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外国人社員への異文化理解・日本語研修 -企業の悩みと研修を成功させるポイント-

外国人社員への異文化理解・日本語研修
-企業の悩みと研修を成功させるポイント-

近年、日本の企業で外国人社員が増えてきていますが、外国人社員の受け入れに関してはまだまだ手探り状態です。今回は外国人社員を受け入れている企業から聞かれる悩みとともに、その解決の一助となる外国人社員研修について取り上げ、研修を成功させるポイントをご紹介していきます。

資料「外国籍社員の育成に必要なこと」をダウンロードする

1.外国人社員の受け入れと企業の悩み

外国人労働者増加の背景と日本語教育推進法

厚生労働省が発表した2021年10月末現在の「外国人雇用状況」のまとめによれば、外国人労働者は約172万人で前年より増加し、コロナ禍において外国人の入国が厳しく制限されている状況下においても、過去最高の数字を記録しました。

外国人労働者が増えている背景には、2つの大きな理由があります。1つはグローバル化の進展により日本企業が優秀な外国人人材を必要としていること、もう1つは日本の少子化に伴い日本人の労働人口が急激に減少していることです。

労働力が不足している日本において、外国人に労働の担い手となってほしいという国や企業の期待から、2019年に外国人雇用の「特定技能」という在留資格が新設されました。それとともに外国人の積極的な受け入れを行う際に日本語教育の推進が重要であるという考えから、同年、「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行されました。

この中で、事業主については以下のような条文があります。

事業主の責務(第6条関係)
外国人等を雇用する事業主は,基本理念にのっとり,国又は地方公共団体が実施する日本語教育の推進に関する施策に協力するとともに,その雇用する外国人等及びその家族に対する日本語学習の機会の提供その他の日本語学習に対する支援に努めるものとすること。

このように雇用側が日本語教育に配慮する必要があることが法律によって明文化されたことは、社会的に大きな意義があるといえます。

外国人社員を受け入れる企業のメリット

外国人社員を受け入れている企業には、若くて優秀な外国人社員が入社することで、これまでの職場にはなかった新しい発想やアイデアが生まれ、職場が活性化するというメリットがあります。日本人社員がおしなべて黙っている会議の席などでも、外国人社員は自分の意見をはっきりと述べるなど、熱心で前向きな姿勢に周囲の日本人社員が刺激を受けるという声もよく聞かれます。
日本語の勉強もそうですが、何事にも一生懸命に取り組み、日本という異国で懸命に生きていこうと努力する姿は、日本人社員にポジティブな影響をもたらすことが多いようです。

このようにメリットが多い一方、実際に外国人社員を受け入れる企業からは業務上のさまざまな悩みが聞こえてきます。
以下、よくある企業側の悩みと、なぜその問題が発生するのか、そしてその解決法について述べていきます。

企業の悩み① 外国人社員と上司、同僚のコミュニケーションがうまくいかない

仕事の場面において、外国人社員に日本人の上司や同僚の意図が正確に伝わらない、通じるはずの日本語が通じず、業務に支障が出るといったことがあります。
日本社会では、一般に「あまりはっきりと物事を伝えない」傾向があり、同じ日本人であれば何となく通じる「あいまいな日本語」も、文化の異なる外国人社員には伝わりません。 そのため、「なぜ」「何のために」この仕事をするのか、「いつまでに」「どんな形で」その仕事を完成させなければならないのか、複数ある仕事の優先順位は何なのかを具体化させるコミュニケーション能力の育成が必要になります。日本語の意味や意図がよく分からない場合は、そのことを確認したり明確にしたりするための日本語能力も大切です。

これは日本人側にも、明確で、具体的で、シンプルなコミュニケーションが求められます。企業がグローバル化するということは、コミュニケーションのスタイルもグローバル化するということになります。「郷に入れば郷に従え」とばかりに日本流のコミュニケーションスタイルを押し付けるのは考えものです。せっかく職場に新しい外国人社員が入ってきたのですから、皆でコミュニケーションを変えていく努力が必要になります。

