こんにちは。グローバル人材育成の「アルク」のライティングチームです。
この記事では、TOEIC®300点社員のTOEIC®スコアをアップさせるために実施した英語研修に関する情報をお伝えします。
TOEIC®の特徴を確認するとともに、目標設定の考え方や、社員の自己学習の方法、実際にスコアアップした社員が取り組んでいた内容についても詳しく解説します。
~目次~
そもそもTOEIC®300点とはどのくらいのレベルに該当するのでしょうか。
以下の表は各TOEIC®スコアと、「英語でできること」の関係をまとめたものです。
トータルスコア | 英語を使ってできること |
---|---|
900点~ | 自分の分野に関する高度な専門書が読める、新聞記事を読んでおおまかに内容が理解できる。ニュースを聞いて内容を把握し、ネイティブとの議論も可能。 |
800点~ | 同業他社のアニュアルレポートや自社製品の契約書など、複雑な文書を読んで理解できる。会議での発言やプレゼンもできる。 |
700点~ | 社内文書、通達、会議のレジュメや配布資料等、仕事関連の文書はほぼ問題なく理解。英語を使って仕事ができるレベル。 |
600点~ | 海外旅行や日常会話程度には、ほぼ対応できる。自分の仕事に関連した文章であれば、何とか理解できる。 |
500点~ | 英語情報のネット検索などはかろうじてできるが、長文や複雑な表現を理解し、使いこなすのは難しい。 |
400点~ | 英語の看板を見てどんな店かわかる、自分の仕事に関連したカタログなどは、何とか理解できるレベル。仕事で英語を使うにはほど遠い。 |
以下を参考に作成:
https://www.iibc-global.org/hubfs/library/default/iibc/press/2023/p227/2023DAA.pdf?hsLang=ja
https://studying.jp/toeic/about-more/about2.html
https://www.kandagaigo.ac.jp/kifl/contents/toeic-score
この表では、TOEIC®300点は400点未満に該当し、英語の初歩的なレベルであることがわかります。ここからスコアを上げるためには、語彙力の強化、文法の理解、リスニング練習など、基本的な英語学習を継続していくことが重要です。
また、300点以下の層はTOEIC®の社会人受験者のおおよそ下位5%となっています。
全体の5%と聞くと、かなり薄い層であるように感じますよね。しかし、弊社によくご相談いただく内容として、「英語力の底上げをしたい」「全社的にTOEIC®スコアが低い」の対象者になっている社員はこの層のボリュームがかなり大きいのです。そのため、社員全体の英語力をあげるためにも、まずこの層からアプローチしていくに他なりません。
出典:一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会『TOEIC® Program DATA & ANALYSIS 2023』
https://www.iibc-global.org/hubfs/library/default/iibc/press/2023/p227/2023DAA.pdf?hsLang=ja
実際に、TOEIC®スコアが300点だったある社会人Kenさんの例を見てみましょう。この表では、2022年度のTOEIC®公開テストでの社会人の平均点と比較しています。
社会人のKenさんの例
公開テスト | Reading | Listening | スコア |
---|---|---|---|
社会人の平均点 | 346点 | 292点 | 638点 |
Kenさん | 90点 | 210点 | 300点 |
以下を参考に作成:
https://www.iibc-global.org/toeic/special/target/list_reading.html
この状態から、TOEIC®のスコアアップを目指したいとはいえど、単にTOEIC®対策のみをひたすら実施するというよりも効果的な方法があります。
それはリスニングを徹底強化することで英語の音感覚と意味処理力を向上し、英語を英語のまま理解できるようにする力を育成することです。また、それと同時にTOEIC®のスコアアップだけを目的にするのではなく、今後の英語学習に役立つ自己学習法を習得することも大切です。
