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アルクグローバル通信 (2019年5月)

今月のテーマ記事

立命館アジア太平洋大学学生たちのプロジェクトを支援
全学に広がるチャレンジの輪
<Curriculum Policy>


 サークル、同好会、ボランティア活動。大学時代に経験する課外活動は、しばしば学業以上に、学生の人間的成長の糧となる。立命館アジア太平洋大学では、単発のイベントや、さまざまなプロジェクトに、自主的に取り組む学生グループが増えていることに着目。一定の条件を満たす活動を全面的に支援し、その成果を広く告知することで全学の活性化につなげようとしている。

(写真)スチューデントオフィスの乾さや子課長補佐

学生の「プロジェクト」を大学が支援する狙い

 立命館アジア太平洋大学(以下APU)では2017年度から、学生の自主的な活動を支援する新しい取り組みを始めた。
 同学では近年、いわゆるサークルや部活動とは別に、学生有志が集まって、単発のイベントやプロジェクトを行うケースが増えている。そこには、自分たちなりに社会の多様な課題と真剣に向き合い、あるいは、文化やスポーツを通じた親善活動に情熱を傾ける、生き生きとした学生たちの姿があった。
 「そういう彼らの活動を、学内全体に知ってもらうことで、『自分たちにも何かやれそうだ』と発奮し、いろいろな活動に取り組む学生が増えることを期待しました。そこで学生が行っているプロジェクトを募り、特に独創的で有意義なものを選抜して、支援する体制を整えることにしたのです」
 スチューデントオフィスの乾さや子課長補佐は、支援制度導入の背景をそう語る。
 「選抜プロジェクト」の対象となるのは、半年から1年という期間をかけて、じっくりと取り組む活動。なおかつ、次の3点を強く意識していることが条件となる。

① 国際社会で活躍するための異文化受容力・協働力を養うことができる
② 正課での学びが活かせる
③ 国際社会や地域社会、あるいはAPUコミュニティーに貢献する

 「大学が補助金までつけて支援するのですから、それにふさわしいプロジェクトとはどういうものであるべきか、関係する教職員の間で話し合いました。そして絞り込んだ基準がこの3点です。
 それぞれの活動のなかで、3つのポイントをどう踏まえているか、アプリケーションフォーム中で学生に考えを書いてもらい、最低でもいずれかひとつは、しっかり押さえた活動を選ぶようにしています。
 また、半年から1年がかりで、プロジェクトの目的を達成することが前提ですので、企画の内容が具体的か、現実的なお金の見積もりができているかもチェックします」(乾さん)
 採択されたプロジェクトには、スチューデントオフィス・スタッフが相談役としてつき、企画運営力を高めるための研修や、50万円までの補助金も提供される。
 ちなみに、学生の自主活動に対する支援は、「選抜プロジェクト型」のほかに、学生が自分たちで柔軟にイベントを行う「自立イベント型」と、企業、自治体、NPOなど、外部と協力し、社会人から指導を受けながら行う「企業・団体共創型」というカテゴリーも設けているが、これらの活動は補助金の対象とはならない。

