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社員の英語力向上のために人事担当者ができること~英語初心者層へのアプローチ方法~

社員の英語力向上のために
人事担当者ができること~英語初心者層へのアプローチ方法~

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人事担当者の悩み・現状

企業の人事ご担当者とお話していると、いつの間にか話題が、「社員の英語力の底上げ問題」になっていることがよくあります。最近は、英語学習は本人に任せる方針の企業が増えていることもあり、人事担当者としても、社員には自発的に勉強してほしいところですが、現実には、なかなか思い通りにいかないようです。

特定の業務や昇進試験で英語力が求められるような場合を除くと、「誰もが英語学習に熱心」とはいえないのが普通でしょう。実際の英語力が「TOEIC受験以前のレベル」という社員も、想像以上に多いかもしれません。こうした'英語初心者'の社員について、その学習意欲を引き出し、会社全体の英語力の底上げにつなげるには、どうしたらよいでしょうか。

日本の社会人の8割は、初心者レベルの英語力?

2020年のTOEIC® Listening & Reading Testで、日本人受験者の平均スコアは531点1)でした。これは、次のようなことが「何とかできる」レベル2)です。

  • 自分の業務や専門分野に関する文書を読んで理解できる
  • 会議の議事項目、レジュメ、配布資料等を読んで理解できる
  • 取引先や顧客からのクレームレターを読んで理解できる
  • 「Time」や「Newsweek」などの雑誌、一般的な国際英字新聞の記事を読んで、大まかに理解できる

これを見ると、'英語環境で何とか仕事がこなせるレベル'として、多くの企業がTOEIC600点取得を社員に奨励する理由が、よく理解できます。ただ、531点というこの平均スコアは、最初からやる気のある人たちが、真剣に準備をして受験に臨んだ結果ですから、何も勉強していない人の英語力は、当然、はるかに低いと予想されます。

ある調査3)によると、ヨーロッパ言語共通参照枠CEFR(セファール)の指標に当てはめた場合、「自立した言語使用者」である【B1】【B2】レベルに達している日本の社会人は、全体の2割以下。実に8割強が【A】レベルだとしています。これは中学・高校修了時点に期待される程度の英語力と重なります。日本人の大半が、中学・高校レベルの英語力のまま、グローバル時代のビジネス社会で、仕事をしていることを想像してみてください。

下の表で【A1】【A2】レベルの熟達度を見てみましょう。このレベルの学習者を、【B1】【B2】レベルに引き上げることが、社員全体の英語力を底上げし、会社の国際競争力をも底上げすることにつながります。

段階 CEFR 能力レベル別に「何ができるか」を示した熟達度一覧
熟練した言語使用者 C2 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解できる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。
C1 多様で高度な内容の長文を理解し含意を把握できる。流暢かつ自然な自己表現ができ、生活面でも学業や仕事面でも、柔軟かつ効果的に言葉を用いることができる。複雑な話題について、明確でしっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる。
自立した言語使用者 B2 専門分野の議論も含め、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者と緊張せずやり取りができるほど、流暢かつ自然。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。
B1 身近な話題について、標準的な話し方であれば要点が理解できる。身近な関心分野について筋の通った簡単な文章が作れる。その言葉が話されている地域で遭遇する、たいていの事態に対処できる。
基礎段階の言語使用者 A2 ごく基本的な個人・家族の情報や、身近なことについては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、単純で直接的な情報交換に応じることができる。
A1 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回は、理解して用いることができる。自己紹介や、個人情報に関する質問をしたり答えたりできる。相手がゆっくり、はっきりと話し、助けが得られるならば簡単なやり取りもできる。

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英語初心者が抱える課題

英語初心者がずっと初心者のままでいること、英語学習に消極的であることの背景には、それなりの理由があります。

まず考えられるのは、「英語学習に対するモチベーションが低い」こと。いま英語ができないのは、英語など知らなくても、これまで問題なく暮らしてこられたからです。これは、「目標の不在」や「目的意識の欠如」にも、つながっています。

