アルクの電話による日本語会話テスト)参加者を3カ月ごとに公募し、実施しています。毎回10~15名ほどが受験しますが、試験会場に行く必要がなく、自分の電話機で受験できる手軽さが好評です。日本語能力検定N1を持っていても、必ずしも日本語会話が得意とは限らず、一方で、漢字の読み書きに苦労している非漢字圏出身の留学生にとっては、まず日本語会話を習得して、徐々に漢字の語彙を増やすといった勉強法をする人もいます。更に、履歴書などに日本語能力を記入する際に、第三者が客観的に評価した数値(「JSSTレベル9」とか)として示せるのも魅力です。

必要な日本語能力レベルに変化

 本学では博士人材の採用に熱心な企業と学生とのマッチングイベントを年間3~4回実施していて、その都度、外国人博士課程留学生の採用について企業の考えを聞いています。2014年にキャリア形成支援を始めたときは、ほとんどの企業が「外国人を採用するなら、日本語能力検定N1ないしN2を保有すること」を条件にしていました。ところが、ここ1~2年で状況が変わりつつあります。博士人材に関しては、入社後に日本語能力を向上させる意欲があれば、採用時の日本語能力はN3程度、JSSTのレベル6~7でも前向きに検討する、という企業が出始めています。自らの研究室や、学内外のさまざまな活動で日ごろから日本語を使う努力をしている留学生は、JSSTのレベル5ぐらいを持っている場合が多いです。あと僅かの努力をすることで日本での就職が可能になる、という道筋が見えてくれば、独学を続けるモチベーションにもつながると期待しています。そして、そのような学生たちには、アルクオンライン日本語スクール(https://nihongo.alc.co.jp/)のような、マンツーマンで学べるサービスを紹介していこうと考えています。



戻 る
ページトップへ
ページトップへ