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外国人社員と効果的に協働する 異文化コミュニケーション術【デモレッスン開催レポート】

外国人社員と効果的に協働する
異文化コミュニケーション術
【デモレッスン開催レポート】

外国人社員の採用増やグローバル展開の強化により、企業の「内なるグローバル化」が進んでいます。グローバル要員と国内要員の境界がなくなりつつある中で、グローバル業務に直接従事していない社員であっても、各国文化を理解し、外国人社員と前向きに協働できる人材になることが求められています。アルクでは2019年11月27日、企業の人事担当の方に向けて、外国人社員との効果的な協働に役立つ、日本人社員向けのデモレッスンを実施しました。その模様をお届けします。

身近で目にするグローバル化

この日、行われたのは、アルクの日本人向け異文化研修のデモレッスン。通常は7時間×1日の集中研修として実施され、主に外国人社員と協働する日本人社員を対象としています。

デモレッスンの冒頭には、アイスブレイカーとして「最近笑ったこと」「焦ったこと」「感動したこと」「幸せに感じたこと」のいずれかについて、各自がエピソードを紹介し合うアクティビティーを行いました。身近な話題について話す中で、同じテーブルに座った参加者同士が打ち解け、和やかな雰囲気になっていきます。「これは、気持ちを語ることの効果です。人の気持ちは、文化を超えて世界共通。気持ちを話すことでお互いへの親しみがわき、信頼関係が深まります。外国人社員と日本人社員が打ち解けるための方法としてもおすすめです」と、吉中昌國講師は言います。

続けて、生活や仕事の中で目にするグローバル化について、グループごとに話し合いました。町中では外国人観光客や外国人店員の増加、表示やアナウンスの多言語化といった変化が見られるほか、会社についても「国内採用の外国人社員が増えてきた」「グローバル採用枠で300人以上が入社した」などの声が聞かれました。

また、自分にとってグローバル化とは何かについても話し合いました。ここでは、「理解し合えないことを受け入れ、面白がること」「言葉で直接コミュニケーションが取れること」「日本人、外国人という分け方をしないこと」などの意見が出されました。「グローバル化という言葉を聞くと、制度やポリシーのようなイメージに感じられるかもしれませんが、基本は人と人とが相互に理解し合うことなのです」と、吉中講師は説きます。

発言や行動の奥にある「価値観」

異文化理解について語る上では、まず「文化とは何か」を知る必要があります。グループごとの話し合いでは、食べ物、言葉、スポーツ、ファッション、宗教、伝統、礼儀やマナーなど、さまざまな文化の例が挙がりました。

吉中講師は、これらを文化の「島モデル」に当てはめながら解説していきます。「島モデル」とは、海の上に2つの島が隣り合って並んでおり、島の土台部分がくっついた図です。島は文化を表すもので、上から「外見」「規範」「価値観」「願い」という4つの層に分かれています。水面の上には発言や行動といった「外見」が見えますが、水面下には常識やマナーなどの「規範」があり、そのさらに下には信仰や正義、道徳といった「価値観」があります。

「日本人から見ると理解し難いような言動や行動であっても、それらがどのような規範や価値観に基づいているのかを知ることで、相手を理解できるようになるのです」と、吉中講師。そして、島モデルの一番下にあるのは、健康、安心、愛、友情、成功、幸福など人類に共通する「願い」。たとえ表面的な文化が異なっていても、根っこの部分では皆、同じ願いを持っているのです。

実際の研修では、「外国人社員の仕事を手伝ったが『ありがとう』の言葉がなかった」「仕事でミスをした外国人社員が謝らなかった」などのケースを取り上げ、これらがどのような文化的背景に基づくものかを分析するそうです。ただし、国によって文化的な傾向はあるものの、そればかりにとらわれず、個人の考え方や個性をしっかり見ることが大切であると、吉中講師は言います。

「ホウ・レン・ソウ」を円滑に実施するには

多くの日本企業で重要視される「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」ですが、外国人社員にとっては、そのメリットが理解しにくいようです。そこで、ホウ・レン・ソウにはどのようなメリットがあるのかを、グループごとに話し合います。リスクの回避、情報共有、情報整理、仕事が円滑に回る、互いに助け合える......など、さまざまな意見が挙がりました。さらに、「上司としてどのように報告・連絡・相談を受けるとよいか」「どのように報告・連絡・相談を指導するとよいか」の2点についてもディスカッションを行いました。

