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多様な人材が生き生きと活躍する職場の実現を目指す、
ANAケータリングサービスの挑戦

株式会社ANAケータリングサービス様

海外に拡大するビジネス、外国人スタッフの増加と、グローバル化が加速するANAケータリングサービス。部長クラスに実施した「グローバル・マインド研修」について、総務部の飯田有一さんに手応えと今後のビジョンなどを聞きました。

組織風土の刷新は、コミュニケーション改革から

――飯田さんは組織風土改革担当として、従業員の研修を統括しておられますが、これはなぜですか?

飯田 人材の育成も、「組織風土全体の改善」という大きな枠の中で考えることを、意図しています。

当社は1990年の設立以来、ANAの増便と共に成長を遂げてきました。契約社員やパート社員も含めると、従業員数は現在およそ1300人を数えます。企業もこの規模になると、いつの間にか世代間ギャップが広がる、議論よりトップダウンで物事が決まる、型通りの仕事で満足する、仲間同士の意思疎通が希薄になり精神的に疲弊する、といった弊害も出てきがちです。

企業として今後も持続可能な成長を維持するためには、従業員一人一人が本当の意味で楽しく生き生きと、仕事に取り組める組織風土が不可欠です。そしてその確立には、人々の「つながり」や「コミュニケーション」が重要な要素となります。

そこでよりよい組織風土を作るために、まずは多様な人材を部下として抱える部長職から、意識を変えてもらおうということになりました。部長たちが率先してコミュニケーションのあり方を見直すよう、そのきっかけとなる研修を行いたいと考えたわけです。

――会社全体の組織風土を向上すべく、「コミュニケーション」をキーワードに、部長職向けの研修からスタートされたのですね。

飯田 しかしなにぶん、知識も経験も豊富な皆さんです。「コミュニケーションについて学ぶ? 何を今さら」と、言われないとも限りません。そこで「グローバル」という切り口を設けることにしたのです。これを糸口に、新鮮な関心を持って研修に参加してもらい、その結果コミュニケーションについて自然な気付きを得、「この発想はうちの部署でも応用できるな」と思ってもらえれば大成功です。

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英語の前に、まずマインドセットを身に付けよう

――そしてこの7月に実施されたのが、アルクの「グローバル・マインド研修」ですね。さまざまな選択肢の中から、なぜこの研修を選ばれたのですか?

飯田 グローバル研修としては、確かにもっと英語寄りのプログラムもあります。現に当社でも、年に1度、全社員にTOEICを受けてもらっています。しかし残念ながら、しぶしぶ受験する人も多いのです。当社の業務の9割はANAからの受託なので、一部の部署を除き、これまで英語はあまり必要がなかったからです。

でもこれからは違います。外国の航空会社にも、積極的にビジネスを広げていこうとしていますし、外国企業とのタイアップで、海外出発便用の品質の高い機内食の開発も進めています。英語を使って世界で活躍する社員が、もっと必要となってきますが、あいにくまだ、英語習得の必要性を実感している人は多くありません。

なぜ英語が必要なのか。そもそもなぜ今、コミュニケーションの見直しが大事なのか。英語よりも、そこを社員に理解してもらうことが先決だ、ということになりました。多様性に富むグローバル環境を生きるためのマインドセットを、まず身に付けようというのが、「グローバル・マインド研修」を導入した主な理由です。そこを理解すれば、おのずと英語学習に対する意欲も変わってくると思うからです。

――研修の実施に際し、特に注意したことはありますか?

飯田 相手が外国人であれ、日本人であれ、その人の立場や価値観を理解してコミュニケーションをとらないと、仕事というのはうまく進みません。アルクさんには、実際の研修プログラムを作成するにあたり、人々の考え方の多様さに参加者が気付くような内容を、盛り込んでほしいとお願いしました。

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事例やワークショップで体感する「多様性」

――7時間を費やした1日研修に、26名の部長さんが参加されたそうですが、反響はいかがでしたか?

飯田 とても有意義だったと、皆さん喜んでいます。外国人との付き合い方に限らず、一人一人の個性や多様性を尊重するヒントをたくさん学んだので、すぐにでも自分の部署で応用したいという感想が印象的でした。ローコンテクストとハイコンテクストの違い※を理解したコミュニケーションの大切さや、各国特有のものの感じ方について、具体的に学べたことも、とても参考になったようです。

※相手に確実に伝わるように話す、ロジックを重んじる、不明点は質問するなど、言葉できっちり確認し合うローコンテクストに対し、ハイコンテクストは文脈に込められた共通の価値観、情緒、常識、体験などを重視し、ツーカーでわかる、忖度する、察することを得意とする。

ケーススタディーで紹介された、「中国では親しい人にお礼をいうのは、水臭くてかえって失礼。だから親しい間柄では、言葉に出して感謝を伝えないことが多い」という事例は、個人的にも非常に面白かったです。機内食の製造ラインでは、外国人や、日本人と国際結婚したパートさんたちも大勢働いていて、仕事に対する考え方も一様ではありません。日本人は持ちつ持たれつ、みんなで仕事に取り組む感覚が強いのに対して、同じアジアでも国が違えば、「ここまでが私の仕事」と割り切ったうえで、自分の分担に責任を持つ人が結構多いといったことにも私自身、現場を経験して初めて気付きました。だから担当の吉中昌國講師が話してくれた事例が、とても納得できたのです。

――研修全体の構成や流れはどうでしたか?

飯田 ケータリングの会社ということで、食文化に関する事前課題が出ていたのですが、参加者がよく調べて来ていて、専門性も高くよい導入になりました。ワークショップやグループワークなどのアクティブラーニング、そして互いにニックネームで呼び合うルールのおかげで、明るく和やかな雰囲気で終始し、部長同士の交流やネットワークづくりにも役立ったと思います。冒頭で社長のスピーチがあったことで、研修の目的もしっかり浸透させることができました。

吉中講師は物腰も柔らかく、ユーモアを交えながら、問題の本質をしっかり伝えてくださるので、参加者の理解が進んだと思います。プログラムの進行と共に、参加者同士の議論がどんどん活発になっていき、とても楽しく充実した研修になりました。

――グローバル人材育成について、今後はどう取り組んでいかれますか?

飯田 「自ら考え行動し、周囲を巻き込み変化を起こし、ANACとグループのグローバルな発展に貢献する人材」という、当社の人材育成ビジョンに沿った、人材教育・知識付与を進めていきたいと考えています。

日本人は和を重んじるあまり、とかく言いたいことを言えない面がありますが、グローバル社会においては、もっと自分を開放し、思い切って発言する度胸も必要ではないでしょうか。そんなことにも気付かせてくれた研修でした。好評でしたので、来年以降は課長職を対象に、再び検討したいと思っています。

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株式会社ANAケータリングサービス
総務部 総務課 組織風土改革担当 課長
飯田 有一さん

1999年入社。多様な人が働く製造現場を担当するうち、若い世代とベテラン社員との価値観のズレ、外国出身者と日本人との感覚の違いといった問題に着目。日本企業にありがちなトップダウンからの脱却と、さまざまな立場の人たちの活発な意見やアイデアが、より生かせる職場づくりを提案。会社のグローバル戦略に資する、風通しの良いダイナミックな組織風土づくりに取り組んでいる。