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アルクグローバル通信 (2019年6月)

今月のテーマ記事

秋田大学資源確保に資する国際人を育成する
日本で唯一の「国際資源学部」
<Admission Policy/Curriculum Policy>


 秋田鉱山専門学校を母体のひとつとして開学した秋田大学は、資源に関する教育研究において100年を超える歴史を誇る。その特色を前面に押し出して学部を再編。2014年に「国際資源学部」が誕生した。資源生成メカニズム、探査・開発、政策までを体系的に教える日本で唯一の存在だ。そこにもまた、グローバル時代に向けた挑戦があった。

(写真)国際資源学研究科長の藤井光教授

日本の未来を担う資源のエキスパートを目指せ

 レアメタルなどの金属資源、石油・天然ガスをはじめとするエネルギー資源など、日本は重要な資源の多くを輸入に頼っている。それは言い換えれば、もし産出国周辺で紛争が起きたり、国際関係の悪化や大規模自然災害等で輸送路が絶たれたりすれば、たちまち資源確保に支障をきたしかねないということでもある。
 「ですから私たちはどんどん海外に出て行き、資源を確保するための不断の努力を続けなくてはなりません。他国との熾烈な資源争奪で遅れをとるわけにはいかないのです。日本にとってエネルギーセキュリティーはそれほど重要であり、本学部はこの分野を担う若い力を養成すべく創設されました」
 国際資源学研究科長・藤井光教授は、学部設立の意義をそう語る。
 同学部に設置されているのは、文系の「資源政策コース」、理系の「資源地球科学コース」と「資源開発環境コース」という3コース。
 「資源政策コース」は、世界の資源情勢の分析、資源・開発経済や国際情勢の理解、資源探査開発に関わる交渉学、資源国の法制度や政治体制の理解などを通して、資源戦略を担う人材を育てる。
 「資源地球科学コース」では、世界の資源分布の予測や、新たな地球資源の可能性を探求し、最先端をいく地球科学分野の技術者・研究者を育成する。新たな鉱山資源の探究や、資源生成システムの解明、最先端地球科学からの地球史解析なども守備範囲だ。
 3つ目の「資源開発環境コース」では、資源開発技術、資源生産の最適手法、精錬技術や資源のリサイクル、鉱山における環境保全技術などを学ぶことができる。環境への負荷に配慮した資源開発や、資源循環型社会をリードする技術者、研究者を送り出すコースだ。藤井教授は言う。
 「資源関係が学べる学部や、資源に関する学科を持つ大学は、日本にもいくつかあります。しかし独立した資源学部を有する大学は、本学のみです。特に文系の資源政策が学べる大学は他になく、資源政策コースには文字通り、日本中から学生が集まってきています」
 「国際資源学部」の新設は、秋田大学の資源学における強みを、受験生にしっかり印象づけたようだ。

2年次からは専門科目を英語で学ぶ

 グローバル時代のニーズに即した変革も進んだ。同学部の2年次以降、すべての専門科目の授業を英語で行うのがその例だ。
 「英語による教育には、未来のグローバル人材を育てるという意味もありますが、本学部の場合、直近の目標は、3年次に予定されている海外資源フィールドワークです。資源国の大学、研究機関、資源関連の企業などの協力を得て実施する複数のプログラムから各自で選んで出かけるので、場合によってはほんの数人だけで外国の受け入れ先に飛びこみ、3〜4週間にわたり現地で過ごすこともあるのです」
 海外で安全に活動し、それなりの成果があげられるように、学生たちは海外資源フィールドワークまでに、何とか英語力を伸ばさなくてはならない。現地の専門家のもとで活動するため、それぞれの専門分野をある程度、英語で理解している必要もある。
 そこで入学と同時にI - EAP(Intensive-English for Academic Purposes)と呼ばれる集中大学英語プログラムで基礎力をつけ、2年生からは専門科目を英語で学び、そして3年生で海外資源フィールドワークという大きな流れを通じて、専門性と英語力を伸ばすという形が取られている。
  I - EAPの授業は、1年次と2年次を通して毎週3コマ。能力別少人数クラスで英語の基礎を徹底的に学び、英文レポートやサマリーの書き方、プレゼンテーション・スキルなども、この段階で身につける。入学には特別な英語力を問わないため、英語が苦手な新入生も少なからずいるが、I - EAPや自主学習システムの活用に加え、昨年からTOEIC® L&R TESTスコアを進級要件に入れたこともあって、学生の英語力は徐々に底上げされてきているという。
 そして2年次からは、いよいよ英語による専門科目の授業が始まるのだが、これについては、学生の反応や教員の見解が気になるところだ。藤井教授に聞いてみた。
 「英語による授業では、内容が完全には理解できない学生もいると思います。でも教員としては、日本語でも英語でも、100%教えてやりたい。だから英語で話したあと、必要なら日本語で補足するなど、学生の様子を見ながら、先生それぞれに工夫してくださっています」
 日本で唯一の「国際資源学部」で、しかも英語で専門科目が学べるというのは、留学生にとっても魅力的な選択肢。いずれは教養課程も含め、英語だけで卒業できるカリキュラムも、整備していければとのことだ。

