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セミナーレポート
大学のグローバル化 情報交換セミナーVol.34

学生の未来を拓くCOIL型教育
~南山大学 NU-COILの実践から~

去る6月25日、アルクエデュケーションではCOIL型教育をテーマに南山大学からお二人の先生をお招きしセミナーを実施いたしました。

昨年からの新型コロナウイルス感染拡大により、留学をはじめとする国際交流事業が軒並み規模縮小や中止を余儀なくされ、現場にいらっしゃる教職員の皆様も少なからぬ混乱を経験されたと伺っています。また留学を目指して準備してきたものの、泣く泣くその夢をあきらめた学生も決して少なくなかったはずです。そのような背景を受け、留学の代替手段を模索するうえでCOIL型教育への関心が高まったのも必然の流れだったかもしれません。そこでアルクでは今年3月に、COIL型教育ではその第一人者の一人ともいえる関西大学池田先生をお招きしてセミナーを実施いたしましたが、予想を超えて多くの反響がございました。COIL型教育の歴史は古く、これまで携わった経験のある教職員の皆様もいらっしゃるかと存じますが、一方で池田先生のご講演後、改めて基本の部分、つまりCOIL型教育とはどのようなプログラムなのか、そして実際に自分たちで実施するとなった場合にはどのように進めればいいのか、といった実務面に関するご質問を多くいただいておりました。そこで今回は、平成30年度の世界展開力事業に採択され、アメリカや香港の協定校との間でCOIL型教育に取り組んでこられた実績のある南山大学からお二人の先生をお招きしてセミナーを実施いたしました。



余談ですが、今回お申込者数が200名を超えその反響の高さにスタッフも驚いておりました。中でもご参加者の多くが、「国際センター」「国際交流室」「語学教育センター」「教育企画推進室」など国際教育に関連する部署の教職員の皆様となっており、やはり新年度になっても収束の見込みが立たないコロナ禍を背景に、留学の代替手段を模索していらっしゃる様子がうかがえました。 このレポートでは、改めてお二人の先生にご講演の内容をまとめていただきましたので以下紹介させていただきます。



ご講談1
講演者:南山大学 国際センター特別任用講師 藤掛千絵先生

南山大学NU-COILとは、COIL型授業(オンラインツールを活用して海外の学生と協働学修を行う授業)と海外留学、企業でのインターンシップなどを組み合わせ、グローバル人材に必要な力を身につけるための国際プログラムです。海外協定校や地域企業と連携し、文化、言語、学問分野などの違いを超えた学際的で実践的な取組みを行っています。グローバルマインドを持った国際人を育成することを目指し、具体的には3つの能力(①多文化共生力②学際的国際力③問題発見・解決力)を養成することを目標に掲げています。

文部科学省の大学の世界展開力強化事業の一環として2018年度に開始した「COIL型教育を活用した米国等との大学間交流形成支援」において南山大学のNU-COILは採択され、当初より米国との時差の問題に向き合う必要がありました。セミナーやシンポジウムでも毎回のように質問を受けます。互いの大学での授業時間内で一緒に学修をするのはほとんどの場合、不可能で、基本的にはペアやグループでの協働作業は授業時間外で学生同士が都合をあわせて行います。授業中に海外の学生と何ができるかではなく、授業外で何をさせて授業内でその成果をどう扱うかという観点で計画をすることが必要です。ただし顔合わせのための合同オリエンテーションを一度やっておいたほうが、学生のモチベーションにもなると思います。



6月の情報共有セミナーでは、私からは主に短期留学プログラムのコロナ禍におけるオンライン化についてお話をさせていただきました。現地研修で実施する予定だった授業参加やビデオ協働制作、イベント主催、企業訪問などをすべてオンラインに切り替えたことをお話しさせていただきました。もちろん、現地に行く価値に代えられる方法を考案することは難しいですが、現地学生との交流を前提に計画し、その留学の形を一つの選択肢として提供することは、学生たちにとって大きなメリットとなることがわかりました。その一つは、経済的な事情で留学に行けない学生にも国際的な学びの場を提供できるということです。二つ目は、大学生活における様々な活動と並行しながら参加できるということです。三つ目は、現地での生活や語学力に不安があり、留学に二の足を踏んでいる学生たちにとって、自信をつける機会となることです。事後のインタビューや、担当教員として学生たちと関わり話す中でわかったことでした。



