案件獲得には英語のプレゼンが必須。でも対応できる人材がいなかったことをきっかけに、英語研修の導入を決めた東急コミュニティー。手探りでスタートし成果を出すまでの軌跡、今後の展望などを人事部の小林将大さん、陣内美穂さんに聞きました。
――2016年度にスタートした英語研修は、1年間という長期のプログラムですね。
陣内 はい。アルクさんに相談して、1年間のカリキュラムを作っていきました。英語の音に慣れるための「R&B (Rhythm & Beat)」、R&Bのメソッドを取り入れた「TOEIC 研修」、英語で言いたいことが言えるようになる「Creative Speaking」、ビジネスでのアウトプットにフォーカスした「Active Business Communication」と、順を追って構成しています。そして最後に「Presentation 研修」を行ない、各人16時間を費やして、英語でのプレゼンテーションを仕上げます。
昨年度の参加者は、東京都と近県の事業所に勤務する約15名。年間を通して、毎週水曜日の夜7時に本社に集まり、2時間の研修に参加していただいています。
――その15名の参加者は、どういう方ですか?
陣内 所属する事業所に部署、年代や役職もバラバラです。研修開始の数カ月前に募集をかけて、TOEIC(R) L&RのIPテストを受けてもらい、年度によって人数は異なりますが、昨年度は約15名を選出しました。多少英語力が低めでも、受講動機をよく吟味して、やる気のある方はできるだけ柔軟に受け入れるようにしています。
参加者の英語力は例年、400点から600点くらいが中心です。英語力にあまりギャップがあると集団での研修が成立しにくいので、近いスコア層でクラスを編成して研修をしています。
――不動産管理のお仕事では、どんな場面で英語が必要ですか。また、研修を導入された経緯をお聞かせください。
小林 外国人のお客さまが、マンションを購入して住まわれるケースなど、不動産管理業務でも英語が必要な場面はあります。でもこれは比較的新しい流れで、英語は当社の入社条件というわけではありません。仕事で英語が必要になるかもしれないと思って入社した人も、それほどいないでしょう。これまで英語研修は特にやってきませんでした。
ところがあるとき、管理物件の受注をめぐり、突然、英語でプレゼンをしなくてはならない事態になりました。ビルのオーナー企業のトップが外国人のため、英語で不動産管理業務ができる企業を探していたのです。結果的に受注はできたものの、不慣れな英語が原因で混乱した反省が、英語研修導入の直接のきっかけになりました。それが2016年のことで、その年のうちに研修をスタートしました。
――研修のパートナーとして、アルクを選んだ決め手は何ですか?
小林 まず当社のグループ会社で、すでにアルクさんの研修を導入し、成果が出ていたこと。
2つめは、アルクの担当者の方が、本当に親身に我々の話に耳を傾けてくださったこと。我々の目的は始めから明確で、「マンション管理業務を英語で話せる人材をつくりたい」ということでした。でも英語は私たち研修担当にとっても未知の領域で、何をどうすればいいのか見当もつかない。その状態で希望だけ述べて相談したわけですが、アルクの担当者から「それはムリです」と言われたことは一度もありませんでした。「このようにしたら、できると思います」と、常にポジティブな提案をしてくださった。安心感、信頼感という点で、これはものすごく大きかったです。
3つめは、研修成果を測る指標として、TSST(Telephone Standard Speaking Test)というスピーキングテストで効果測定できることです。目に見える形で成果が測れるTSSTの存在は、心強いものでした。
――研修もすでに4年目、これまでの成果をどう受け止めていますか?
陣内 TOEICのスコアでいえば、研修の前と後では平均100点前後上がっており、中には200点以上伸びた方もいます。TSSTはCreative Speakingの研修が始まる直前と、全ての研修が終わった後と2度受けてもらいますが、残念ながらTSSTのレベルはそう簡単には上がらないようで、これは事前にアルクさんから聞いていた通りです。でも実際には英語を話すことにずいぶん慣れ、手応えを感じています。またビフォー・アフターで効果が検証でき、過去の自分と今の自分の進歩や変化が分かるので、1年にわたって参加者のモチベーションが維持できていると思います。
――研修に参加した皆さんの反応はいかがですか?
小林 「英語を話すことに抵抗感がなくなった」と言っています。一方、「課題が大変だった」という声もよく聞きます。週1度集まって講師について勉強するだけではなく、自宅学習の課題がたくさん出るのです。英語の日記と1分間スピーチは日課ですし、TOEICの単語テストも毎回あります。後半はプレゼンテーションの準備に追われることになりますしね。
もともと参加者を募集する段階で、「自分の業務をコントロールできること」「原則、欠席は認めない」などといった条件を提示し、覚悟をもって臨んでいただくよう、ハードルは高めに設定しています。それだけに途中で脱落する人が出ないかと、はじめは私たちも心配したのですが、これまでずっと脱落者はゼロ。むしろ、「来年、2回目の参加はできるか」といった問い合わせも、ちらほら受けます。「もっとやりたい!」と思える研修こそ、良い研修だといいますから、私たちとしてもうれしいかぎりです。
――研修で得たものが、現場の業務にもさっそく生きるとよいですね。
小林 そのことですが、英語研修を導入して気付いたことがあります。「自分たちはもうすでに、日常の業務でお客さまと英語で接している」という社員の声が、参加の動機として次々に寄せられたのです。
これまで英語というと、私たちの目は海外にばかり向きがちでした。インドネシアでの業務展開に向けて、英語で仕事を遂行できる人材が、ますます欠かせなくなっているのは事実です。しかしそれよりずっと手前の国内業務にも、英語が必要な状況が、研修が始まる前からすでにあって、そこに課題を感じている社員たちがいた。我々が思う以上に、英語を身に付けなくてはという現場の意識は高かった。そのことに気付かされました。そういう社員が参加する研修です。学んだことはもちろん、一人一人の仕事に生かされているでしょう。
――今後はどのように研修を実施していかれますか?
小林 国内では渋谷の再開発という大仕事が待っています。オリンピックのタイミングも重なり、世界中の人々が東京に集まりますから、英語で仕事ができる人をもっと育てていく必要があります。まずは英語研修の参加者数を増やして裾野を広げ、同時に研修修了者を、より高いレベルへと引き上げていきたいですね。今年度から関西でもこの研修を実施しますので、今後が楽しみです。
「と、=コミュニティーを創る会社」という思いを込めたロゴ
株式会社東急コミュニティー
人事部 人事企画課
小林将大さん
東急グループで不動産仲介の仕事に携わった後、2015年の6月に東急コミュニティーにキャリア入社。企業内大学「東急コミュニティービジネスカレッジ」で、全社研修の事務局を担当。コミュニティーの一員として、東急らしい「誠実」さで、地域に貢献する社員の育成を目指す。
陣内美穂さん
2018年8月にキャリア入社。企業内大学「東急コミュニティービジネスカレッジ」で、階層型、希望制研修を中心に全社研修の事務局を担当。