たった1年で、ネパールに図書館を建てた学生たち

 支援制度がスタートして2019年度で3年目に入った。「選抜プロジェクト」型のカテゴリーには、毎年10数件の応募があり、書類審査と公開プレゼンテーションを経て採択される。2017年度は6件、2018年度は4件が選ばれた。例えば、難民受け入れについて考えるプロジェクトや世界の食糧問題を取り上げた活動。あるいはスリランカとの野球交流、市民と共に日英両言語でミュージカルを上演するプロジェクトと、活動のジャンルも形態もバラエティーに富んでいる。
 乾さんは2017年度に、模擬国連のような大会を企画したグループと、ネパールの子どもたちとの交流・支援を行うグループ(BAJ:Bhabishya and Jamarko for Nepal)を担当した。BAJは、開発学や国際関係学を学ぶ6人の学生をコアメンバーとするグループで、ネパールの学校に図書館を建設するプロジェクトが、2017年度の「選抜プロジェクト」として採択された。
 プロジェクトはあくまでも学生主導だが、進捗状況のモニタリングをはじめ、必要に応じて助言したり、役立ちそうな情報や人脈があれば紹介したり、縁の下の力持ちである担当職員のサポートは欠かせない。
 「BAJの学生たちは、何事も自分たちでしっかりと考えて実践していましたが、彼らの活動や、ネパールの教育の現状について、大学コミュニティー全体に知ってもらうことも大事です。例えば、チャイティーを作ってカフェテリアで販売するチャリティーをやったとき、私からも『パネル展示をしてみたら?』といった提案はしましたね。またAPUには小さいお子さんがいる教職員も多いので、呼びかけて、不要になった本を集めてはどうか、といった話もしました」
 学内イベントで飲食物を売る際には、学生が立てた衛生管理計画をチェックしたうえで、保健所に届け出る。集めたお金を安全にネパールに送金する方法を一緒に考える。乾さんは、学生たちの盲点になりがちな部分をフォローするようにしていたという。
 一方、BAJから「選抜プロジェクト」への応募があったとき、審査にあたった教職員の間には、「規模が大きすぎて、学生には無理ではないだろうか」と、不安視する声があった。だがチームワークのよさと、メンバー全員の真摯な姿勢に注目し、そこに賭けてみようと採択が決まった経緯がある。
 プロジェクトが走り出すと、学生たちはさっそく資金集めに苦しんだ。企業に寄付を頼んで歩き、個人スポンサーを募集し、チャリティーもやった。初めて挑戦したクラウドファンディングでは、手数料が二重に引き落とされてしまうなど、さまざまなトラブルも経験した。しかしそれでも4カ月間で図書館建設費の70万円を集め、わずか1年で、見事にネパールの学校図書館をオープンさせてしまった。大人たちの心配は杞憂に終わり、結果は大成功だった。
 現地に赴いたBAJのメンバーは、子どもや先生はもちろん、地域をあげて喜ぶ様子に胸を熱くした。中井博明さん(国際経営学部4回生)は言う。
 「できあがった図書館の装飾を、現地の子どもたちと一緒に行いました。あの子たちの笑顔があったから、ここまで頑張れたのだと思います」

(写真)ネパールの子どもたちと図書館の飾り付けを行った

多くのAPU生に伝えたい、「学生にだって、ここまでできる!」

 BAJ代表のアキヤマサクラさん(アジア太平洋学部4回生)も、感慨深げだ。
 「私たちは本当にたくさんの人たちと一緒に、活動をしてきたんだなと思います。何人もの学生が、『手伝おうか?』と声をかけ、チャリティー・イベントのボランティアを買って出てくれました。ネパール人留学生たちも、チャイティー販売に駆けつけてくれました。学生でもここまでやれるんだ、本気で取り組めば、力を貸してくれる人がこんなにいるんだと、私たちを含めて、誰もが実感したと思います」
 周囲の信頼を獲得する大切さを、身をもって知ったことも、大きな収穫だった。「責任を果たし成果を上げて、協力してくれた人に報いることや、相手との関係性に即した、きめ細やかなコミュニケーションが、信頼関係の構築には欠かせないと学んだ」。二人の学生は、熱を込めてそう語ってくれた。

(写真左)BAJ代表のアキヤマサクラさん(アジア太平洋学部4回生)
(写真右)BAJメンバーの中井博明さん(国際経営学部4回生)


 実はこうした「気づき」や「学び」こそ、APUが目指したものだった。BAJに限らず、「選抜プロジェクト」の学生たちは、「こんなにおもしろいこと、こんなに夢中になれること、こんなにすごいことが、大学時代にできるんだ」というメッセージを、身をもって全学に伝える素晴らしいロールモデルとなっている。
 「大学としても、『選抜プロジェクト』の学生には、採択審査のときの公開プレゼンテーションや、中間発表、最終報告会をはじめ、できるだけ頻繁に、みんなの前に出て活動報告をしてもらっています。私たちもFacebookにこまめに記事をアップして、なるべく多くの学生の目に活動が触れるよう意識しています」(乾さん)
 BAJのプロジェクトには多くのAPU生が関心を寄せ、図書館完成の報告を共に喜んだ。BAJに触発され、自分たちも何かやりたいと一念発起し、グアテマラの水質改善のためのプロジェクトを立ち上げた学生たちもいるとのことだ。
 チャレンジをする学生が増え、その連鎖が広がっていけば、きっとキャンパスは今よりもっと元気になる。学生たちの視野は広がり、グローバルな課題も、ローカルな問題も、今までよりずっと身近なものになり、大学での学びも深まっていく。「自主活動支援」の3つの選抜基準には、そうした活力あるキャンパスを目指すAPUのビジョンが、込められているようだ。

(写真)BAJの活動は他の学生たちにも大きな刺激を与えている


◆取材・執筆 田中洋子 株式会社エスクリプト
◆写真提供 立命館アジア太平洋大学



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