ここではTOEIC®300点だったKenさんが、働きながら半年後に185点スコアアップできた英語学習法をお伝えします。
・リスニングの徹底強化(3か月/1時間×週2回のレッスン+レッスンの課題+アプリ学習等)
・TOEIC®テスト対策(3か月/1時間×週2回のレッスン+レッスンの課題+アプリ学習等)
※アプリ学習=boocoのTOEIC®単語クイズ機能等
①レベルにあった長文の教材(今回はアルクのリスニングの徹底強化研修でのスクリプトを使用)
②耳慣らし英語リスニング2週間集中ゼミ(アルク)
英文音声を流し、リスニング、シャドーイング、ディクテーションを行います。
●Step1. Shadowing(シャドーイング)
英語音声のすぐ後から聞こえた通りにまねして言うことです。これにより英語力の現状把握をすることができます。一般的にシャドーイングは英語のスピードと量の処理力を上げる目的で行うものですが、現状把握の目的でもシャドーイングを行うことで、後にbefore afterを比べることができます。
●Step2. Dictation(ディクテーション)
聞こえた英語を書き取ることです。これにより「単語が分からなかった」「文字で見れば分かるのに聞き取れなかった」「聞こえたけれど意味が分からなかった」といった課題に気付くことができます。
このステージでは『音声知覚の自動化』を目指します。「自動化」とは、身につけた知識が自動的に使えるようになる状態のことで、音声が自動化した状態では、相手の発音を知覚する(聞きとる)ことができるようになります。自動化を目指した音トレーニングでは、英語の音の特徴を理解し自身で再生できるようになることで、英語の音感覚を磨きます。
●Step3. Phrase Reading (フレーズリーディング)
英文スクリプトに意味のかたまりごとにスラッシュ(/)を入れ、英語の語順通りに意味内容を理解するトレーニングです。音感覚を磨くために、まずは英文を読むことに慣れ、英文素材の内容を理解することから始めます。
●Step4. Overlapping (オーバーラッピング)
英語の音の特徴を意識しながら、モデル音声とピッタリ音が合うことを目指す音読トレーニングです。まずは、強弱リズムや音声変化などの英語の音の特徴を知識として理解します。その後、強弱リズムや音声変化の記号が示された英文スクリプトを使って、同時音読を重ねます。
リスニング時は、「音を聞く」と、「内容を理解する」の2つをセットで行い続ける必要があるため、まずは音声知覚を自動化することで「聞く」処理の負荷を下げ、「理解」する処理力を生み出します。
このステージでは『語順処理力向上』を目指します。『語順処理』とは英文を語順通りに理解することです。リスニングの場合には、聞こえてくる音の順番通りに意味内容を理解し続ける必要があります。処理力向上を目指した語順トレーニングでは、意味のかたまりごとに内容をイメージしながら自身で再生できるようになることで、理解の処理スピードを向上させます。
●Step5. Look Up&Say(ルックアップ&セイ)
英文スクリプトを見て一文の内容をイメージし、文字を見ないで口に出して文を再現するトレーニングです。自動化した英語らしい発音で口頭再生するとともに、文字から離れることで、文を組み立てる構文力と意味内容の記憶保持力も鍛えます。
●Step6. Repeating(リピーティング)
文字なしで音声を聞きとり、即座に口頭で再現する一文再生トレーニングです。聞いている時もリピートしている時も意味内容をイメージし、音と意味をつなげていきます。
●Step7. Content Shadowing (コンテンツ・シャドーイング)
文字なしで音声のすぐ後についてリピートし続けるトレーニングです。音を聞いたそばから意味を理解し、再生すると同時に、次の音声を聞き続ける必要があるため。処理に負荷がかかり、大量の英文音声を処理する力を鍛えることができます。
文字がなくても音を聞いて内容が理解できるリスニング力が身につくと同時に、英文を日本語に訳さず英語の語順のまま理解できる即聴即解力が養われます。
開始時 | 終了時 |
---|---|
・目立って発音される/知っている語句のみを拾い聞きし、その情報をヒントに内容やストーリーを「想像する」という聞き方をしていた。 ・発音が日本人離れしていて英語の音に慣れていたため、音をキャッチすることは容易にできたが、意味理解は乏しかった。理由は主に以下4点: 1.語彙力不足 2.聞き取った音を即座に意味理解につなげる処理が困難 3.単語単位の拾い聞きで、文単位の聞き取りが困難 4.文法力不足と構文処理力不足 →英語の語順で意味処理ができない |
