首都圏に多くの国際寮をもつ早稲田大学。そのなかで、唯一の大学直営寮として4年前にオープンしたのが、中野区中野にあるWISH(Waseda International Student House)だ。ここでは、国際色豊かな学生を育てるべく、さまざまな学びの仕掛けを散りばめている。WISHならではの国際交流の取り組みや、ユニークなプログラムについて紹介しよう。
(右記写真:グローバルリーダー育成の拠点として開設された「早稲田大学中野国際コミュニティプラザ」にある国際学生寮「WISH」▶)
2014年に設立された、早稲田大学直営国際寮「WISH」。寮内には卓球台やトレーニングマシンのあるフィットネスルーム、防音の音楽室、銭湯のような浴室など、最新の設備がそろう。また、部屋は4人1組のユニットになっており、リビング、トイレ、シャワールーム、キッチンなどは共用で、建物の構造そのものが、なるべく個室から出てコミュニケーションをとれるような作りになっている。
全学部から1・2年生約870名が入居しており、うち海外からの留学生は約4割。RA(レジデント・アシスタント)と呼ばれる3・4年生34名が一緒に生活し、寮内でのイベントなどを運営している。
2代目のレジデンスセンター長を務める輿石直幸先生(理工学術院)は、WISHについてこう語る。
「WISHの設立前から、本学はグローバル化で留学生の数を増やそうとしていました。しかし、問題だったのが宿舎の不足。そこで、なるべくキャンパス近くに寮を作ろうと、現在の土地を取得したのです。純粋な寄宿舎の機能だけでなく、学びの場を入れようということで、1階は生涯学習センターになっています。寮も、単なる住まいではなく、国際化を目指すなかで、生活の場に国際交流の機能を入れたことが大きいと思います」
WISHの学びの機能の1つが、「SI(Social Intelligence)プログラム」と呼ばれるものだ。新入社員の研修をする企業の人事担当者を講師に招き、新入社員や若手の社会人に向けて行っている研修を、学生向けにアレンジして提供してもらっている。平日19時から90分間、寮内で行われており、寮生は週に1日以上の参加が義務づけられているという。
コンテンツの柱は、
◉ Global Communication
◉ Self-Motivation
◉ Faculty Visit
◉ Career Seminar
の4つ。
Global Communicationは、主に英語で文化や社会の違いを学ぶもの。英語そのものの学習ではなく、英語で何かを学ぶことがポイントだ。
受験を終えた多くの学生たちは、大学合格がゴールであったため、入学後の学習へのモチベーションが下がってしまう。そうではなく、社会人になるまでにどう生きていきたいか、自ら人生のプランニングをしようというのが、Self-Motivationだ。学生同士でディスカッションすることで自分の目標を可視化し、考えを共有することで、人生の目的を考えるプログラムになっている。
大学に入ると、自分が選んだ専門分野を中心に学ぶことになるが、他の専門領域について知識を得るメリットは少なくない。そこで、学内のいろいろな専門分野の先生を呼んで、1〜2年生向けにわかりやすく話をしてもらう機会を設けているのが、Faculty Visitである。
Career Seminarは、民間企業の人事担当者に協力してもらい、説明会やグループディスカッションなどをする場だ。企業側も工夫を凝らし、1・2年生向けにあまり「就活」の色を出しすぎていないところがポイントだという。
こうして、早い段階で自分の将来像を描くこと、学んでいる科目の意味を知ること、社会に出て必要な教養を身につけることなど、多くの刺激をもらえるのが、SIプログラムの特徴といえる。
積極的に参加した学生には、国内・海外研修のチャンスがある。例えば、「ある物に付加価値をつけ、どうしたらその国で売れるか企画せよ」といった課題に対し、全員で話し合って最終日にプレゼンテーションを行う。与えられた課題を、決まった期間でこなさなくてはならない大変さはあるが、その分貴重な経験になることは間違いない。
こうしたプログラムを寮で行う意義は、国籍や学部といった異なるバックグラウンドをもった仲間と取り組める点にある。特に、生活と学びがリンクした場での異文化コミュニケーションは、非常に有効だという。
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