学生がオンデマンドで授業を履修する形式に比べ、教員同士が打ち合わせをした上で担当の学生同士を交流させ協働学修を促す形式は、COILならではの手法であり、現地とのつながりも感じることができ、課題への意欲も高まるようです。本格的な留学プログラムを設計するとなると、日々様々なお仕事を抱えていらっしゃる教職員の皆様にとっては負担に感じられると思いますが、例えばご担当されている授業で学生に課す課題を少し変えるために、お知り合いの海外の先生に連絡をとって相談をするところから始めるのも良いのではと思います。

NU-COILでは国際産官学連携PBLというCOIL型授業にも取り組んでおり、企業や官公庁から課題をいただき授業の打合せを行っています。一見すると、海外の大学も含めた3者間での打合せが複雑で大変に感じられるかもしれません。ただ、例えば普段の授業で外部からゲスト講師を招く回を設けていらっしゃる先生は、その回を利用して、事前に学生たちに準備させることや、事後で話し合うことを決め、その準備やディスカッションなどを海外の学生と一緒に取り組ませるのはどうでしょうか。それも、一つの国際産官学連携の取組みとなるのではないかと思います。




ご講談2
講演者:南山大学 国際センター特別任用講師 山田 貴将先生

私からは、本学共通教育科目である国際産官学連携PBL C(本学、香港中文大学及び小島プレス工業株式会社との協働プロジェクト)の実践を通じて、「COIL型教育は留学の代わりになり得るのか?」という問に対して個人的に感じてきたことをお伝えさせていただければと思います。
表現としてはやや中途半端になってしまいますが、「直接的に代替にはならないかもしれないが、留学をより効果的な経験に高める可能性を持つのではないだろうか?」と考えています。具体的にはこの5つのポイントでそれが可能ではないかと思います。

①海外の学生とのコミュニケーションに対する漠然とした不安感が低減する
②留学への興味・関心が高まる
③言語学習への動機が高まる
④Interculturalityが高まる
⑤留学後のミスマッチが減少する

①と②については比較的イメージがしやすいと思います。授業後のアンケートから、海外の学生とオンラインで交流する体験を通じて、それまで漠然と抱いていた国際コミュニケーションに対する不安感が和らいだと感じたり、いつか相手の国を訪問したり、その国で学んでみたいと思うようになった学生が数多くいました。



③に挙げた言語学習への動機が向上するというポイントに関しては、非常に興味深い発見がありました。本学の学生からは、「香港中文大学の学生の日本語のレベルが非常に高かったので驚いた」という声を非常に多く聞いていましたが、それだけではなく、香港の学生が流暢な日本語に加えてベースランゲージとして英語も操ることができるということに大変刺激を受けたようです。実際、「私も英語の学習を頑張ろうと思った」と表明してくれた学生が複数名いました。日本語で海外の学生と交流することを通じて、英語学習の必要性を強く感じる学生がいたというのは、予想外の発見でした。

④に関しては、授業後に実施したアンケート結果から、COIL型授業を通じて、多くの学生が「異文化理解」、「対人関係」、「日本語によるコミュニケーションに対する気付き」といった点で大きく成長したと認識していることを窺うことができました。また、毎週提出を義務付けていたCommunication Journalの記述からも、言語や文化の相違を乗り越え、相手と共通の目標に向けて積極的にインターアクションを繰り返していくことの重要性に気付いた学生が複数名おり、担当教員として嬉しく感じています。

また、COILで知り合った海外の学生から、現地に関する生の情報を獲得することによって、⑤「留学後のミスマッチが減少する」という効果もあろうかと思います。最後に、これからCOIL型教育の導入を検討されている先生方に、「COILは、留学をReplaceすることはできないかもしれないが、Reinforce、つまり留学をより豊かな経験に高めていくポテンシャルを持っている」というメッセージをお送りしたいと思います。そのような観点に立ちますと、COILとモビリティを伴うフィジカルな留学の組み合わせこそがニューノーマルになってくると確信しております。



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