企業の悩み② 外国人社員がチームで動けない

日本企業文化の特色の一つはチームワークです。強みと言ってもいいでしょう。

日本企業では一人だけで完結するような仕事はほとんどなく、同じチーム内のメンバーとの協力が不可欠です。しかしながら、そのことを理解していない外国人社員も多いようです。自身に与えられた範囲の業務については懸命に取り組む一方、同じチーム内の他のメンバーの状況については無頓着という声もよく聞かれます。

日本企業には、例えば隣の人の仕事が多くて困っているような場合は、そのことをそれとなく気に掛けたり、場合によっては声を掛けたりすることを自然に行う文化があります。そういったコミュニケーションにより強いチームが生まれていきます。そのようなチームワークのメリットについても外国人社員にはよく理解してもらう必要があります。また、その際に必要な日本語も学ぶべきでしょう。

よく言われる「報告・連絡・相談」についても、なぜそれが大切なのかを外国人社員にはよく理解してもらう必要があるのと同時に、そのための日本語を身に付けてもらう必要があります。

企業の悩み③ 外国人社員が定着しない

企業の外国人社員の受け入れにおいて最もよく聞かれるのがこの悩みです。

外国人社員が退職・転職してしまうのにはさまざまな理由があると思います。当然、今の仕事に満足していれば転職はしないわけですから、何らかの不満があったものと思われます。それは、業務内容かもしれませんし、待遇かもしれませんし、自分に対する評価かもしれませんし、上司との関係かもしれません。しかし、そういったことを解決するヒントも、日頃からの周囲との日本語でのコミュニケーションにあります。

仕事で必要な日本語能力と併せて、企業に対する理解を深めること、そのために外国人社員の上司や同僚との日本語によるコミュニケーションの質と量を増やすことが、優秀な外国人社員の定着につながります。

企業の悩みを解決するために

このように外国人社員を雇用する企業の悩みは外国人社員の日本語能力の問題と、日本の企業文化への理解の問題に分けられますが、この2つの要素は密接につながっています。

日本語使用の背景をきちんと理解しないと、仕事において適切な日本語を使えるようにはなりませんし、仮に日本語だけが上手になったとしても、業務上の課題は解決できません。企業側は外国人社員に対して異文化理解のサポートと日本語のサポートの両方を行うことが重要といえるでしょう。

これらの悩みに対する解決法としては、社内マニュアルの翻訳や翻訳ツールを準備する、OJTを活用する、外国人社員にメンターをつけるなどがありますが、研修で体系化して学ぶ機会を提供するのも有効です。

それでは、異文化理解研修、日本語研修はどのような点に気を付け、実施したらいいのでしょうか。
以下、異文化理解研修、日本語研修を成功させるポイントについて述べていきます。

2.外国人社員への研修を成功させるためのポイント

社内で最初に決めておくことを確認する

研修を行う前に、社内や部内で、以下のようなことを確認しておくといいでしょう。人事部や関連部署などとの調整が必要な場合もあると思います。また、外国人社員(研修受講者)への説明も必要です。

※この表は左右にスクロールできます。

項目 確認事項
1 予算と期間 関連部署との調整がとれているか
2 研修担当者の業務負担 担当者は研修にどの程度時間を使えるか。他業務との兼ね合いは無理がない範囲か
3 研修のタイプ 集合研修か、個別研修か(集合研修の場合は特に、参加者全員のスケジュール調整も必要)
4 研修のスタイル オンライン研修か、対面研修か
研修場所の確保はできるか(オンラインの個別研修でも、部屋を用意する必要がある場合も)
5 研修の時間 業務内か、業務外か
関連部署や外国人社員の同意も必要
6 研修実施機関 自社で行うか。外注するか
ノウハウや研修の質、費用対効果など要確認

目的や目標を明確に設定する

研修を行うことが決まったら、まず大切なのは、研修の目的を明確化し、社員本人にきちんと理解してもらうことです。例えば、業務を行う上で不足している日本語能力があり、それを改善するのが目的なのか、それとも他の社員とのコミュニケーションを深めるためなのか。それによって、本人の研修の受け取り方も全く違ったものになりますし、取り組む態度も違ってきます。

目標はあまりたくさん挙げずに数を絞り、その分確実にできるようにすることで、本人に達成感を持ってもらうのがいいでしょう。また、直属の上司や同僚にも具体的な目的や目標を共有し、必要な協力をしてもらうようにしましょう。