「英語はやってみたい。でも何から手を付けていいかわからない」という人たちの問題は、気持ちよく学べて効果が実感できる、自分にあった学習方法を知らないことです。「忙しくて時間が取れない」人に欠けているのは、具体的な目的と、無理のない学習プランでしょう。

「そもそも英語が嫌い」、「英語の勉強は苦痛」と、取り付く島もない人も、なかにはいることでしょう。学校時代の英語の授業によい思い出がないか、何年も真面目に勉強したのに英語が使えるようにならず、「やってもムダ」と諦めてしまっているのかもしれません。

人事担当者にできるサポートは?

英語初心者に自律学習を促すうえで、頭に入れておきたいポイントがいくつかあります

  • 個々の社員に、英語学習の目的・目標を見つけてもらう
  • 英語学習に対して積極的な気持ちになってもらう
  • 効果的な英語学習法を知ってもらう
  • 「明日からでも英語の勉強をやってみよう」と思ってもらう

外国人観光客の訪日旅行ブームに日本中が沸いたとき、地方の旅館や飲食店でも、小さな土産物店でも、それまで英語と無縁だったごく普通の老若男女が、あっという間に必要十分な英語のコミュニケーション力を身につけて、大活躍をしました。彼らには、ビジネスチャンスに直結した、強いモチベーションがあったのです。

モチベーションは自律的な学習に踏み出すための第一歩であり、「目的・目標」や「英語学習に積極的」であることとも深く関係しています。英語が必要な職種にない人にも、目標を持たせることは可能です。例えばTOEIC受験を目標として設定し、そこに会社が何らかのインセンティブを提供すれば、学習意欲はふくらみます。既存の研修や英語学習支援を、モチベーション目線で見直して、自己学習へのきっかけづくりとして、役立てることもできるでしょう。

「効果的な学習法」については、教材や学習方法のバリエーションを紹介するだけでは不十分です。一人ひとり、性格も、ライフスタイルも、英語力も違いますから、できるだけ個別に話を聞いて、それぞれに合った学習法を一緒に考えていければ理想的です。

英語初心者のみなさんには、まず肩の力を抜いてもらいましょう。「明日からでもやってみよう」と、思ってもらうことが先決です。難しく考えず、できることを、できる時間に、少しずつ続ければいいのです。楽しさや手応えを感じれば、長く学び続けることにもつながります。

1.英語は勉強ではないと、知ってもらう

英語初心者に対しては、最初に英語学習のハードルを下げてあげる必要があります。まずは、「英語は勉強ではない」ことを伝えてあげてください。

英語は、機械的に単語を暗記したり、文法を頭に詰め込んだり、英文和訳をしたりといった'勉強'で、使いこなせるようになるものではありません。むしろ音楽やスポーツと同じように、トレーニングで身につけるものです。

受験英語の印象が強く残る人、学校英語が苦手だった人にこそ、楽しみながら英語を身につけられるトレーニングがあることを、知ってもらうことが重要です。

2.一人でも、初心者でも、英語が苦手でも、今日からできる練習法

リスニングとスピーキングについて、音声素材さえあればお金もかからず、忙しい人も隙間時間で始められる、学習メソッドを紹介します。

【1】リスニング力を鍛えるトレーニング

母国語を話すとき、脳は「音」「文字」「意味」を同時に高速処理しています。英語でも同様の処理ができるようになると、英語の音が格段に聞き取れるようになります。英語の発音やリズムに慣れることで、スピーキングにもよい影響が期待できます。

