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アルク総研ニュース(2020年3月)

今月のテーマ記事

千葉商科大学キャンパスに「世界」を連れてくる
CUCサマープログラム
<Curriculum Policy>


千葉商科大学(CUC)の教育理念は「実学」。実践的な学びを通じ、専門知識と高い倫理観を身につけて社会に貢献する若者を輩出してきた。グローバル時代に入った今、CUCでは海外の提携大学から招いた学生を、CUCの学生サポーターが迎える、独自のサマープログラムを展開している。ダイバーシティ、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ。教職員が見守るなか、「おもてなし」を通じて、学生たちの生きた学びが始まる。

(写真左)国際センター長 橋本隆子副学長
(写真右)国際センターオフィス 土井博之課長

キャンパスにいながら世界を体験

 毎年7月、夏休みに入る少し前、海外の大学生たちが千葉商科大学(CUC)に集まってくる。CUCのキャンパスで開催されるサマープログラムの参加者たちだ。
 CUCサマープログラムは、海外の大学から訪れる学生が日本について学び、CUCの学生や他の参加大学の学生との親睦をはかることを目的としている。参加者は約2週間にわたって、日本の文化や経済に関するレクチャーやCUCの学生、付属高校の生徒との交流会に参加したり、文化体験、見学・観光などを満喫したりする。
 幼い頃から日本のサブカルチャーに親しんで育った海外の若者が持つ、日本への関心の高さは大人世代の想像以上だ。2011年に参加者27人で始まったこのプログラムも、2019年度には、13の国と地域から、21大学61名を集めるまでになった。アメリカ、イギリス、ロシア、フランス、イスラエル、インド、台湾、ベトナム、タイ、中国、インドネシア、韓国、メキシコと、参加者の国籍も多岐にわたる。期間中、海外学生であふれるランチタイムの学食などは、まるで海外の大学のようにガラリと雰囲気が変わるという。
 ホスト大学であるCUCからは、毎年200人前後の学生が、「サポーター」としてサマープログラムの企画や運営に参加する。さまざまなアクティビティを通して、海外大学の学生たちと交流しているが、実はそれこそがこのプログラムの目的だと、国際センターオフィスの土井博之課長は語る。
 「グローバル化が進む中、本学の学生は一部を除いて、海外へ出て行くことには必ずしも関心が高いと言えませんでした。だったら日本にいながらでも、外国の学生と触れ合える機会を提供してはどうか。いっそのこと、『世界』をCUCのキャンパスに持ってきてしまおうと、そういう発想でスタートしたのがサマープログラムです」
 CUCのサマープログラムは、海外学生のためのプログラムであると同時に、CUCの学生がキャンパスにいながら世界を体験し、海外の同世代と直接関わることができるプログラムとして設計されているのである。

「サポーター」として成長する学生たち

 2019年度のサマープログラムでは、サポーターのオンライン名簿に登録した学生数は221名にのぼった。関わり方はとても緩やかで無理がない。サマープログラムのスケジュールを確認し、ちょうど時間が空いている活動に参加できる。登録はしたものの、なかなか都合が合わず活動できない学生や、短時間だけ活動する学生も、もちろんいる。
 全体を牽引するのは20名前後のコア・サポーターで、企画や新人サポーターの指導も、彼らが中心になって行っている。
 「週末の観光も、サポーターたちが自主的に企画し、アテンドしてくれます。東京ディスニーランド、横浜・鎌倉観光、秋葉原、渋谷、新宿めぐりなど、あらかじめ海外学生に行きたい場所を聞いておいて、サポーターがチームに分かれて案内するのです。担当する観光地に関する情報を事前に調べ、見どころを選んでルートを決め、英語でどう説明するかも自分たちで考えますから、私たち教職員がやるのは、じゃあ気をつけてねと、みんなを送り出すくらいです」(土井課長)
 大学の特性や学生の得意分野を生かした企画も、学内やサポーターの間から上がってくる。せっかく自然エネルギー100%大学*のCUCに来たのだから、講義や見学だけでなく、浴衣で打ち水という日本のエコ体験もしてもらいたい。そこでCUCの学生たちがまず着付けを地域の詳しい方々から習い、海外学生に浴衣の着付けをして、とても喜ばれた。また、フェアウェルパーティーでは和太鼓を披露する学生も。海外学生にも働きかけ、各国の文化を紹介する出しものを披露してもらって、プログラムの終りを盛り上げた。
 興味深いのは、参加者の安全や健康に関わる部分を除き、教職員が一歩下がるようにして、サポーターたちの活動を見守っていること。できるだけ学生の主体性に、委ねようとしているのだ。
 「わが学生ながら、彼らのリーダーシップはたいしたものだと感心します」と、国際センター長の橋本隆子副学長は目を細める。
 「サポーターとして活動することで、学生たちは確実に成長しています。また、希望すれば、サマープログラムで用意している英語のレクチャーを、海外学生と一緒に聞くこともできるのですが、尻込みせずどんどん質問をする海外学生の熱気に、みんなすごく刺激を受けるのです。そうしたこともすべて、彼らの発奮材料になっています」(橋本先生)
 サポーターという名のもと、学生たちはサマープログラムを通じて、カルチャーショックを受け、多様性を肌身で理解し、同時にリーダーシップやチームワーク、企画力、発想力、コミュニケーション力といった幅広い人間力を、自ら実践的に養っているのである。