研修を外注する際の比較検討のポイント

異文化理解研修、日本語研修を行っている機関はたくさんありますが、研修内容や講師の質は機関によってかなり異なります。そのため、研修機関のホームページなどを見ながら、特色や実績などを確認し、企業側の課題意識やゴールイメージなどを伝えた上で、実施計画書と見積りを取りましょう。費用対効果にあった内容であるのかを確認し、不明点があれば質問・確認をして、納得した上で研修機関を選ぶようにしましょう。

●研修機関のチェックポイント●

教育の質が高いか
研修内容、研修効果、研修講師の経験や資格を確認する。
契約関連がしっかりとしているか
利用規約など必要な情報を広く公開しているか、秘密保持契約等、自社で必要な契約がしっかりと結べる体制であるかを確認する。
費用対効果が高いか
一見、安いと思っても、かえって時間や費用がかかり、思った効果が出ない場合もある。他社事例などを確認してみるのもよい。
サポート体制が整っているか
必要なサポートが適宜受けられるか確認する。また、サポートしてほしい内容について事前に検討しておく。
信頼できる機関であるか
専門性が高く、質問した内容についてしっかりと丁寧に対応してくれるか、見積り書や請求書など迅速に対応してくれるかを確認する。

異文化理解研修で大切なこと

ここからは、具体的に異文化理解研修、日本語研修で大切なことについてそれぞれ見てみます。

外国人社員向けの異文化理解研修を行う際に、一番気を付けないといけないことは「日本のルール、マナーはこうだから、それを覚えて行動すべきだ」という一方的な押し付けをしないことです。

表面的な理解にとどまらず、日本にはなぜこのような文化や商習慣があるのか、なぜその価値観が大切にされているのかを深く理解してもらうことが異文化理解研修の肝となります。そして、外国人社員であることを強みとして、企業に貢献できる人材であることを意識してもらうことも必要です。

また、異文化理解研修は受け入れ側の企業の日本人社員にも行うことが有効です。「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組む企業こそが、個々の能力を最大限に生かし、発展していく企業となるからです。

日本語研修で大切なこと①「実際の日本語のレベルを知る」

研修を考える際に「目的、目標の設定」が大切だと述べましたが、いつまでにどの程度実力をつけられるか検討するために、まずは外国人社員の実際の(現在の)日本語レベルを測る必要があります。そしてその結果から実現可能な到達目標を決めていきます。

日本語レベルを知る際によく用いられている指標としてJLPT(日本語能力試験)がありますが、日本語の知識を問うJLPTでは、実際にどのくらい日本語を使ってコミュニケーションがとれるかはわかりません。
「日本語で社員とコミュニケーションが取れるようになってほしい」という目的、目標で日本語研修を行う場合には、必ずコミュニケーション力を測るテストを行い、実際の(現在の)日本語レベルを確認しましょう。コミュニケーション力を測るテストとしては、会話力テストや、日本語での文を作る力を測るテストなど、アウトプット型のテストが有効です。

日本語研修で大切なこと②「研修の目的、目標と研修内容を一致させる」

日本語研修を初めて行う場合に失敗しがちなことは、研修の目的、目標と研修内容が一致しておらず、思ったように効果が出ないというケースです。

日本語力の向上といっても、読み書き、日常会話、社内の人とのビジネス会話、社外の人とのメールのやりとりなど、目的や目標は多岐にわたります。例えば「これから来日する外国人社員が社内の人と簡単な日常会話ができるようになる」ことが目的の日本語研修において、ひらがなやカタカナ、漢字などの文字を集中的に学ぶ研修を行ってしまっては、目的、目標と研修内容が離れてしまいます。文字を習得するのは日本語力を高めるために必要なことではありますが、研修の目標である「簡単な日常会話ができるようになる」ためには時間がかかりすぎてしまい、せっかくの研修の効果が薄れてしまいます。

研修の目的、目標と内容を一致させるためには、目標と内容を「~ができるようになる」といった形(Can-do)で明確に表し、研修に関わる関係者全員が同じ目的、目標を共有することが大切です。

まとめ

今回は外国人社員への異文化理解研修、日本語研修にフォーカスし、研修の有効性とチェックポイントを中心にお伝えしました。
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