用意するもの:英語音声付きの学習書

  1. ① 音声を聞き、聞き取れた語を書き出してみる (Dictation)
    その後テキストを確認して、聞き取れなかった単語、知らない単語は調べて確認。
    テキストを見ながら再び音声を聞き、音同士がくっついたり、省略されたりしている部分に注意して、その部分を同じように言ってみる。強弱やリズムも意識する。
  2. ② 音声に合わせて、テキストを音読する(Overlapping)
    耳から聞こえる音声に重ねるように、テキストを音読。お手本と同じように言えるまで、何度でも練習をする。慣れるにつれ、最初は聞き取れなかった英語の音も、キャッチできるようになる。
  3. ③ 語順処理トレーニング(Phrase reading)
    何と言っているのか、語順通りに意味を理解する。文末から訳すのではなく、頭から「意味の塊」ごとに、大きく内容をとらえるようにする。情景、状況、心象風景などをイメージしながら行なうと、全体がつかみやすい。
  4. ④ テキストを見ないで発話する(Look up and Say)
    一文、またはカンマまでなど意味の区切りまでテキストを読み、顔をあげて、テキストを見ないで英文を暗唱する練習。
  5. ⑤ 文字を見ずに音声の後にリピートする(Repeating)
    音声を聞き、1文ごとに聞き取った英文を、同じように言ってみる練習。
    これとは別に、流れてくる音声のすぐ後について聞きとった音を口に出し、追いかけ続けるshadowingも効果的。音と意味の処理スピードを上げる練習法です。

【2】スピーキング力アップのトレーニング

相手がいなくてもできる、スピーキングの練習法です。1カ月ほど続けると、明らかな違いが感じられるでしょう。

  1. ① 毎日の1分間スピーチ
    毎日1分間、時間を計って、その日の予定を声に出して英語で言う。ポイントは、必ず主語と動詞で始まる「文」で話すこと。5W1Hを意識して情報を加えていくと、たくさん話すことができる。辞書は使わず、間違いも気にしない。
  2. ② 毎日の短い英文日記
    3分、5分など、時間を決めて毎日書く。文の形で、5W1Hの情報を入れることを意識する。書いている間は辞書を使わない。書き終えたら、書いたものを自分で見直し添削する。自分で気づいた間違いを、わかる範囲で直せばよい。書けなかった単語や表現も、調べて書き入れる。文法が不確かな部分があれば、メモしておき、あとで調べて直す。最後に音読をする。

3.学習継続のために、人事担当者ができること

トレーニングを続けても、なかなか成果が得られないと、つまらなくなってやめてしまう人が出てきます。反対に、「なんだか少し、英語が聞き取れるようになってきた」、「始めたときより、英語が出やすくなった」などと思えれば、それが先へ進む力となります。

早い段階で成果を実感してもらうには、学習者自身が自分の英語の課題を知り、目標を定め、学習計画を立て(Plan)、日々のトレーニングを効率的に行なう(Do)ことが大切です。これに定期的な振り返り(Check)と、トレーニング内容や学習計画の改善(Action)を加え、PDCAサイクルを回して学習を継続し、習慣化していきます。この点も最初の段階で説明し、学習者に自覚してもらいましょう。

具体的なトレーニングについても、できれば事前に人事担当者自身が体験し、ポイントをよく理解しておくと、学習者からの相談に適切に対応し、多くの問題を解決することができます。

まとめ

モチベーションがまだ希薄な学習者、とくに英語初心者は、語学研修を受けたから、自己学習教材を渡されたからといって、急に熱心に勉強を始めるものではありません。ここまでご紹介してきたように、自己学習を始める際の導入部分を、しっかり押さえてサポートすることが重要です。

アルクでも、自己学習法セミナーを実施しています。学習者の問題点把握から、効果的な英語のトレーニング法の紹介まで、2時間からの実践的なプログラムです。英語初心者の自己学習導入セミナーとして、ぜひご利用ください。

(参照:British Council オフィシャルサイト)www.britishcouncil.jp/programmes/english-education/updates/4skills/about/cefr

出典】1) 国別TOEIC平均スコアhttps://www.iibc-global.org/iibc/press/2021/p174.html 2) TOEICスコア別できることhttps://www.iibc-global.org/toeic/special/target/list_reading.html 3) H27年12/11 文部科学省教育課程部会・外国語ワーキンググループ資料4(P3)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/058/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/01/08/1365351_2.pdf