視野を広げ国際力を育てる海外資源フィールドワーク

 「国際資源学部」のもうひとつの特徴は、3年次に実施される「海外資源フィールドワーク」。実施時期は受け入れ先ごとにまちまちなので、学生たちは8月から12月くらいまでの間に、続々と出かけていく。行先がアメリカであろうと、ヨーロッパやアフリカであろうと、航空運賃と保険は3年生120名分すべて大学が負担。受け入れ先も、教員たちの個人的なつながりを頼りに、コツコツと増やしてきた。そこまでしても、意義のあるプログラムだからだ。
 藤井教授が担当する学生は、昨年、アラブ首長国連邦に赴き、受け入れ機関の指導のもと、砂漠に計測器を持ち込んで地下水を探す実習や、地層調査の旅に同行するなど、日本ではできない貴重な体験を積んだ。他にも、山に分け入って採石をしたり、地層を調べたり、炭鉱を見学して労働環境を体験したりと、活動は非常に多彩だ。
 「資源政策コースの学生のフィールドワークは、人間を相手にする活動が多いのです。現地の資源開発会社に協力してもらい、資源に携わる人たちが、どんなポリシーで仕事と向き合っているのか、安全や環境についてはどう考えているのか、といったことも聞き取りします。豊富な資源を持つパプアニューギニアでは、山奥の小さな村で人類学的なフィールドワークを行っています。現代の資源学においては、こうしたサステイナブル・デベロップメントの観点も非常に重要です」

(写真)UAE大学キャンパス内での重力探査の調査風景(海外資源フィールドワーク UAEプログラム)

 専門家を目指す学生にとって、海外でのフィールドワークは、資源国の現場に触れるまたとない機会だ。さらに卒業生にアンケートをとったところ、おもしろい結果が得られた。ほぼ全員が、「海外資源フィールドワークが就職活動に役立った」と回答したのだ。胸を張って話せる経験だし、面接官も興味を持って聞いてくれるという。在学生の間にもその話が伝わり、フィールドワークへの意気込みは年々高まっている。
 「フィールドワークを終えた学生は、視野が広がり、たくましくなるようだ」と藤井先生も言う。
 「特に外国人に臆せず接するようになります。4年になると研究室に配属になるのですが、研究室にいる大学院生は半分くらいが外国人。海外フィールドワークで、外国の人と何週間も一緒に活動した学生は、そういう環境にもすぐ馴染めるように思います」
 大学院博士前期課程(資源地球科学専攻)では今年、インドネシアの大学との間で、ダブルディグリー・プログラムをスタートした。一方、学部では、今後はフィールドワークとはまた別に、専門分野で1〜2年の海外留学をする学生を増やしたいと考えている。
 文理融合型のカリキュラム、英語による教育、そして海外で学ぶ多様な機会が、国際資源学部の名の通り、国際性を兼ね備え世界で活躍する資源学のエキスパートを育んでいる。
 「厳しさを増す資源獲得競争のなかで、若い力を思いきり発揮し、日本の未来に貢献する人材となってもらいたい」
 やがて巣立つ学生たちに、藤井教授はそうエールを送った。

(写真)ポンコール鉱山における実習のために坑内に入坑する学生(海外資源フィールドワーク インドネシアプログラム)


◆取材・執筆 田中洋子 株式会社エスクリプト
◆写真提供 秋田大学



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