・ひとつひとつの音をキャッチできるようになり、目立つ単語の拾い聞きが解消された。 ・< 音のキャッチ→意味理解 > の処理が素早くできるようになり、聞いた音を意味理解につなげられるようになった。 ・「意味のかたまり」がとらえられるようになり、短い文やパッセージであれば、英語の語順で文として聞き取ることができるようになった。 |
開始時 | 終了時 |
---|---|
・基本的な文法力と構文処理力が足りていなかったため、英語の語順通りに文を理解できなかった。返り読みをしていた。 ・文字を即座に音に変換する「音読」は容易にできていたが、意味を理解しながら読むことが難しかったため、読み間違いが多かった。 |
・『Phrase reading』を徹底することで、「意味のかたまり」を意識できるようになり、英語を語順通りに理解することができるようになった。 ・意味を理解しながら音読することができるようになり、読み間違いが減っただけでなく、音読スピードが格段に向上した。 |
3か月間のリスニング徹底強化が終了したら、本格的にTOEIC®テスト対策に取り組みます。
①TOEIC® L&Rテスト英文法 ゼロからスコアが稼げるドリル(アルク)
②TOEIC® L&Rテスト200%活用模試(アルク)
まず、TOEIC®には、特有の問題形式があります。そのため、テスト中の時間管理や解答戦略を知ることがスコアアップにつながります。TOEIC®300点の人の対策としては下記のような例が挙げられます。
TOEIC®対策をするうえで、最初から用意した単語帳で単語を覚えたり、ひたすら問題を解くのではなく、本番のTOEIC®と同じ形式で練習できるTOEIC®模試を解いてみましょう。その結果から自身の弱点を把握し、重点的に対策することができます。
Kenさんの場合、TOEIC®模試を受けて次のことがわかりました。
普段、働いている社会人にとって、学習時間をコンスタントに確保することは容易ではないでしょう。しかし、具体的に確保できる学習時間を設定することで、計画的に学習を進められます。また、目標時間を達成することで、モチベーションも維持しやすくなります。
設定した目標学習時間でも、実際実践してみると継続が難しいと感じる場合があります。その場合、設定した学習時間が妥当か検証する必要があります。目標学習時間を設定した後、何度か目標時間の達成度を確認してみましょう。定期的に見直し、社会人生活において無理のない学習計画を立てましょう。その際、具体的に何に取り組むか決めておくことも効果的です。
当初の予定 | 学習時間再検討後 |
---|---|
目標学習時間200時間 4月TOEIC®の目標スコア:550点 平日2時間/1日 -通勤 2時間のうち1時間は英語学習 -ジム 1時間 週末2.5時間以上/1日 -ジム 1時間30分 -ジムへの往復 30分 -移動 1時間 -暇な時間 1時間 |
目標学習時間150時間 4月TOEIC®の目標スコア:500点 平日30分~1時間/1日 -通勤 帰りに30~40分 -ジム 帰りにオーバーラッピング、シャドーイング 週末1時間~2時間/1日 暇な時間(アプリ) ジムの帰り オーバーラッピング、シャドーイング ※モチベーションにより変化 ◎試験1か月前 平日2時間/1日 -通勤 2時間のうち1時間は英語学習 -ジム 1時間 週末1時間~2時間 週末3時間以上/1日 -ジム 1時間30分 -ジムへの往復 30分 -移動 1時間 -暇な時間 1時間(アプリ、単語、模試) |
TOEIC®300点の社員は語彙・文法が不十分であることが考えられます。そのため、文法・語彙の基礎固めをする必要があります。少しの空いた時間でも、積み重ねていけば文法・語彙力を強化できます。移動時間等はアプリ学習等も活用することも効果的です。その場の状況に応じて、学習方法を使い分けていくことでモチベーションの継続にもつながります。
開始時 | 終了時 |
---|---|
・ポイントを押さえて情報を聞き取ることができず、パッセージをなんとなく聞いてなんとなく解答していた。 ・TOEIC®の出題形式に慣れていないため、問題の解き方の効率が悪く、解けなくてもいい難問に取り組んだり、解くべきレベルの問題が解けていなかった。 |
