千葉大学 工学部 斎藤 恭一 先生
千葉大学は,2012年度に,文部科学省『グローバル人材育成推進事業』に採択されました。私が所属する工学部には,学部生3,080名,工学系院生1,300名の学生がいます。学部生の80%は大学院に進学しています。卒業後は英語を必要とする職に就く可能性が高く,最初に必要となる英語は専門英語(技術英語)です。現状では,単位上限の制約から専門科目のコマが不足していること,そして専門英語を担当できる教員が不足していることから,英語学習e-ラーニングシステム(『ALC NetAcademy2』6コース)を導入することにしました。英語学習e-ラーニングシステムは,時間・場所を選ばず自律学習が可能であり,レベルに合わせた学習が容易にできるので,導入の効果がかなり期待できると思っていました。特定のコマを必要とせず,教員の負担も増えないことも利点です。
ところが,学習意欲の高い学生しか取り組まない,自律学習が可能な学生ほど英語ができるなど,導入するだけで学習効果が期待できるのは一部の学生層しかいないことがわかってきました。その解決策として,①e-ラーニング科目の設定 ②授業科目との関連付け ③英語学習アドバイザーによる個別学習カウンセリングやガイダンス,講習会の実施 ④学科教員・担当教員などによる学習勧奨 ⑤TOEIC(R)・工業英検の受験料支援とのリンクなどに取り組みました。その結果,英語学習e-ラーニングシステムのログイン率100%(1年生)達成,学習時間の大幅増加など成果があがり,今年の大学院受験の平均TOEIC®スコアが650点になった学科が出るなど,昨年と比較してTOEIC®スコアが上昇しています。
私は,所属する共生応用化学科で,学部2年生に向けて前期,後期に,それぞれ「化学英語1」「化学英語2」を週1コマ,15週教えています。前期では,3大品詞(専門用語としての名詞,強力動詞(※),前置詞)を,後期では,理系英作文を中心に教えています。前期も後期も,授業時間の初めの15分間で専門用語の小テストを実施しています。50個を予習してきてもらい,そのうち10問出して,8問以上できないと落第となります。後期の理系英語では工業英検3級の過去問の中なら英作文問題に近い「整序問題」を取り上げ,黒板に英文を書いてもらいます。その英文の文型,強力動詞などを徹底解析します。
後期が終わる頃にちょうど工業英検3級の試験がありますから,当学科の受験者は理系英語力ピークのときに受験することになるので,合格率は95%を越えます。これまで2級はなかなか受けようとしませんでした。ところが,今年から準2級が設定されたので,よい目標ができました。早速,直前ゼミを実施しました。平日の午後6時から2時間ほど,3回の理系英作文演習を,学生を募って実施しました。もちろんこれだけで準2級に受かるわけではありませんが,ペースメーカーの役割は果たせたと思います。千葉大学工学部は,84名受験中77名の合格者で,合格率は92%でした。理系英語のゴールは,自分の伝えたいことを英語で正しく書けることと学生に説教しています。「書けてなんぼの理系英語」です。これからも学生の能力を高める工夫を『グローバル人材育成推進事業』の中で進めたいと思います。
※ 強力動詞・・・極めて使用頻度が高い重要動詞を指す(著書 理系たまごシリーズ5「ノーベル賞クラスの論文で学ぶ 理系英語最強リーディング術」より引用)
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