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アルク総研ニュース(2020年4月)

今月のテーマ記事

関西学院大学学生を大きく成長させる
途上国でのボランティア体験
<Curriculum Policy>


1912年以降、長きにわたり、関西学院が掲げ続けるスクールモットーは、"Mastery for Service" (奉仕のための練達)。C.J.L.ベーツ第4代院長が提唱したもので、これを体現する「世界市民」の輩出を同学の使命としている。「世界市民」とは、他者と対話し共感する能力を身につけ、より良い世界の創造に向けて責任を担う人々。その育成に大きな役割を果たしているのが、開発途上国において現地の様々な機関や団体と連携して取り組む関西学院大学独自のプログラム「国際ボランティア」だ。

(写真左)国際教育・協力センターの葉佐賢太郎さん

開発途上国で孤軍奮闘する5カ月間のプログラム

 関西学院大学は2004年に国連ボランティア計画(United Nations Volunteers: UNV)と協定を締結し、国連学生ボランティアプログラムを実施してきた。2013年からはこれをベースに、同大学が基幹校となりその他国内7大学と共同実施する「国連ユースボランティア」を展開している。同時に、同大学独自の「国際社会貢献活動」がスタートし、以来、2つのプログラムを柱とする「国際ボランティア」を実施している。これらのプログラムに参加する学生は、年間で30名から40名。2004年以降、400名近くもの学生がプログラムに参加している。
 「国際社会貢献活動」は、赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross: ICRC)や、海外の教育機関、非政府組織(Non-Governmental Organizations: NGO)など、多種多様な派遣先との間に、関西学院大学が独自にネットワークを構築して実施している。
 教育、広報、平和構築、ビジネス、環境の5分野があり、関心のある分野でボランティアを希望する学生は、学内での選考ののち、事前学習と研修を経たうえで、現地に派遣される。マレーシア、インドネシア、ネパール、カンボジア、ベトナム、ラオスなどの開発途上国での活動が中心となる。
 「国際社会貢献活動」のプログラムには、いくつかの際立った特色がある。  ひとつは、受入先機関ごとに募集を行い、ひとつの派遣先に送る学生を、原則として1名に絞っていること。同じ派遣先に、同時期に多勢の学生が派遣されることはまずない。
 また派遣期間もおよそ5カ月間と長い。関西学院大学は2学期制だが、派遣が決まった学生は、春か秋のどちらかの1学期間、開発途上国で活動する。見知らぬ土地にたった1人で飛びこみ、半年近くも現地の人たちと仕事をするのだから、どの学生も準備段階から真剣そのものだ。
 加えて注目されるのは、「国際社会貢献活動」が名実ともに学業の一環である点だ。現地での活動に対しては、最大16単位が付与される。
 プログラムへの応募は1年生から可能だが、現地の人々と協働するのに必要な赴任国の事情、知識や英語力、その他最低2週間程度の途上国経験があることが望ましいため、準備期間を入れて、実際の派遣は早くて2年の秋学期以降となる。日本とはまったく環境が違う開発途上国が活動の場となるため、途上国経験がない学生には、まず短期の「海外フィールドワーク」に参加することを強く勧めている。
 派遣の実費は、航空券、現地滞在費など、基本的にすべて自己負担。プログラムは授業の一部であることから、派遣期間中の学費の納入も必要だ。少しでも学生の負担を軽減するため、同大学では30万円の返済不要の「国際社会貢献活動奨学金」を用意するなどして支援している。