・TOEIC®学習全体を通じて語彙力がアップしたことで、聞き取った音が意味理解につながる量が増えた。 ・R&Bで鍛えた「意味のかたまり」で理解する力がTOEIC®でも実践できるようになり、短いパッセージであれば、英語を語順通りに文単位で聞くことができるようになった。 ・TOEIC®学習を通じて文法力と構文処理力が向上したことで、長めの文やパッセージでも、「何となく聞く」のでなく、大事な情報を特定できるようになった。 ・TOEIC®試験の出題傾向を理解し、傾向に合わせた対策が実践できるようになったことで、設問で問われている情報をピンポイントで聞き取れるようになり、多くの情報の中から効率よく情報を聞き取って解けるようになった。 ・問題レベルの高いいわゆる「推測問題」に取り組むことを積極的に/意図的に避け、自身が今のレベルで取り組むべき問題を選択し、集中ができている。自身のレベルと目標に合わせた効率の良い解き方が実践できている。 |
開始時 | 終了時 |
---|---|
・基本的な語彙力、文法力、読解力が足りていなかったため、英文を読む力が圧倒的に不足していた。 ・制限時間内に効率よく解く時間管理ができていなかったため、試験後半の問題は、ほとんど取り組めていなかった。 ・TOEIC®の出題形式に慣れていなかったため、各パートで問われている英語力や、それに対する自身の課題が見えていなかった。 ・自身のレベルと目標に合わせて、解くべき問題と解かなくても良い問題が判断できず、出題順通りに問題を解いていた。そのため、Part7の途中で力尽きていたり、試験中集中力も続かなかった。 |
・基本的な英語の構文構成や文中の語の役割(品詞)が理解できるようになり、語彙力もついてきたため、文構成を理解する力や文法問題を解く力が向上した。 ・何となく読んで、何となく解答するのでなく、設問を読んで問われていることをしっかりと理解してから、その情報を文書の中で検索する「スキャニング」のテクニックが身についた。 ・「解くべき問題/解かなくても良い問題」が判断できリーディング試験全体を通して効率よく解けるようになったことで、目標としていた「5割の正解率」に近づいてきていている。各リーディング力のバランスが整ってきた。 ・「スキャニング」ができるようになったことで、詳細情報を特定できるようになった一方で、全体情報を把握する力である「文書の目的」や「文脈理解」の力の伸び率が少ない。 |
結果的にKenさんは、リスニングの徹底強化とTOEIC®テスト対策で、リスニングは75点アップ、リーディングはなんと単体で110点アップし、合計で185点アップすることができました!このリーディングの大幅な伸びは、基本的な文法力、読解力、語彙力を徹底的に強化したことが効果的だったと言えます。
ここまで、TOEIC®でスコアをアップした方法をお伝えしてきました。スコアアップには、これらの学習法を徹底的に継続していくことや"効果的な学習が出来る学習者"を育成することが必要不可欠です。Kenさんが働きながらスコアアップできたのも、TOEIC®学習にプラスして、学習全体のゴール、その日の学習のゴールを設定することや、強みと弱みの把握、振り返りを行ってきたことが非常に効果的であったと言えます。
また、ただTOEIC®学習単体を行うのではなく、初めにリスニングを徹底強化したことによって、英語を英語のまま理解するスキルが養われ、単なるTOEIC®スコアアップで終わらせない英語力の底上げにつながったと言えます。
6か月を通して、学習者自身が効果の高い自己学習法を知り、実践できる自己学習の習慣を確立することで"自律した学習者"を育成することができたのです。
資料:『自己学習プログラムを成功させるには』をダウンロードアルクエデュケーションでは、英語力そのものを鍛える「基礎知識の習得」と、最短距離でスコアアップを目指すための「ストラテジー」をバランスよく指導するTOEIC®研修をはじめ、法人向けのTOEIC®学習プログラムを各種ご用意しています。スコアアップだけに終わらない、実務で使える英語力を養います。
また、TOEIC®模試や、モチベーションアップにつながるオンラインセミナーを含む、アルクの6つの学習ツールをパッケージにした"ALC Study Unlimited"も、社員の自己学習でTOEIC®スコアアップを図る企業様から大変ご好評いただいております。まずはお気軽にご相談ください。
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