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グローバル人材育成の最前線を知る【セミナーレポート】

国内屈指のグローバル環境を誇る、立命館アジア太平洋大学(APU)。多様性に溢れた組織のLINE Fukuoka。アルクではこの両者の取り組みから、グローバル人材育成と語学支援について考えるセミナーを開催しました。当日の模様をご紹介します。

別府にグローバル環境を実現したAPU

第一部「世界に通用するグローバル人材育成の実践」では、立命館アジア太平洋大学(APU)副学長の横山研治先生にご登壇いただきました。2000年に大分県別府市に開学したAPUは現在、世界88の国と地域から学生が集まり、文字通りグローバルな大学として内外の高い評価を受けています。

「APUが最も重視したのが、グローバル環境を作ることでした。『3つの50』という方針を打ち出し、国際学生と国内学生の比率を50%ずつにする、50カ国以上から学生を集める、そして外国籍教員の比率50%を目指しました。この方針を実現するため、春・秋年2回の入学制度、日英二言語での授業などの戦略をとったのです。現在は、国際学生3008名と国内学生2950名が在学しています」(横山先生)。

学生と日本企業のミスマッチとは

APUの国際学生の大きな特徴は、96.6%が正規留学であることです。英語力が高く、加えて母語、日本語など平均で4カ国語以上を話します。高い言語能力などが評価され、これまで多くの国際学生が日本企業に採用されました。しかしここ数年、日本企業に就職する学生の数は減少傾向にあるといいます。

「以前は国際学生の65%は日本企業に就職していましたが、最近は50%にまで低下し、25%は海外の企業に就職します。国際学生の価値観と日本企業がマッチしなくなり、優秀な学生が日本企業を就職先に選ばなくなってきたのです。この重要な事実を企業の方には知っていただきたいと思います」と、横山先生は強調。学生たちは、日本企業にどのような不満を感じているのでしょうか。

「採用に際しては、学位を重視してほしいという声を聞きます。学位を取ることで身に付けた物の考え方や、それを今後どのように発展させていこうとしているのかを見てほしい。学位から専門性を判断し、専門職として採用してほしいのです。日本企業に就職した学生からは、職務が明確でないという不満を聞きます。新入社員であっても、彼らは自らの役割、明確なジョブ・ディスクリプションを求めます。一方、日本企業はヒエラルキーの組織です。新入社員には職務はなく平社員の扱いとなるケースが多い。こうしたことがミスマッチの原因となっています」。

今後グローバル化はさらに進み、さまざまな文化背景を持つ社員が共に働く姿が日常的になると先生は予測します。

「グローバル人材の育成は、世界的にますます重要になります。ポイントとなるのは、マインドとスキルとハート。特に多様な文化を認める寛容性といったハートの部分は、グローバル人材育成の根幹となります。企業でもこうした観点からしっかり人材育成に取り組むべきですし、APUでもさらに力を入れ、世界的に評価される人材を輩出していくことを目指します」。

グローバル化が進むLINE Fukuokaの語学支援

第二部「多様性のあるエンジニアリング組織を CLOSING THE DISTANCE させる語学支援とは」では、LINEの国内第二拠点であるLINE Fukuoka、開発センター室長の新田洋平さんと、コミュニケーションセンターの佐藤美恵子さんにお話しいただきました。

はじめに、グローバル化の先端をいく職場の様子を新田さんが紹介します。

「LINE Fukuokaは現在、従業員1011名。出身国は21カ国に広がるという非常に多様性の高い職場です。開発部署では韓国、台湾など東アジアをはじめ、アメリカ、フランス、ブルガリア、南アフリカなどさまざまな背景を持つエンジニアが働いていて、開発室における外国籍エンジニアは6割を占めます。その中には、日本人の比率の方が低いチーム構成もある環境です。

専属の社内通訳も配属されていますが、エンジニア同士でコミュニケーションをとるために英語は必要です。またメールやレポートの作成、他の拠点とのテレビ会議やプレゼンなどでも英語を使います。一方で日本語中心のチームもあり、エンジニア全員が英語を必ず身に付けないといけないわけではありません」。

外国籍社員の増加に伴い、同社では2015年から語学支援を始めました。まずオンライン英会話を導入し、TOEIC、IELTSといった試験や、外国人社員支援スタッフの兼業による英語レッスンを実施しました。

しかし、支援スタッフの不足や「オンライン英会話の受講率が低い」「スピーキング力が伸びない」といった課題が明らかになり、2018年6月に社内英語講師として入社したのが佐藤さんでした。

「最初に学習者にカウンセリングをすると、勉強しているものの、なかなか話す力が伸びないという人が少なくないことが分かりました。通常は『間違うのが恥ずかしくて話せない』という方が多いのですが、英語を話さざるを得ない環境の開発室ではそういう方はゼロで、自発的、積極的に話そうとする姿がとても印象的でした。また、ビジネス英語よりも、社内会議や打ち合わせ前にスモールトークがしたいという希望が多かったのも、一般的な企業語学研修とは大きく異なる点でした」。

レベル別のクラス編成後、英語力に大きな伸びが

社員の英語学習のニーズを把握した後、佐藤さんは海外赴任ができるスコアとされるTOEIC730点を基準に4つのレベルに分けました。

「スピーキング力の向上が社員の最終目標ですが、スコア730点以下では基礎的な力を付けることが先決です。特に600点以下は文法知識が不足しているので、まず文法を身に付ける必要がありました。

そこで600点未満の方には『TOEIC Basic』、730点未満には『TOEIC 730+スピーキング』という週1回のグループレッスンでテスト対策の勉強をしながら、基本文法や語彙、そしてリスニング力を付けてもらいました。一方で、スコア730点以上の社員には、ニュースや日常英会話、またリスニング素材を使って英会話のグループレッスンを行うクラスと、プライベートレッスンのクラスを用意しました。どれも週1回の実施です」。

従来からのオンライン英会話は継続し、さらに外部講師を招いて「テクニカルライティング講座」を希望者向けに週一回実施することになりました。結果、この2年でTOEICは平均153点上昇。540点から820点と、280点上昇した人もいました。スコアがアップしたことで自信を付け、スピーキング学習も積極的に取り組む受講者が増えました。

「社内講師が入った後の感想では、『英語学習のやり方が分かった』という声が一番多かったです。またグループレッスンでは毎回宿題があるため、自宅で勉強をするようになったという声も寄せられました」(佐藤さん)。

開発室の語学支援の費用は会社が全額負担しますが、人事考課ではテストのスコアから英語力が評価されることはありません。語学支援の方針を、新田さんは次のように話します。

「英語学習は義務ではありません。ただグローバル化したチームで活躍したければ、英語力が必要だと感じる社員は多いでしょう。挑戦したいという社員に対して、会社は全面的にバックアップします」。

最後にアルク担当者(森山)が、アルクの提供するグローバル人材育成プログラムについて、異文化研修と海外研修を中心に紹介しました。

「グローバル化に関しては企業によって多様な課題が生じますが、アルクではグローバル人材に必要な要件を3つのステージに分けてご説明しています。必要な要件の一部が不足している場合、複合的に身に付ける必要がある場合など、アルクは状況に応じた対応ができます。ぜひお気軽にご相談ください」。

グローバル人材育成の最前線に触れられる、示唆に富んだセミナーでした。



グローバル人材育成の定義から育成方法まで教えます!