(写真)日本文化を体験できるチャンスを数多く用意している。

資金とメンタル両面で留学支援を強化

 商科大学であるCUCは、常に実学教育を通して、時代に即した人材をビジネス界に送り出してきた。「やってみる、という学び方。」という、現代のアクティブラーニングに通じるスローガンも、その土壌から生まれている。サマープログラムで得た経験も、グローバル時代のキャリアに生かしてほしいと、橋本先生たちは考えている。
 サポーターを経験した学生の感想も、「英語があまりうまく話せなくても、伝える気持ちがあれば、互いに伝わることを知った」「今度は自分が彼らの国へ行き、もっと世界を知りたい」などと前向きだ。
 「楽しさ10%、悔しさ90%だった」と感想を残す学生もいた。もっと話したかったのに、英語力がなくて海外学生と思うように話せなかったことが、悔しかったのだ。そのリベンジとばかりに一生懸命に英語を勉強して、翌年またサポーターに応募してくる学生や、卒業までにTOEIC® L&Rのスコアを大きく上げる学生も少なくない。
 英語力のレベルはいろいろでも、海外学生の輪に溶け込み、楽しそうに交流する学生の姿は、紛れもなく国際人。その様子を喜ばしく思いながらも橋本先生は、「友好の先に見えてくる友だちの国の課題にも意識を向け、深く考えるようになってもらいたい」と語る。これからの時代は、ビジネス一つとっても世界と共にやっていくことが不可欠だからだ。
 「私たちが考えるグローバル人材とは、多様性を受け入れ、他者を尊重できる人です。サマープログラムは本学の学生にとって、自分と異なる文化や行動形式を尊重し、コミュニケーション力を培うための、よき経験の場になっていると思います」(橋本先生)
 サマープログラムはCUCと参加大学との交換プログラムであるため、夏休みなどの長期休暇には、今度はCUCの学生から希望者を募って、世界各国の大学で学ぶ機会も豊富に用意されている。そうした機会を活用する学生が、だいぶ増えてきたところだが、今後はさらに留学が身近なものになるよう、施策を打っていきたいとのこと。
 「2020年度からは費用面での支援を拡充し、優秀な学生はほぼ無償で海外に行ける仕組みを広げていきます。また、外国人に対して気後れするという学生や、国外に出ることが何となく怖いという学生もいますから、メンタル面からもその背中を押すつもりで、留学の意義や心構え、具体的な準備の仕方を丁寧に伝える授業を開始します」(橋本先生)
 初めは世界をキャンパスに呼びこんだ。留学プログラムも豊富に用意した。次に、CUCの学生が留学しやすくなる仕組みができつつある。そのすべてを連動させて、CUCの学生たちのキャンパスは、千葉から世界へ広がろうとしている。

(写真)エコ体験などCUCならではのプログラムも充実している。

*千葉商科大学は2018年度の目標としていた1年間の電力での自然エネルギーが101.0%となり、日本初の「RE100大学」を達成した。


◆取材・執筆 田中洋子 株式会社エスクリプト
◆写真 大竹直樹



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