東南アジアの医療施設を運営するNGOと連携協定

 昨年、関西学院大学は「国際社会貢献活動」の新たなパートナーとして、カンボジア、ミャンマー、ラオスで医療施設を運営する日本のNGO、ジャパンハートと連携協定を結んだ。ジャパンハートがカンボジアのプノンペン郊外に設立した「こども医療センター」が派遣先となる予定である。
 国際ボランティア・プログラムを統括する国際教育・協力センター(Center for International Education and Cooperation: CIEC)の葉佐賢太郎さんによると、「こども医療センター」に赴く学生は、現地での小児がん治療の啓発活動や、広報業務を担当するとのこと。
 派遣される学生は、応募者の中から、健康状態や成績、本人の意欲などを総合的に判断して選出される。1派遣先につき派遣するのは基本的に1人のため、決して門戸は広くない。
 「もちろん語学力も必要です。要求される語学力のレベルは、派遣先や活動によって異なりますが、一例としてICRC(国際赤十字委員会)の活動なら、交換留学などの長期留学で求められる以上の高い語学力が求められます。また、今回の『ジャパンハート』の活動では、現地で広報業務を担当しますから、派遣学生には画像や動画の編集などのICTスキルもあらかじめ高めておくことが望まれます」(葉佐氏)
 派遣が決まった学生は、出発までの約1年間、所属学部での授業に加え、平和構築、開発施策、環境管理といった国際ボランティア関連科目の中から、自分の派遣先国や、活動内容に関連する科目を選んで履修することが強く推奨されている。統計の見方、データの分析方法、困難な局面を打開するための手法、異文化理解やコミュニケーションの注意点など、実践的なスキルも学ぶ。現地到着後、即戦力として活動するには、十分な予備知識を得ておくことが欠かせない。独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)出身の経験豊富な教員が中心となり、これらの授業を担当し、きめ細やかな個別指導にもあたる。
 現地での活動が始まってからも、学生は日々の活動や生活の状況を週報にまとめ、健康状態の報告書と一緒に、毎週、担当教員に提出する。教員はそれを見て必要なアドバイスを行い、何かあればすぐ緊急対応ができるよう常にモニターしている。派遣する学生の数を一定数にとどめ、その分、学生一人ひとりに時間と手間をかけ、丁寧なフォローアップをしていることがよくわかる。
 「学生が派遣中にクリアすべき目標のようなものは、特に設定してはいません。そもそもこのプログラムは、派遣先での活動だけで完結するものでもないからです。派遣前、派遣中、派遣後を通して、いろいろなことを経験し、知識を吸収するだけでなく人間力を向上させてほしい。そういう思いで、プログラムを運営しています」と、葉佐氏は語る。

「奉仕の練達」が世界市民を育てる

 こうした思いの背景には、関西学院大学ならではの哲学がある。国際ボランティアは、スクールモットーである"Mastery for Service"(奉仕の練達)に、直結するプログラムだ。開発途上国という厳しい現場に身を置いて、他者との協働や相互理解を通じて、より良き世界をつくるために力を尽くす経験は、大学が掲げる「世界市民の育成」につながる。
 学生たちが派遣先で得るものは、必ずしも成功体験だけではなく、むしろ困難や失敗が多い。それを自分で乗り越えることで、人間力が大きく育つと葉佐さんたちは考えている。
 「はじめはビジネスメールさえうまく書けず、ビジネスマナーも稚拙だった学生が、帰国する頃には、立派な文章を書き、加えて、堂々と自発的に様々な行動ができるようになっている。そうした学生の目覚ましい変化については、派遣先からもよく聞きます。派遣前には自分のことしか見えていなかった学生が、5カ月後には、後輩の育成や、自分が学んだことをどう社会に還元できるかを、真剣に考えるようになって帰ってくる。そういう学生が非常に多いのが、この活動の特徴です」
 「国連ユースボランティア」や、この「国際社会貢献活動」に参加したくて、関西学院大学に進学を決めたという学生も少なくない。言葉も習慣も異なる世界に1人で飛びこみ、苦労して身につけた経験や自信を糧に、一回りも二回りも大きく成長する。そうした全人的成長の機会をもっとも望んでいるのは、他ならぬ学生自身なのかもしれない。
(写真)インドネシアの現地教育機関で、学生が日本語・日本文化の授業を担当


◆取材・執筆 田中洋子 株式会社エスクリプト
◆写真 関西学院大学



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