「欧米文化でホウ・レン・ソウは、上司が部下にこと細かに指示するmicro managementのイメージで捉えられがちです。そうではなく、いいことも悪いことも共有する中でさまざまなメリットが生まれるのだと説明すると、納得してくれる外国人社員の方も多いのです」と、吉中講師。実際の研修では、ホウ・レン・ソウ実践のより具体的なコツを紹介するとともに、上司役・部下役を設定してのロールプレイも行います。

異文化コミュニケーションを体感

次に、コンテクストによって異なる2つのコミュニケーションスタイルを見ていきます。同じ知識や常識、価値観を共有するハイコンテクスト文化では、言葉に頼らなくても理解し合えることが多くなります(High-Context Communication)。一方、知識や常識、価値観が異なるローコンテクスト文化においては、自分の考えを言葉にして明確に伝えることが重要です(Low-Context Communication)。

ここで、Low-Context Communicationを体感するために、全員参加型のアクティビティーが行われました。まず、一人一人にA4サイズの封筒が配られます。中にはそれぞれ異なる絵が描かれた紙が入っていて、内容がよく分からないものもあります。実は、この絵は全て連続していて、順番につなげることで全容が判明するという仕掛けです。自分が持っている絵を他の人に見せることなく、言葉だけで内容を説明しながら、誰がどの順番かを探っていきます。

参加者は互いの絵について説明したり、質問したりしながら、正しいと思われる順番に並んでいきます。最後に答え合わせをしたところ、見事、全員が順番通りに並ぶことができていたことが分かり、拍手喝采。絵の内容を言葉だけで伝えるのは大変だったようですが、「ゲームみたいで楽しい!」という声も聞かれ、コミュニケーションの難しさを改めて体験することができました。

ダイバーシティが企業を強くする

この日のまとめとして、文化的ダイバーシティが「社員」「職場」「企業」それぞれにもたらす利点について、グループごとに話し合いました。そこで上がった意見を全体で共有した後、最後に吉中講師がまとめます。

  • 社員にもたらす利点......視野が広がる、新しい考え方が生まれる、寛容になる、偏見が減る など
  • 職場にもたらす利点......多様なものの見方ができる、議論が活性化する、多様性を受け入れることで働きやすい環境作りにつながる など
  • 企業にもたらす利点......多様な市場に対応できる、優れた人材を採用できる、企業イメージがよくなる など

さらに、「文化的ダイバーシティは世界平和にもつながる」と、吉中講師は付け加えます。「一つのチームにいろいろな国の方がいて、互いに信頼関係を築いて助け合っていけば、それは世界平和の縮図です。これが大きくなれば、本当の世界平和につながるでしょう。企業として、ぜひそのような貢献をしていただきたいと思います」。このようにまとめられ、デモレッスンが終了しました。

導入事例の紹介

最後にアルク担当者より、異文化研修の導入事例が紹介されました。一つ目の事例は、製造業の中堅企業。採用した外国人社員の大半が数年で退職してしまう状況の中、受け入れ側である日本人社員においても課題が見られたため、グローバルマインドを育成し、異文化コミュニケーションスキルを獲得してもらうための研修を行いました。

二つ目の事例は、同じく製造業の中堅企業。日本人社員向けと外国人社員向けの異文化研修を別々に行ったのち、合同研修の中でアクションプランを策定。2カ月後にフォローアップ研修を実施したところ、「異文化・多様性への理解が向上した」「多様性を活かすことで職場が活性化した」などの成果が挙げられました。

企業のダイバーシティを実現するためには、外国人社員に日本のビジネス文化や日本語を学んでもらうだけでなく、受け入れ側である日本人が異文化を理解し、コミュニケーションスキルを身に付けることも大切です。さまざまなディスカッションやアクティビティーを通じて、「文化とは何か」「ダイバーシティのメリットとは何か」といった、グローバルマインドの基本となる内容を理解できるデモレッスンでした。

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講師: 吉中昌國
株式会社アルク専属 グローバル人事コンサルタント

京都に生まれ、19歳で渡米。15年間、アメリカに暮らす。カリフォルニア大学バークレー校大学院で社会学修士号を取得。シリコンバレーで通訳・翻訳に関わる一方で、日本企業の進出をサポートするNGOの会長を務める。現在は株式会社アルクの専属講師として活躍。日本全国の多数の企業と大学で研修を実施している。理念共有研修、グローバル・マインドセット研修、多文化対応スキル研修、ダイバーシティ研修などを立案、実施し、その極めて細やかなカスタマイズ対応により高い満足度を得ている。